十六夜の月は甘く濡れて 1
別館で限定公開していた新作です。
最近少しお笑いに走ってますが書きながら別なちょっと真面目なお話を想像しちゃうのです。
シリアスに書き始めても最後はお笑いに走る傾向はあるのがどうしようもないのですけどね。
別館公開分は3人称で書いてますが続きの部分では何時もの1人称に変えてUPしちゃってます。
「牧野、一人?」
手持無沙汰に残り少ないワインの底を眺めながら手のひらで回していた私。
ゆっくりと私の横に来た花沢類は私から飲み物のすくなくなってるグラスをとって新しくグラスを握らせる。
冷えてるグラスの冷たさが指先から伝わってきてヒンヤリとして心良い。
財界の著名人が多く集まる船上のパーティー。
何度となく道明寺に連れられてくる機会も多くなって知り合いも多くなった。
私のことを興味本位に品定めされてるような視線に何時も自分が場違いで浮いてるんじゃないかと心配になってしまう。
道明寺が側にいればあけすけな値踏みする様な視線で見られることはないから少しは楽なのにッ。
私を無理やり連れてきた婚約者はあっという間に人込みにさらわれて、わずかに表情が見える距離にと離れ離れだ。
何時もは片時も私を放さないって態度なのに今日に限って私を遠くから観察してるような態度にクシャクシャしてる。
食べるもの食べてお腹をいっぱいにして楽しもう。
そう思ってるのに一人じゃ食欲もわいてこない。
先般に出て寂しさを誤魔化すように海を眺めていた私に声をかけたのは招待を受けていた花沢類。
乗船する時に少しばかりの会話を交わした後は、嫉妬深い道明寺に「花沢類とあんまりしゃべるな」とくぎを刺された。
花沢類も道明寺と同様いろんな人に取り囲まれて人気者になってたからそんな心配は必要ないって声をかけられるまで思っていた。
花沢類の事なんてすっかり忘れてたよ。
自分の居場所を見つけられないところでは道明寺だけを頼きってしまってるみたい。
それがちょっぴり情けなくって、自分の弱さを見せたくない気分にさせる。
私の世界は道明寺と知り合って広くなってるはずなのに狭くなった気にさえなってくる。
もう!
ここまでほっとくってあいつは何を考えてるのだろう。
私の腰に腕を回して饒舌に機嫌よく会話をする道明寺は今はどこにもいない。
愚痴の一つも投げつけたい相手は私の存在を忘れたように私を一人にしている。
「しょうがないよね。すぐに人が集まっちゃうから」
先般に寄せ返す波を見つめながらぽつりとつぶやいた。
魚の群れから少し離れて泳いでる小さな魚が自分と重なって寂しそうに見える。
ゆっくりと身体をデッキに預けた花沢類が私を覗き込んで見つめてる。
澄んだ瞳は私が好きになったビー玉のように輝いて今でも見つめられるとドキッとしてしまう。
「牧野にそんな表情をさせるために俺はあきらめたんじゃないけどな」
それは・・・
花沢類が私を好きだって言ってくれた言葉を一瞬で思い起こされる。
道明寺が私と別れて大河原滋と婚約して揺れていいた時期。
いつもそばにいて親身になってくれたのが花沢類。
どれだけ助けられたか分からない。
それでも道明寺が好きで好きで忘れられなかった気持ちは変わらなかった。
花沢類に私を思う気持ちは今もまだ残ってるのだろうか。
私が悲しそうにしちゃダメなんだよね。
それは彼を悲しませることになるのだから。
「少し風が出てきたから部屋に行こうか?」
船が港に付くのは明日の朝午前9時。
それまでは割り当てられた船室や船内で楽しめる趣向の贅沢なパーティー。
どれだけ贅沢なパーティーなのだろう。
道明寺と一緒にいてこれ以上驚くことはないだろうと思う私の常識は簡単に打ち破られる。
何となくいたたまれなかった雰囲気を戻すのには十分な花沢類の申し出を断る理由なんて思い浮かぶはすもなくコクリと私はうなずいた。
一人でこのままいるよりは部屋で道明寺を待っていた方がいいって思える。
花沢類と一緒にいたらまた、道明寺に「警戒心なさすぎだ」なんて言われちゃうのかな。
一緒にいるのは花沢類のはずなのに道明寺のことが頭の中を占領してるのがおかしくてしょうがない。
もうあいつの事なん忘れてやる。
コツコツと二つの靴音が大きく響く。
腕が触れあう様に距離で花沢類とならんで歩く。
行きかう人が軽く会釈を返す。
道明寺と花沢類の関係は知られてるから私が一緒にいても怪訝な表情を向けられないから気持も楽だ。
「牧野、これだけは覚えていて、俺は君を泣かせるためにあきらめたわけじゃないから」
何時もの花沢類じゃないみたいに真剣で・・・熱い。
花沢類が私を好きだってことは分ってる。
私と道明寺を応援してるってことも・・・
花沢類の身体が近付いて私の身体を抱き寄せた。
え・・・っ
らしくないよ。
花沢類が泣いてるようで・・・・
そう言えば高校のとき、こうやって抱きしめられたことあったよね。
静香さんのことで悩んでいた時。
何かあった?
その一言がなかなか言い出せずにいる。
「牧野・・・ごめん、今だけでいいから・・・」
かすかに頬に触れた花沢類の唇。
それが熱くて、優しすぎて、振りほどけない想い。
気がつかないままに自然と花沢類の背中に腕を回していた。
そう・・・
高校の階段で抱きしめていた時のように。
いま、そうしなきゃいけないって想いは道明寺のそれとは違うはすなのに・・・
心が・・・
身体が・・・
新しく生まれてくる熱で包み込まれていく。
払いのけられない自分の気持ちをどう説明したらいいのだろ。
司に対するすまなさと、類に対する切なさと・・・
の心が揺れ動いて、身動きができなくなってしまっていた。
拍手コメント返礼
Gods & Death 様
つくしちゃんダメだよ~
ここは変わって私が!
え?類の方じゃなく司君にですのね。(笑)
嫉妬ですれ違うとややこしくなるのよね。
ゆきこ 様
そうですよ♪
先行公開しちゃったやつです。
サークル内では2話まで公開しちゃってますからね。
2話は大幅に書き換える予定ですのでお楽しみに♪
ゆみん 様
掻きむしられる愛~
私にはやり遂げられるでしょうか(笑)
ここは司君次第で結末は別れそうです。
みわちゃん 様
こんな花沢類をほっとけないよの状態のつくしちゃん。
司君何やってんのよ!
つくしちゃんほっとくとトラブル引き寄せちゃうんだから~
次回読むよもっと眠れなくなるかもです・・・(^_^;)
うさこ 様
流されるのは船だけにしないよね。
類もですけどここのつくしちゃんは危なっかしいのよね。
そうそうこのあと・・・
怖いですよね。
司君が登場のカウントダウン始まってます。
なる 様
わちゃわちゃ感満載のところで~
毛並みの違うお話をドボンといれちゃいました。
さぁこの後のスープの味はどうなるのでしょう。
刺激度はUPしたって思えるコメントありがとうございます~。
まい2様
私を師匠と呼ぶ方は何方?
名まえは思いついてるのですが匿名になっちゃってますよ~~~~~
早速のお返事ありがたや~
何時もコメント欄からコメもらってるから自信がなかった師匠でした。(^_^;)
類の意味深な行動も終ってしまえば二人の絆を深くしちゃうんですよね。
そんなお話を書きたいと思っています。
題名褒めていただいてうれしいです。
題名が思いついたらUP[しようと思ってましたからね。
またお話が増えたよ~~~~~~~
本当にヤバイ・・・(^_^;)