Rainy Blue 11

「司、しっかり牧野でカギを作ってるんだ」

音声と指紋認識で開いたドア。

「いつでも来ていいようにしといてやる」

道明寺には説明されていたけど本当にドアが開くかどうかは不安だった。

普通に金属のカギを渡された方が安心できる気がしてた。

「これなら落とす心配はねェからな」

なんてニンマリとするあいつは私を子ども扱い。

「NYに行く暇なんてないから」

宣言したはずなのに、その決心は直ぐにくずれて今道明寺の部屋に足を踏み入れてしまってる。

「意外と早く使うことになったな」

なんて言ってるドヤ顔のあいつが想像できちゃう。

「道明寺?」

インターホンで返事がなかったのに一応、念のためと呼びかけた。

私の声だけが聞こえる空間。

シーンと静まった部屋には人の気配を感じない。

いなかぁ・・・

昼間の時間は会社か大学のはず。

忙しいことは分ってる。

だからって勝手に呼びつけたのに迎えにも来ず、連絡も取れない薄情なやつ。

会ったら思いっきり恨み言を言ってやる!

言えるはずないよね。

あいつの顔を見たら安心して泣いちゃうかも。

玄関だけでうちのリビングより広い・・・

土足で入るのを躊躇わせる輝きを放つ大理石の床。

私と花沢類の姿を映し出す透明感。

塵一つ落ちてない部屋は生活感のない空間で、冷たく感じる。

広い窓から見えるビル街。

道明寺はここから下を見下ろしながらいつも何を感じてるのかな?

少しは私のことを思い出してくれてる?

今私は同じNY空の下に・・・

道明寺の近くに来てるんだよ。

「やっぱり、いないね」

私の後ろから窓に写り込む花沢類の表情が心なしか寂しそうに見えた。

それはきっと私の心の穴を花沢類に反映させてるだけかもしれない。

「ここで待ってるのも長いかもね」

ゆっくりと歩いてソファーに腰を下ろした花沢類が部屋の中を一周見渡して視線を私に戻した。

「ホント、これがさ普通の彼氏だったら、部屋が散らかっていて掃除しなきゃいけなかったり、

料理でも作って帰りを待ったりできるにね」

キッチンは新品のままで使った形跡を残さずに輝いてる。

どんな料理でも作れそうなのに宝の持ち腐れだよ。

ワンルームの狭いアパートなら肩を寄せ合ってあいつの側で温もりを感じることができるのに。

広すぎる部屋で過ごす時間にはまだ慣れてない。

それも、あいつには連絡も取れないし!

何時になったら携帯の電波が届くのだろう。

こうなればメールを一分おきに送信してやろうかしら。

NYきてそんな単純作業で時間を使うのもあほらしい。

「牧野、お腹空かない?」

返事の代わりにお腹がグルッとなって花沢類が優しく微笑んだ。

「どうするんですか?」

デスクに肘をつく俺に西田の冷静な声が響く。

「なにが?」

「つくし様もこちらに到着されてるはずですが」

お前に関係あるか?

声には出さず視線だけを西田に向ける冷ややかに一瞥。

「牧野は部屋で待つように言ってたからマンションに行ってるはずだろう」

「だから彼女を慌てて会社に呼び出したんですか?」

「鉢合わせはしませんが問題が解決したわけじゃないんですよ」

何を考えているのかと俺を責める態度は西田にしちゃ珍しい。

西田の見せる感情の起伏はかすかな変化。

感情を表に出すことのほとんどない西田には十分すぎる動揺。

忙しくて連絡が取れないスタンス。

夜には何もかも片づけて牧野に会える。

牧野田が会いたいと言っていた神宮寺にはしっかりと連絡付けてる。

会社の一室で昼過ぎから会うことになってる。

あいつらを会わせればそれで俺のすることは無くなるはずだ。

どんな問題か知らないが道明寺代表の俺を巻き込むにしては問題が個人過ぎだろう。

つーか、もともと他人は興味ねェし。

「花沢様もご一緒にNYにいらっしゃってるようですが、よろしいのですか?」

西田の声に一瞬にして聴力が100倍に跳ね上がった気がした。

「牧野、一人のはずだぞ」

俺がこっちに呼んだのは牧野一人。

類がいたら邪魔だろう。

「花沢様ならなにか異変を感じても不思議じゃないかと思いますが・・・」

奥歯に何か挟まったような西田の声。

「マンションに女性を泊めたなんてことつくし様・・・花沢様が知ったらどうなるか・・・」

いきなりの西田の反撃は爆弾並み。

最初はナイフ位にしとけよ。

いくら俺でもよけきれるわけがない。

類が知ったら・・・

「司、なにしてるの?」

「俺、言ったよね。牧野を泣かせたら今度は容赦しないって・・・」

類の声が・・・

俺を責める表情が・・・

全部マジ。

あいつは牧野のことになると人が変わる。

「早く片付けてください」

もう何も言うことはないとでもいう態度で西田が部屋を出て行った。

それは俺を見捨てたとでもいう態度。

お前の力なんて借りるか!!!

「バン!!!」

西田の消えたドアに書類を投げつけた。

拍手コメント返礼

ゆきこ 様

別館では西田さんどういう働きをするのかな?

そのうっぷんがここ!(爆)

そうそうまだこのお話謎が多いんですよね。

謎解きまではあと少しですよ~。

みわちゃん様

神宮寺さんと会っておしまいじゃおもしろくないですよね。

ここからまた一波乱!あるかなぁ・・・

mizuta 様

今回は本当に西田さん司を見限ってますからね。

お仕置きは西田さんに任せても大丈夫だと思ってます。

いや、類の方が司には効き目があるかな。

Gods & Death 様

台風の影響はいかがですか?

こちらは時折激しい雨が降ってます。

そうそう、類が知ったら怖いですよね。

なる 様

つくしと類どちらに知られても司君窮地に追い込まれてしまいますよね。

あとで後悔しても遅いぞ!

俺様な司君が後悔するかなぁ・・・

さわね 様

そうそう、つくしちゃん泣かせたら許さないから~

類より怖いぞ!

いよいよ花男再放送九州上陸ですね。

私の居住地でも昨日から始まりました。

一話を見て続きが気になると娘が言い出して、DVDを再生する羽目に・・・

どんどん早送りが早くなって昨日の夜中にファイナルまで見ちゃいました。

そんなに慌てて見なくても良いのに~

じっくり見たかった。