君の声が聞きたくて

掲示板でリクを募集した曲から作る物語第4弾お届けします。

ココ様からのリクエス

『君の声が聞きたくて』

THE JAYWALK

これは・・・

リターンズのNYで別れた後の司の心境に近いのかな?

その頃の心境を交えながらのお話を作ってみました。

「牧野・・・」

NYにいるはずのないあいつを見つけた時、自然とあいつの名前を唇が呟いた。

何か月も連絡を取らなかったのは俺から。

最初の3ヶ月は結構マメに連絡を取り合っていた。

留守電にした携帯。

着信が気になるのに見れなくて・・・

そして・・・

俺は携帯を新しく変えた。

つながらなくなったそれは未だに仕事場のデスクの引き出しの中に置いたまま。

捨てようとして捨てられなかった携帯。

携帯の機能を無くしたままの小さな器をそのまま自分に重ねてた。

そのまま使えなくなった携帯を探さない様に、俺はあいつを忘れる事が出来ると思っていた。

「牧野・・」

「道明寺・・」

「おまえなんでこんなとこに?」

「久しぶり元気だった?」

「おまえ俺の質問聞こえてるか?」

「なんでここに来たかでしょ。答え、飛行機。あれ、ここは英語じゃなきゃ通じなかった?

エアプレイン」

一瞬で引き戻される数か月前の俺たち。

「こっちこい!」

「ボケたんだから突っ込みなさいよ」

バカげたやり取りに笑う余裕などなかった。

突然現れた牧野に動揺してる俺。

「牧野、おまえ、俺に会いにきたのか」

「違うよ。パパが会社の忘年会でビンゴでとっちゃってさそれでね」

「そっか・・」

「会うかなとはちょこっとは思ってたりしてたけど、会うもんだね」

それは嘘だって分る。

こいつが素直じゃないの百も承知。

「じゃ俺いくわ。いろいろ忙しいんだ。

道明寺財閥まかされて

まだまだ物騒なところあるから

気をつけて帰れよ」

「ちょっと本気でいってるの?」

「なにが」

「久しぶりに会ったんだよ?」

牧野の動揺が、不安が浮かぶ瞳。

「だからなんだよ」

心の中で渦巻く格闘。

なんで現れるんだ。

記憶の奥に埋めようと思っていたあいつの思いは一瞬で浮かび上がってくる。

必要以上に冷たく突放す声。

これ以上牧野と会っていたらどうなるのか。

きっと分ってたんだと思う。

捨てられた子犬みたいなあいつの姿から逃げるように牧野に背を向けて車を走らせた。

俺は、あいつと、もう一切関係ない。

理由なんてなんもねえ。

ただ俺様の気分。

それだけ。

「ほんとに牧野のことはいいの?」

類の言葉に強がって答えてた。

それでいて・・・

牧野の側に俺以外の奴がいると心がざわついて、ムカついて落着けなくなる。

俺の知ってる牧野が俺の知らない牧野になることが許せなくて、悔しくて。

忘れたいのに忘られない強い思い。

それは一生続くんだと初めて知った。

あの時のお前は俺のこと恨んだろうな。

腕の中で寝返りをうった牧野の頬が胸元を抑える。

髪の毛一本もすべて包み込むようにそっと抱き寄せた。

規則的な寝息が一瞬止って「んっ~」と小さくつぶやいた。

「起きた?」

眠たそうに目を擦りながら起き上がる動きを牧野がみせる。

「まだ、起きるなよ」

引き戻した身体を、そのまま俺の腕の中に閉じ込めた。

「夢を見て目が覚めた」

NYのあの出来事は時々夢に見る。

あのまま牧野と別れてしまった俺は汗をかいてうなされて目覚める。

そして、俺の横で眠ってるお前を見て安心するんだ。

「良い夢?」

「あっ、いい夢は言わない方が叶うんだっけ?」

「俺の夢は叶ってるから、もういい」

抱き締めた柔肌は夢の続きが幸せに続いてると実感させてくれるには十分すぎる甘さで俺を包み込む。

「なぁ、俺がNYでお前を冷たく追い払った時、あの時はスゲー恨んだろ」

「NY?」

「ほら、お前が親父さんからチケットもらったから遊びに来たとかいって俺に会いに来たことあったろう」

首を逸らして牧野が瞳を俺に向ける。

「いやなもの見る様な目つきだったよね?」

「私もいまだ思い出すときあるよ」

「道明寺の事なんて嫌いになって忘れてやるって思ってたのにね」

微笑んだ表情をそのまま隠す様に胸元に牧野が押しつけた。

どうしても、道明寺じゃなきゃダメなんだよね。

唇に触れてるみたいに 、胸の奥におまえの声が聞こえてる 。

ありふれた日常の中に微睡みながら感じる幸せはもう離せない。

「ちょっと、もうこんな時間!」

俺の横で飛び起きた牧野が無造作にシーツをめくってベッドから飛び降りた。

「早く着がえなきゃ」

「服着てよね」

身体から滑り落ちたシーツは俺の腰の辺りでまとまってしまってる。

「脱がせたのお前だろう?」

真赤になった顔が思いっきり枕を俺に振り下ろしてきた。

拍手コメント返礼

メガネちゃん様

この時辛かったのはどっちだろうなんて思います。

初めて放送を見た時はなんで冷たいのよと思いつつ見た記憶がありますね。

確かに俺様司は変わらないなぁ。

mizuta 様

夏休みお疲れさまです。

弁当は作らなくていいですが昼ご飯を口開けて待ってるのがいるから手が抜けなくて~

「そうめんでいい」

「やだ」

この攻防が毎日繰り返されてます。

>リターンズのNYでの始まりは、『え、また振り出し?』と少々愕然としたものです(笑) 突き放した言葉とは裏腹な司の哀しげで慈しむ眼差しは、なんとも言えない切なさを残しますよね。

あの始まりは引き込まれますよね。

もうちょっとお話の終わりも甘くしたかったんですが、夏休みだから無理でした。

一人でコソッとUP出来る時間が欲しい。

ココちゃん様

喜んでもらえて良かったです。

最初はこの曲をどうつかつくでアレンジするか迷いましたよ。

でも何とか作れるものですね。

みわちゃん 様

順調じゃなくても、なかなかうまくかみ合わなくても、乗り越えちゃうんですよね。

良い感じに納まるのを知ってるから安心して読めるってのもあると思います。