迷うひつじを惑わすオオカミ 27

つくしを取り戻して浮かれた気分はそうそうに湖の底に沈められてしまった司君。

迷惑をこうむるのは秘書課のみなさん。

ご機嫌斜めの代表には近づかない鉄則。

それを分ってないのは多分塚原さんだけだよなぁ。

「この書類誰がもってく?」

「今は・・・近づきたくないな・・・」

「そんなに急ぐものじゃないから後でも大丈夫よね」

「あっ!私が持っていきます」

両手をあげる勢いの塚原真美。

「あら、助かるわ」

急いで渡す書類。

「あのさ・・・あの子を近づけるなって代表の指示がなかった?」

「あの代表の前に行くことを考えたら室長に御小言もらうぐらい我慢できるわよ」

ガシャッ!

何かが壁にあたって壊れる音が響く。

「さすがに代表も怪我まではさせてないわよね・・・」

互いに見つめあう表情はそれぞれに顔色を無くしてる。

「保証できないかも・・・」

秘書室は息を殺して静まりかえっていた。

やばい。

道明寺のところに戻るのに3分を切った。

会長室に荷物を取りに行ったら、私と道明寺のことを知ってる重役さんに捕まった。

「珍しいところで会いますね」

そこから始まって私がいると道明寺の機嫌が良くて助かるとか。

出来れば卒業後は代表の側にいつもいてくれるといいとか。

ウンと言わかなきゃ話してくれそうもない勢い。

「すいません、今日は私と道明寺のことは内緒で来てるので」

最上階まで来る平社員はほとんどいないのに人目を気にする私。

「分りました、代表には内緒ですね」

内緒じゃないけど・・・

道明寺はもう知ってるし・・・

「右に曲がってすぐの部屋を抜けて行けば代表の部屋は直通で行けます。

代表が喜ぶでしょうな」

何か勘違いしてない?

「しばらくは代表の部屋には誰にも近づけさせませんから」

ドンと胸を叩く仕草を見せられても困る。

そんなこと頼んじゃいない。

「それじゃ」

「いいですね。若いって言うのは」

なんの言い訳も出来ないまま重役さんは私から離れる。

鼻歌交じりで剥げかかった頭のてっぺんは赤くなってるの見えた。

あの浮かれ方はなんなのだろう?

首を傾げながら見送る私は時計の針を見て焦った。

近道・・・

でもな・・・

このまま教えられたとおり進んだらまた重役さんにへんにカン違いされそうで怖い。

別に直通じゃなくても秘書課に行けばいいんだもん。

右に曲がる廊下は無視して真直ぐに進んで秘書課を目指した。

え?

その途中の化粧室に私を強引に引っ張る腕に引きずり込まれる。

あと3分しかないのに!!!

「塚原さん・・・」

「さっきは恥をかかせてくれたありがとう」

冷ややかに浮かべる笑み。

他の人が見たら恨み言を言われてるとは思われない可愛い表情が私を見つめてる。

感情とは裏腹な表情を浮かべることが出来るってある意味すごいと感心してしまってる。

「騙したようなことになったのはごめんなさい」

道明寺HDのセミナーに行く気もなかった私を引きずり込んだのは塚原さん。

いきなり道明寺のことに協力してとか言いだしたのも塚原さん。

何処で私と道明寺との関係が言えたというのか。

まさかお義母様とのランチにまでついてくるなんて思いもしないもの。

本当は謝る必要なんてなにのに恥をかかせたのは確かだから私から謝った。

「騙したようなこと・・・騙したなんじゃなくて?」

微笑から一転、意地悪く光る瞳。

英徳高校時代に私を蔑んで虐めたあの3人を思い出した。

根本は塚原とあの子達は一緒だ。

自分より劣ると評価した相手には意地悪で、容赦なし。

そして、自分たちより上だと認めたものには媚を売るタイプ。

女子には嫌われるんだよね。

だから優紀も気にして私に忠告してくれたんだ。

「でも、もういいの、私には分ってるから」

道明寺の婚約者だと知っても上からの態度。

まだ見くびられてる気がする。

「あなたを気に入ってるのは会長よね。代表は多分あなたの事なんて何とも思ってないのよ」

「その証拠に私のこと・・・」

何かを思い出いだしたように塚原さんの目が潤んだ。

道明寺はどう見ても毛嫌いしてる態度しか塚原さんに取ってない気がするんだけど・・・

「代表が私のことを選んでも恨まないでね」

それはない。

言葉を失った私に勝ち誇ったような表情を返してツンと顔を私から逸らして塚原さんは化粧室から出て行った。

ぎゃーーーッ

10分すぎてる。

道明寺に何言われるの?

なにされる?

今日何度目だろう、また逃げたくなってきた。

拍手コメント返礼

みわちゃん 様

>もう、塚原~いい加減にせえ!!

うんうん、叫びたくなるの分かります。

書いてる私が言っていいのかしら?(^_^;)

秘書課のみなさんあと少しの辛抱ですよ~

つくしちゃんが参上しますからね。(笑)

メガネちゃん様

ほっとくのが一番でしょうけど、ほっといたらほっといたらでまた変なカン違いしちゃうんでしょうね。

ここはヤッパリ司君が態度で示すのが一番。

アーティーチョーク 様

そうです。何をやっても無駄なんです。

いつ分るのかな~

分ったらこのお話終わっちゃうんですけどね。

つくしに代わろうなんて100万年たっても無理なんだぞ~

なる 様

ここまでイラッと来るキャラに仕上がるとは私も思ってませんでした。(笑)

だからオモシロいんでしょうけどね。

トドメは誰が刺すんでしょうね。

そこを考えると楽しくなってきます。

さわね様

つくしはそれどころじゃないですよね。

司のお仕置きが有りますから~

どんなこと考えてるんでしょう。

今から私が考えないといけないんですけどね。(^_^;)

理子様

確かに周りにいたらウザいですよね。

付き合いたくないキャラ。

そうそう、お仕置きですよね。

司君覚えてるかしら?

aru 様

立ち直れないくらいの天罰。

いや~

直ぐに復活しちゃいそうな気もします。

道明寺司って可笑しんじゃないのと次のターゲットを探す塚原真美。

mizuta 様

ここまで来ると呆れるより失笑ですかね。

「いい加減にしろ!このブス!カン違い女!」

司の怒鳴り声が聞こえてきそう。

これでもひるまなかったらどうなるんでしょう?

ここはやっぱりつくしとのイチャイチャをバンとぶちかますしかないかなぁ。

まちゃこ 様

一気読みお疲れ様です。

忘れずに足をお運び頂き感謝。

いなさそうでいますよねこんな迷惑な人?

友達無くすタイプ。

ぎゃふんと言わせるのは誰にしようかとあみだくじ中です。