迷うひつじを惑わすオオカミ 19

司君の思惑通りいかないでしょう。

そんな意見が多い18話でしたが・・・

つくしちゃんの方はどうなってるのでしょう。

太陽が真上に差し掛かるにはもう少し時間がかかりそうだ。

磨き上げられた窓からは都会のビルの風景が広がる。

その背景を後ろに革張りの椅子に颯爽と陣をとり落ちついた趣で書類に視線を落とした熟女。

近寄りがたい雰囲気は道明寺が作り出す雰囲気に似てる。

道明寺とのことを反対されて、家族や友達まで巻き込んだ妨害。

この部屋で、必死に対抗してた私は恐れを知らない子供で・・・

あの時のこの人はどれだけ私が邪魔だったんだろう。

その記憶は未だに心の奥に道明寺のお母様を素直に信じられない棘を残してる。

それでも今の私は、私なりに頑張ってるって思う。

自分を認めてもらいたくて・・・

認めてほしくて・・・

頑張ってはいるけど反対されていた時の様に反抗できなくなってしまった。

道明寺との交際をみとめられて、婚約者になったことで、未来の義母という足かせに捕らわれてしまってる。

未来の嫁としては認められたいって欲が出てくるのはしょうがないと思う。

道明寺を生んでくれた、この人に過去はどうでも、今は私のことを受け入れてくれてるんだから嫌われるより好感をもたれたいというのは人としての自然な心理。

別に媚びようとは思ってないけど、この人に私を認めさせたいって反骨心。

負けず嫌いな性格は道明寺だけじゃないって思う。

「つくしさん」

突然名前を呼ばれた。

「はい」

焦って口から出てきた声は裏返ってしまってる。

「そんなに緊張しないで」

笑みを浮かべた口元、それでも目が笑ってないから緊張が背中に走る。

プルッ~と聞こえた電話の着信音。

その音にすくわれた気がした。

億単位で聞こえるやり取り、それも円じゃなくドル。

会話は日本から英語そしてフランス語と切り変わった。

英語までなら何とか日常会話まで困らないレベルになってきたが、さすがにそれ以外の言葉は聞き取れずにいる。

その前に飛びかう経済用語の知識なし。

殆ど意味不明。

この状況で短時間の体験でも務まる気がしない。

「今回のセミナーに良く参加したわね」

カチャリと音を発てて受話器を置いた途端に私をじっと見つめる視線。

「偶然誘われて、最初は断ったんですが断れきれなくなって・・・

道明寺が嬉しそううで・・・」

自分でもなんて説明をしてるんだろうってしどろもどろ気味で意味不明になってる気がする。

「あなたが、弁護士を目指してる事は理解してるから」

「西田から連絡あったの。司が羽目を外さない様に私に監視してほしかったんじゃないかしら」

「あなたのことになると私の息子は何をしでかすかわからないところがあるから」

椅子から立ち上がって窓辺にたって私に向ける背中。

ガラスに映る表情の中には、私を責めてる様子も、道明寺を蔑む感じも見受けられずにクスッとした優しい頬の緩みを映しだしてる。

温かい空気の流れを感じて私もホッと一息つける気がした。

ん・・・?

もしかして、この体験って・・・

道明寺!

「気がついたみたいね」

渋い顔を作って考え込んでた私に振りかえって向かい合う未来の姑と嫁。

「司とあなたを取り合うのも楽しめたわ」

お母さまって・・・そんな性格だった?

「あの子には小さい頃から厳しく躾けてきたから、未だにその癖は抜けないの」

「あなたを間に挟む司の本音が聞ける気がするの」

この人は、この人なりに道明寺との親子の距離を気にしてるんだと気がついた。

西田さんが道明寺のお母さまに連絡を入れたのもそれに気がついてたから?

だからってわざわざセミナーを利用する計画の壮大さ。

こじんまりとできない物だったのだろうか?

「この際だから今日は私に付きあっていただくわ」

その後は・・・

面会の度に紹介されて、握手されて、自己紹介を繰り返す。

秘書体験と言うよりは道明寺の未来の嫁としての対応の評価をされてるような気分。

シッカリ、抜けめなく、私は試されてるんじゃないんだろうか。

未来の嫁としての評価。

親子の仲を友好にするだけが目的じゃないことは確か。

今日何度目かの場所移動。

部屋を出て、お母様の後ろを付いて回るパターンが分単位で繰り返される。

「少しずつ顔を覚えてもらわなければなりませんからね」

誰が?誰に?どの立場で?

廊下ですれ違いざまに立ち止まって軽く会釈する男性。

お義母様との気さくな会話は会社だけのつながりじゃない親密さをただよわせる。

その男性がちらりと私に視線を向けた。

「つくしさん、この方には小さい頃から司もお世話になってるのよ」

あいさつに慣れてきた私はスムーズに名前を名乗って笑顔で答える。

CMでよく聞く旅行代理店の社長の肩書の書いてある名刺。

「まだ学生なので名刺が無くて申し訳ありません」

「この子が、司君の・・・」

頭を下げる私にお母さまと私に交互に視線を移しながら男性は迷うことなくそうつぶやいた。

その即答に私と道明寺との関係を知ってる相手もいるのだと初めて認識した。

この状況を誰かに見られて私の立場はどうなる!

それも廊下での出来事。

誰がいつやってくるかわからない共同の場所。

パタンと開いた斜め横のドア。

塚原さんが飛び出してきて私とぶつかりそうになった。

拍手コメント返礼

mizuta 様

リーターンズのつくしが楓さんのところに乗り込んで雨のシーンにつながるんですよね。

あ~また思いださしちゃったよ。

物語に入れ込むに当たりDVDを再生しまくってセリフを書き出すんですけど、今回は時間がなくてサラリと書いちゃいました。

本当は丁寧に再現したかった場面なんですよね。

ここからきっと嫁教育は始まっちゃってるんでしょうね。

司君には任せておけないだろうしなぁ。

みわちゃん様

司の嫁にはつくしちゃんしかいないって分ってるからしっかり教育して、道明寺のためにって思いはあるでしょうけどね。

飛びだした塚原さんの態度によって状況は変わるとおもいます。

Gods & Death 様

この二人を見て塚原さんはどう思うのか?

ここからが正念場なのだと・・・

なる 様

ちょっぴり鋭くでも的はずれなカン違い。

うんうん、面白そうなリクですね。

塚原さんにこの話の面白さを引き出すカギはかかってるよう気がします。

まちゃこ 様

楓さんとつくしちゃんと塚原さん。

この3人の態度でお話はいろいろ作れそうで~

どうするか悩んでます。3パターンから一つを選ぶって凄く悩むんですよね。