ラストシーンは夢の中 14

つくしちゃん、気を失うのもったいないよ~

いや失ったふりして腕の中に倒れこんじゃうっていうのもありかも♪。

つくし以外だったら床に放り投げられそうですけどね。

挑戦はしてみたい。

一瞬でも腕の中に入り込めたら・・・

倒れる前にそっぽ向かれるのが落ちかぁ。(^_^.)

そろそろこのお話も最終話に向けて突っ走ります。

「どういう了見だ」

私に気を使ったのはほんの一瞬。

人を殺しかねない鋭い矢を放つ道明寺。

ちらりと視線の先で道明寺の喉元がゆっくりと動くのを眺めてる私。

これ以上顔を上げるのが怖い。

どういう了見だといわれても、私はバイトをいつも通りにやっていただけで・・・

いつも通りと言っていいのか?

道明寺に内緒でバイトをしたのもこれが初めてなじゃないでしょう!

そんな言い訳を聞いてくれる?

「てめっ」って睨みつけられる道明寺の目つきを妄想中。

「俺たちの親がうるさくなったのは司の婚約の影響もあるから、

それに牧野とはなにもなかったから」

穏やかな表情を崩さないままに花沢類はそう言って微笑んだ。

そんな言いかたしたら・・・

道明寺の表情を盗み見る私の心臓はドクンと大きく音を立てる。

下手に勘ぐらないでね。

本当に何もないから!

「当たり前だろう」

中越しに聞こえてきた声。

道明寺が責めてるのは私じゃなく花沢類だったんだと気が付いた。

「お前も、乗せられてのこのこついてくんじゃねぇよ」

のこのこって!

私のバイト先に突然現れたのは花沢類!

勝手についてきたのは花沢類のほうだ。

先回りして私を待ち構えてる道明寺にも、なんなのよ!

怒られる必要なんてないはずだ。

日本で待っていてくれたら黙ってバイトしたことだけ謝れば済む話。

道明寺の不機嫌は収まるまで我慢すればいいだけだったのにッ。

花沢類と一緒にいたことをねちねちとやられたらたまんないよ。

不可抗力!

「知らなかったんです。

すいません!!!」

土下座の勢いでスーツ姿の男性が頭を下げる。

萩原の奥さまの息子さんだった。

奥さまは顔色をなくして震えてる。

私から見ても道明寺は花沢類しか眼中にないって態度を見せてる。

奥さまの横に立つ私が替え玉になった女性は目がハートで私たちを通り越して西門さんと美作さんのエリアを見つめてる。

あの二人・・・

ウインクなぞ返して女性へのサービス精神はここでも発揮中。

道明寺と花沢類はしっかり取り残されてないか?

この二人の間には静かにバトルの勃発の秒読みを開始してる雰囲気で空気が重い。

「お前らのことなんて眼中にないから消えろ」

口元から口笛に似た悲鳴。

夜逃げをするみたいに萩野さん一家は足早に目の前から立ち去った。

数日は生きた心地しないんじゃないかと心配になってきた。

今思えばそんなにいやなバイトじゃなかったはずだ。

知らない男性の相手をするより花沢類のほうが安心だし気心も知れてる。

問題は道明寺の嫉妬って点だけだもの。

「牧野は俺の当て馬にされたんだよね」

微笑みを浮かべるやわらかい物腰。

態度に似合わない爆弾発言。

花沢類!

わざと道明寺を煽ってない?

「当て馬?」

きょとんとした表情が私を見下ろす。

道明寺・・・

当て馬の意味知らないの・・・?

相手の様子をうかがうために仮の人を出すこと。

当て馬の説明なんてしたくないよ。

今回は結局上流社会級のお見合いパーティー。

花沢類の様子を見るために、萩野の奥さまの知り合いの女性に似たタイプの私を近づけたってことには確かに違いないけど・・・

私を当て馬にしたって道明寺が知ったら・・・

道明寺の不機嫌がまた大きくなっちゃうよ。

「花沢類に暴れ馬みたいにぶつかって蹴散らしちゃったから」

バカげた説明。

花沢類だけじゃなく西門さんも美作さんも吹き出しちゃってるし・・・

こんな説明しか浮かびつかない自分がバカ。

「そうか・・・司、当て馬・・・知らないんだ」

口元を手で押せこみながら西門さんの声には笑いが交じってる。

「今度はお前が牧野の当て馬になればいいんじゃねぇ

ぶつかるより乗っけたほうが楽しめるかもな」

美作さんは意味深な微笑みを浮かべて私を見た。

なに・・・

なんなの?

その意をふくんだような濃厚な艶を浮かべる二人の色気は怪しすぎる。

とにっ!

なんなのよ!

「司、牧野は返すから」

ポンと軽く背中を花沢類に押されて道明寺と近かった距離はますます間をつめて、鼻先が道明寺の胸元にぶつかった。

押されてきたわずかな振動が私のバランスを崩してる。

その私を、しっかりと支える様に道明寺の腕は私をしっかりと抱く。

身体が揺れて鼻先は道明寺の胸元を滑り落ちてしっかりと頬を固い胸元に押し付けてしまった。

「それじゃ、俺たちは3人で楽しむか」

私たちを残して3人が離れていくのが空気の流れで見えなくても感じてる。

「あのさ・・・」

ゆっくりと見上げた視線は私を見つめる道明寺の視線と重なった。

「牧野・・・」

名前を呼ばれただけでドクンと心臓が波打つ。

「当て馬って、お前が俺に乗っかるのか?」

え?

道明寺の言葉の意味を理解しようとしてできた沈黙。

あっ?

乗っかるって・・・

道明寺の上に私が乗るの・・・?

膝をついて馬になる道明寺の上に私・・・

え?

あり得ないけど・・・って・・・

仰臥位の道明寺の上に・・・

なんだこの卑猥な妄想ッ!

服着てるから!

そこから一枚一枚はがされていく。

もっ!

やだっーーっ。

ここでやっとさっきの意味深な二人の表情の意味を私は悟った。

道明寺!気が付かないでッ!

それは当て馬と全く関係ないから!

拍手コメント返礼

ゆみん 様

馬つながりがわかるかどうかがここからどう動くかのカギなんですよね。

司君気が付くかしら?

二人の成長の度合いによるのかなぁ~

司君には総ちゃんとあきら君がいますからね♪

うさこ 様

つくしちゃんは頑張ったのにこの状況じゃ萩原の奥さまからの特別手当もらえないかもしれないですよね。

その分司からもらえる?

ホカロンバシッありがたく頂戴いたします♪