雨夜の月を愛しむ夜に 7

しっとりと始まったはずの物語。

雨月物語的な感じで行きたかったなぁ。

私の書くつかつくじゃ無理だわ。

だんだんと題名からも遠ざかっていますが、最後はバッチッと元に戻して決めたいと思ってます。

梅雨に書き始めたこの物語。

朝晩秋の気配を感じる今日この頃・・・

何時終れるかなぁ・・・(^_^;)

梅雨も明けて、夏もいつの間にか朝晩には秋の気配を見せる今日この頃。

本当に時間が経つのは早い。

なのにまだ30分しか経ってない。

「辛気臭い顔すんな。ほら、やる」

道明寺が私に押しつけるようにタオル地の丸っこい物を渡してきた。

丸顔にちょこんとついた耳。

鼻ぺちゃな顔。

不細工だけど愛嬌のあるパグのぬいぐるみ。

「似てるだろ?」

ニンマリとした顔が押しつけたはずのパグを私から取り上げて私の顔の横に並べて見比べる。

「こんなに鼻は低くないから」

道明寺からぬいぐるみを取り上げてマジに見つめるパグの顔。

可愛いじゃん。

ツクンとぺちゃんこの鼻を押さえるとワンと吠えたかわいい子犬の鳴き声。

この子、子犬?

また道明寺にぬいぐるみを取られた。

ポンポンと頭の上を歩かせて私の前を通りすぎていく道明寺。

「これくらいなら文句言わずに受け取れるよな」

道明寺が放り投げたパグを必死で受け止める。

それはまるで生きてるパグを受け取るような気持ち。

このぬいぐるみが大事に思えたのは何気ない道明寺の優しさを感じたから。

慣れないこの状況に狼狽えて落着けない私。

「なんでも選べ」

「俺が買ってやる」

「この列全部買うか?」

道明寺に買ってもらうって嫌なんだよ。

私は何か欲しくて道明寺と一緒にいるわけじゃない。

それじゃなくても大学の学費を全部出してもらってる。

「俺の婚約者らしい恰好も必要だから」

道明寺の言うことにも一理あるから、道明寺から用意された服に装飾品は受け取った。

でもそれは自分の為じゃなく道明寺の隣りに並んだ私で道明寺が笑われたら困るから。

欲しいものはあるけれどそれは自分で買える範囲で我慢できる。

水着とか、下着とか肌の露出の多い所で立ち止まって道明寺が楽しんじゃってるのはべつな目的がアリアリで疲れる。

西門さんや美作さんや桜子に滋は絶対道明寺で遊んでるんだからそれに気がつけ!

横柄な態度は何時もの事で・・・

それに反論する私もいつものことで・・・

面倒くさいとか言いながら楽しむことのできない私を気に留めていてくれるってことバレてるよ。

気に掛けてくれてるって私をからかう態度に隠してる道明寺が分るからキュンとくる。

「どうせ買ってくれるなら本物がいいな」

道明寺にまとわりつくように右腕に腕を回した。

いつのまにかみんなバラバラで私たち以外にはお客のいないフロアー。

丁度目の前はペットショップでいろんな種類の犬に猫がゲージに中で楽しそうにじゃれ合ってる。

「俺はいい」

ガラス張りのゲージの前に嫌がる道明寺の腕を引っ張って連れて行く。

「あっ、パグがいる。可愛いね」

顔にぬいぐるみを押しつけられて道明寺が顔をしかめてる。

「抱っこしたいなぁ」

愛想よく近付いてきた店員さんがどの子にしますみたいな表情を浮かべてる。

「買わないから」

速攻で不機嫌な表情を浮かべる道明寺。

「お前、ワザとだろ」

子犬でも子猫でも道明寺が苦手だって知ってるから意地悪したくなる。

「怖くないのに」

「別に、怖くねェし・・・苦手なだけだろう」

拗ねたようにつぶやく道明寺が可笑しくてしょうがない。

「やっと笑ったな」

笑う私を見つめる道明寺が私よりもっと嬉しそうに顔をほころばせてる。

そんな顔で見つめられると何も言えなくなる。

「おーいたいた」

一気に華やかな空気が流れ込んできた。

「二人で勝手にいなくなって何してた?」

何してたって…

西門さん!何もしてないって。

「つくし、買ったのってこれだけ?」

ぬいぐるみを珍しそうに見つめる滋。

その後ろには紙袋にうずまりそうな相葉さんと千葉さん。

「お前ら何やってんだ」

おい、猿!こいつ等は俺のSPだぞ。勝手に使うな」

ジロリと2人の姿を一瞥した道明寺がすぐに不満げな表情で滋を見た。

「司はつくしと2人の方がいいんじゃないかと思ったんだけどな」

「だったら、最後まで邪魔せず俺達に近づくな」

そのやりとりにさっき私に見せた気遣いを見せてほしい。

もう!

ほら!

みんなが道明寺の反応を楽しんじゃってるのが分る。

「あのさ、道明寺、折角みんなで来てるんだから」

これ以上道明寺にしゃべらせるとなにを言いだすかわかったものじゃない。

「邪魔するなっていってどこが悪い。

言えるものなら言ってみろ」

道明寺のケンカ腰の声が私の耳を貫く。

その言いぐさにカチンときた。

「悪いに決まってるでしょう。俺、牧野と一緒にショッピングって初めてだし。

牧野、俺にネクタイの一つでも選んでよ」

道明寺に向おうとした反抗心は花沢類の言葉で掻き消えてしまってる。

花沢類にはいつも世話をかけちゃってるし・・・

ネクタイの一つくらいのプレゼントじゃ足らない感謝。

「高いものは無理だけど、いい?」

何となく照れくさい気持ちが心の奥から生まれてくる。

「おい、こら、俺様を無視して類にやるのかよ」

私の肩に置かれた手が無理やり私を回転させた。

「だって、道明寺は私に何か欲しいって言ってないじゃん」

花沢類の言葉で一気に顔が上気しちゃった道明寺が私を見下ろす。

「いいか、彼氏意外にネクタイなんて贈ったら気があるって勘違いするぞ」

道明寺に内緒で贈るわけじゃないし、みんなの前の花沢類の発言。

この何処にそんな勘違いをする要素があるっていうのよ。

「いまさら類が勘違いするわけねぇだろう」

呆れた声でちいさくボソッと美作さんが呟いた。

「牧野、あんまり司を嫉妬させるな」

そう言いながら西門さんはしっかり楽しんじゃってる。

「類、欲しければ俺が買ってやる」

「・・・いらない」

無表情に花沢類が呟く。

そして何事もなったような空気が辺りを包み込む。

ざわざわと皆が離れて私達はまた二人っきりになった。

番外編 類サイドでUPしてます。

このままもっと

拍手コメント返礼

ずんこ様

ネクタイくらいねぇ、いいじゃないの~

思っちゃいますよね。

類だよ類~

それが司には一番嫌なんだろうなぁ~。

Gods & Death 様

本当に朝晩涼しくなってきましたね。

秋の気配を感じますね。

早くないですか?

私も主人にもらってうれしかったプレゼントあんまり記憶ないなぁ・・・(^_^;)

ゆきこ様

類の独特の雰囲気で「いらない」って言いそうじゃないですか?

もう私なら追いかける。

年令の設定どのくらいでしょ。

司は大学を卒業してる頃かな。

だったらネクタイで嫉妬しちゃだめっだよなぁ。(笑)

クリスタルガーデン 様

司の嫉妬で遊べちゃうから平和ですよね。

この雰囲気が好きなんですよね。

goemon 様

あはは、なかなかみんなにお相手が~

総ちゃん類は独身のまんまで・・・(^_^;)

相手を見つける余裕が私にないんですよね。

そのうちそのうちと思いながらつかつくの話が増えていくの~

絵梨 様

つくしのプレゼントのネクタイをワザと司がいるときにだけつけてきたりして~

そんな類の意地悪いとこも見たい気もします。

「外せ」

「いいでしょ、気に入ってるんだもん」

なんてシーンを見てみたい。

なる 様

男が男にネクタイを贈るって・・・

不思議な感覚ですよね。

司にもらっても類も困るだろうな。