Rainy Blue 12

すれ違わせた後に鉢合わせ。

良くあるパターンですが、その前にもう一つ~

ということでお付き合いをお願いします。

「NYのマンション変えたから」

牧野がいつ来てもいいようにと無邪気に笑って見せる司を俺はどこか遠くに見てた。

司と牧野がうまくいくことは本気で良かったと思ってる。

その裏で癒えない傷は確かに俺の胸の奥でかすかな痛みを発してくる。

司の側で笑ってる牧野を見れば疼く痛み。

それでもそれを見届けたいんだ。

NYに行く牧野の側に俺がいたのはほんの偶然。

今それが偶然じゃなく必然だったと思い直していた。

「司、しっかり牧野でカギを作ってるんだ」

真新しいマンションの入り口は厳重な警備。

ドアのカギも最新のもので音声と指紋認識。

司が俺達に宣言したように牧野がいつ来ても言い様になっていた。

照れた顔が嬉しそうに微笑む牧野に俺の心も和む。

部屋の前で主のいない部屋に入るのを躊躇う牧野の背中を押した俺。

「お邪魔します」

当たり前のように靴を脱ごうとした牧野が律儀すぎて自然と笑みが浮かんだ。

「あっ・・靴、脱がなくていんだよね」

俺に振り向いてそうつぶやく牧野は緊張気味。

部屋の中を見渡す牧野は気後れしてる表情を浮かべてる。

司の家を見慣れてればどうってことない部屋だが、牧野のアパートの見取り図が頭の中を占領してるって顔。

牧野らしいよ。

司のいない寂しさを俺に見せない様に明るく笑う牧野。

そんな牧野を俺はソファーに座って眺めてた。

「花沢類」

名前を呼ばれるたびに・・・

それだけのことなのに・・・

それが、うれしくてしょうがなかった。

掃除の行き届いたはずの部屋。

朝から人のいないはずの空間に何となく感じる気配。

俺と牧野のものじゃなくさっきまで誰かいたような残像。

まさかな・・・

ふと指先に感じた触覚。

白いソファーの上に見つけた一本の長い髪。

牧野はまだこのソファーまで来てない。

指先でつまみ上げた髪は司のものにしては長すぎる。

窓際で外の風景を見ている牧野に視線を映しながら神経は他のことに集中するようにソファーから立ち上がって物色してる。

牧野が気がつかないうちに・・・

司、なにやってんだよ。

牧野を迎えにこなかったのは、このためだってことはないよな?

「やっぱり、いないね」

寂しそうにそうつぶやく牧野を窓ガラスが映し出す。

司、これ以上牧野の表情を曇らせることってないよな?

「ここで待ってるのも長いかもね」

この場所からすぐにでも牧野を連れ出した方がいいと警告音が鳴る。

ソファーにもう一度座って他に何も落ちてないことを確認した。

「ホント、これがさ普通の彼氏だったら、部屋が散らかっていて掃除しなきゃいけなかったり、

料理でも作って帰りを待ったりできるにね」

そんな部屋なら俺も髪の毛一本落ちていても気にならなかったかもしれない。

牧野が掃除を始めたら髪の毛以外にも何かヤバいものを見つける可能性だってある。

掃除をしなきゃいけない状況じゃない事には感謝。

ソファーで髪なら、洗面所とか寝室とかにも何か形跡が残ってるのか?

それはないと信じてる。

司が牧野以外の女に興味を示すことはないと分ってるから。

俺も、あきらも、総二郎も・・・。

牧野を不安にさせるような安易な行動をとるのが許せないだけ。

「牧野、お腹空かない?」

グルっと返事の代わりに鳴ったお腹を牧野は恥かしそうに抑え込む。

「それじゃ、道明寺と入れ違ったら困るからメモでも残しておこうかな」

「荷物をおいとけば俺達がここに来たことは司にもわかると思うけど」

「文句の一つでも書いとかないとムカつくから」

強気の声とは裏腹に司とすれ違うことを牧野は気にしてるんだと分かる。

「花沢類、ちょっと待ってて」

メモ用紙をバックからとりだした牧野がサイドボードの上でペンを動かし始めた。

紙に文字を書く摩擦音が聞こえなくなって牧野の手先の動きが止る。

「どうかした?」

牧野が見つめてるのはメモ用紙じゃなくてその横に置かれた数枚の写真。

このマンションに入る司。

司の腕は女性を抱き抱えるように腰に回されてる。

「この人って・・・さっきの女の人?」

牧野の背中が不安に揺れてる。

気にしなくていいよ。

そんな気休めみたいな声をかけることもできないくらいに肩が震えてる。

写真に伸ばした手が牧野から映し出されてる二人の姿を隠す様に握りつぶしてた。

拍手コメント返礼

mizuta 様

眼光が鋭くなって表情は険しく変わる類君。

そして牧野を見る表情は一瞬でそれが思いやる表情に変わるの~

旬クンで想像しちゃってます。

今ルパンなんだよなぁ。

「不二子ちゃ~ん」と言ってるのは別人だ~

まちゃこ 様

類が怒ると怖いのは司も経験済み。

もう一回殴られれてもいいですよね?

なる 様

今回は類がいなきゃダメですよね。

つくしちゃん一人じゃ対処できないよ~

Gods & Death 様

まだまだ台風の被害ありそうですね。

本当に雨ばかりで夏の晴れ間がないですよね。

意外に司君の方がピンチかもしれませんよ~

ゆきこ 様

>読み終わった瞬間、執務室に『司、あんた何やってんのよ〜』って椿お姉さまが飛び込んで来て、司に華麗に飛び蹴りくらわしてるとこ想像しちゃいました。

椿さんが知ったらつくしちゃん連れて行っちゃいそう♪

あっ、それもありですね。

そしてとどめは類の「もう遠慮しないから」

ついでにつくしちゃんにドキドキとときめいてもらいますか?

道明寺が好きなはずなのに花沢類が優しすぎるから・・・

なんてポロリと涙を流すつくしを類が抱き寄せて頭なでなでしてるところを司が目撃!!

凄いいじわるだなぁ。(笑)

still・・様

この題名がきっかけで曲にまつわるお話に発展しちゃってます。

題名に惹かれたお話を読み気になるものってあるって思います。

曲は古いですが最近いろんな歌手の方が歌ってくれてますよね。

ヤッパリキュンとくる歌詞は何時聞いてもキュンと来ますね。

ゆきうさ 様

初コメありがとうございます。

司とつくしの対面がまだなので気になっちゃいますよね。

類の行動も。

なかなか一気に展開とはいきませんがお付き合いよろしくお願いします。

みわちゃん 様

なんで、写真処分してないのよ!

思っちゃいますよね。

今回の司はヌケテルなぁ。

それじゃ済まないですけどね。