ウエディングベルは二度鳴らす 15

地下鉄に乗らないなんて~

せっかくの初体験が露と消えていく。

『初体験初体験だと連呼するんじゃねぇよ。

俺のほうが恥ずかしくなる。

それに地下鉄に乗れないのはたいしたことじゃねぇ。

つくしに乗れないほうが大問題だぞ』

いや~、でもね。

読者のみなさんは満員電車に押しつぶされる司君とか、痴漢されるつくしちゃんを守る司とか。

ちかんプレーに目覚める司とか(おっ、これは某委員会向きだった)

楽しみにしてるというご意見があったのよ~~~~~~。

「道明寺!恥ずかしいことつぶやくな」

司の後ろに角をはやしたつくしが迫る!!

本当の夫婦になった初めての夜にお預けなんてことになったら困るよ~司君♪

あっ・・・

私の命が危ないかも・・・(^_^.)

「おい、お前ら二人つくしに付け」

千葉に相葉、通称葉っぱコンビ。

こいつらが護衛してるとほかのやつらよりは緊張しないとつくしは親しみを込めてそう呼ぶ。

千葉と相葉!

俺に付くよりうれしそうな表情するな。

恋愛感情がないとわかっていてもくそ面白くもねぇ。

二人は軽く俺に会釈をして改札を抜けてきた。

こいつらのかざしたカードは一発で二人を通す。

なんで俺のカードだけつかえねぇんだよ。

何でも購入できるってうたい文句は嘘じゃねぇか!

つくしは腹をかけて笑われるし、あいつにおごられるのは俺の自尊心にすげー打撃なんだぞ。

あいつらがつくしのそばに確認したのを確かめて方向を変えようとした俺。

心配そうに俺を眺めるつくしの表情はピュア。

きらきらと輝く大きな瞳は俺から離れることなくまっすぐに注がれる。

そんな顔を見せるな。

抱きしめたくなる。

はやく、乗れ・・・

唇を動かす声にならない声をあいつに発してる。

俺に背中を向けたあいつは電車が来るのを待ちながら、やっぱり俺を何度も気にするように振り返る。

ホームに入ってきた電車の扉が開いて乗り込もうとしたあいつはもう一度振り返って優しく微笑んで電車の中を向いた。

くそっ。

ダメだ、このまま一人にしておけない感情。

それは・・・

まだつくしと離れたくない、一緒にいたいって思う切実な感情。

本能と直感が細胞を徐々に支配していく。

身体が勝手に動いて電車の扉が閉まる瞬間に飛び乗っていた。

「道明寺!」

驚いた表情はそのまま俺を責める様に危ないと見つめてくる。

「大丈夫なの?」

それは俺のことを心配してるのか仕事のことかどっちだよ?

「送る」

「えっ?」

「会場までお前を送って、そこに車を迎えに来させて、それから会社にもどる」

結婚式のガーデン形式披露宴は都内でも広い庭園を持つメープルホテル。

つまり道明寺系列のホテル。

俺が会社に戻らなくても、そこに仕事を持ってくることだった可能だと頭を働かせた。

執務室じゃなくても仕事はできる。

そのほうが時間のロスも少ない。

西田を説得できる自信はある。

「今は、少しの時間でもお前と一緒にいたい。

やっと本当に夫婦になれた記念日だろう」

耳元に唇を近づけて触れる様につぶやいた。

うっ!

緩いカーブに車体を揺られて後ろから身体を押されてつくしに抱きついたのは俺。

いきなりの揺れにバランスを崩しそうになった。

「大丈夫?」

お前、また笑ってるだろう!

「慣れてねぇんだよ」

拗ねた声だと自分でもわかる。

しかし、なんでこんなに密着してんだ。

つくしの左右には葉っぱコンビ。

必死でつくしに触れないように身体を突っ張ってるのが無性におかしい。

「頑張れよ」

間の抜けた表情が俺を見つめる。

初めて優しい言葉をかけたことで感動した表情は今にも涙を流しそうに俺を見つめてる。

勘違いすんじゃねぇよ。

労をねぎらうのはまだ早いだろうが!

こいつに一秒でも触れたら・・・わかるよな?

威圧的な視線を敏感に感じとった千葉と相葉の頬はすぐに引き締まった。

脚をさっきより大きめに開いて少しで面積を広く確保しようともがいてる。

俺はそのままつくしを胸の中に囲う。

「なぁ、いつもこんなに混んでるのか?」

「これでもまだましなほうだよ。まだ手足が動く余裕があるもの」

って、ことは、手足も動かなくなるくらいふれあってるってことか?

「道明寺・・・なに考えこんでるの?」

俺を見上げるあどけない瞳。

この状況でこいつは不安ねぇのか?

俺以外のやつがお前に触りっぱなしってことだろうがぁぁぁ。

見逃せるか!

「これからは絶対乗るな。乗る必要もないだろう」

車を使えば済むことだ。

「え?」

「俺以外のやつがお前に密着してくる危険性半端ねぇぞ」

「それって・・・嫉妬してるの?」

「悪いか」

俺の声に答えるつくしの声は地下に反射する電車の走る音に掻き消えてしまった。

「聞こえねぇよ」

「もう二度と言わない」

「なんで?」

「恥ずかしいもん。聞き逃した道明寺が悪い」

嫉妬されて、うれしいとか・・・

すきとか・・・

愛してるとか・・・

私も地下鉄で誰かが道明寺に触れてると思うと嫉妬しちゃうとか・・・

あの騒音が聞こえた時間よりも長いセリフを妄想して悦に入りそうな俺。

こいつのことになるとすべてが単純になっちまう。

「聞かせろ」

もう一度追求しようとした瞬間にホームに着いた。

「降りよう」

簡単に話題を変えたつくしが俺の腕に自分の腕を回してきた。

そのまま人波に押されてホームに立つ。

「道明寺と一緒なら満員電車も楽しめるかも」

さっきより密に密着する柔らか身体。

上腕に触れる柔らかな弾力のあるふくらみ。

それだけで裸体のこいつを想像してしまってる。

「いくぞ」

巻きつく腕から強引に腕を抜き取って出口を目指した。

拍手コメント返礼

ゆきこ様

せっかくの機会なので司っち初体験させちゃいました。

呼び出しに応じなかった司君を今日は西田さんも大目に見てやってくれないかな。

「甘やかすと癖になります」

BY 西田。

そういえば私たちも癖になってるような気がしません?

最近司君に優しいしなぁ。

一平君司LOVEですからね。

「頑張れよ」の一言で心の中で号泣き。

その感動の相葉先輩相手に吐き出さなきゃ今日一日が終わらないだろうな・・・

akko

電車の中で壁ドン。

確かにチャンス。

司が手をついたのは扉。

つくしだけ見つめていたら電車が停車して扉が開いて、降りる人に押されて流された~

そんなオチ・・・

いらないですよね。(^_^.)

うさこ 様

電車の揺れに押されて抱きついたのが司じゃなく葉っぱコンビだったら・・・

そんな怖いこと考えたくないと葉っぱクンたちいつもより電車の床に張り付く靴の裏は根性で吸盤化していたと思われます。

電車の揺れって慣れないとつらいですよね。

一番慣れてないはずの司君が反応鈍いような気がしちゃいました。

司の目の前でつくしに抱きつくSPコンビ。

それを見た司の反応もみたいですね。

ゆみん 様

つくしだけにメロメロで、他には冷たくて乱暴なら尚。

更それがゆみん様の好み・・・

φ(..)メモメモ。

なる 様

さすがに今回は仕事の電話よりつくしを取っちゃいましたね。

さぁ西田さんの次の一手は!

司君勝てるかな~

西田さんの頭の中ではいくつもの手を考えて先読みしてる気がするのは私だけじゃないと思ってます。