ウエディングベルは二度鳴らす 25(完)
さてここからどのくらいいちゃこらさせましょうか?
お星さまつけずにどこまで遊べるかな~
遊ぶな!
司から怒鳴られない程度で頑張ろう・・・。
「自分で誘っといて、どこ行くかもねぇだろうが」
「あっ・・・」
ぽかんとあいた唇を一つ間を開けて慌てて閉じる。
カードキーを渡した時点であれは、誘ったってことになるのかな?
大体ホテルに泊まるって時点でアレ・・・だよね?
久しぶりに道明寺と夜を過ごすわけで・・・
何でもなかったはずの日が突然特別な日になったわけで・・・
二人で過ごす久しぶりの夜がどんなものか今までの経験上から考えると、
道明寺が私とベッドに入って、お休みって何にもしないで寝るわけがない。
速攻で抱きしめられるのはいつものことだもの。
今日は嫉妬心も上乗せされてるからそれなりの覚悟が必要かも。
私の鼓動もだんだんと高まってきた。
部屋につくまで落ち着かなきゃ。
エレベーターの中は狭い密室だ。
やんわりと空気が動いた気配に私の意識が道明寺に移った。
うっ・・・動いた!
道明寺はエレベーターの壁に背中をもたれかけてクスッと口の形を変えた。
足先を見つめるようし下に下がっていた視線は数秒後にまっすぐに私をとらえた。
「予測不可能だな」
そういった道明寺の唇は嬉しそうに微笑む。
瞳もやさしく弧を描いて本気で喜んでる極上の笑顔。
「お前は俺を喜ばせる天才だよ」
威圧的な表情が抜けた道明寺は蕩けそうな艶を惜しみなく放出してくる。
「俺以外のやつのまえで無防備になることを除けばな」
険しい表情を見せたのはほんの一瞬。
目の前に差し出された腕は私のその腕を取れと催促してる。
手をつなぐぐらいなら・・・
ここで抱きしめられるより危険度は低い。
道明寺の指先が私の手の甲に触れて、ゆっくりと肌の上をなぞる。
二本の指が血管の流れに沿うように動いて、その甘ったるい動きに身体の中で電流が一瞬、走ったと感じた。
「逃げんなよ」
ピックと一瞬身体を引いた私にからかい気味に道明寺がつぶやいてグイと引いた腕が私を引き寄せた。
手をつないだだけの段階は一瞬にして私と道明寺の距離を近づけてしまった。
「パーティー大丈夫かな」
身体の熱の上昇をごまかすようにいつもより声が大きく出た。
「新郎新婦より、私たちのほうが目立ってたらどうしよう」
「俺が来た段階でそれなりの注目は浴びてたからな」
悪びれた様子は全くない道明寺。
一生に一度の結婚式を台無しにしたら謝りようがない。
俺が来てやったんだからって位にしか道明寺は思ってないんだろうな。
「道明寺に聞いたのが間違いだった・・・」
ため息をつきかけた私の顔をグイと強引に道明寺の指先が持ち上げて角度を変えさせられた。
唇が触れ合いそうな距離に近づいて道明寺の息遣いを唇が感じてる。
「なに?」
聞かなくてもここら先のシチュエイションはサルでもわかる。
誰か乗ってきたらどうするの!
まって!
犬のほうが素直に聞いてくれるよ。
「警戒するな」
キスしてくる気配を感じない道明寺。
意外そうな、残念そうな私。
意表を突いてくるのは道明寺のほうがわたしより上だよ。
「俺たちも今日結婚したようなもんだろう」
やっと出せた婚姻届け。
これで正式な夫婦になったのだから確かに道明寺の言い分は正しい。
「今日は結婚記念日っていうより入籍記念日ってことになるんじゃないの?」
答える私は冷静さを取り戻してる。
「俺は何度でもお前と結婚式してもかまわないけどな」
自信たっぷりの道明寺は私から目をそらさない。
「新郎道明寺司は、牧野つくしを生涯の伴侶とし、幸せにすることを誓います」
はっきりとした道明寺の声。
これって・・・
ここで結婚式の再現しゃうつもり?
道明寺の瞳は私に次の言葉を催促しちゃってる。
ここでまた誰か乗ってきたらどうするのよッ。
もうっ。
でも私が答えなきゃ終わらないってオーラーがありありな道明寺に押され気味だ。
「誓います」
「短縮すんな」
道明寺の片方の腕は私から離れてエレベーターのcloseのボタンを抑え込んでる。
誰も乗ってこさせない。
そんな意思を道明寺が示してる。
しょうがないな。
あきれるより、照れ臭いうれしさを私も感じてる。
「・・・・」
「新婦・・・牧野つくしは生涯の伴侶として道明寺司を愛することを誓います」
その瞬間、道明寺の顔がアップになって唇を塞がれてしまった。
closeのボタンから外した腕はそのまましっかりと抱きしめて、エレベーターの上昇に合わせるように高まる鼓動を感じてる。
それにこたえるような美しいリズムを道明寺の心臓が刻んで二つに重なって行く感覚を覚えていた。
婚姻届けのトラブルも無事に完結しました。
お付き合いありがとうございました。
もちろんこの後のお話は番外編の☆様で登場の予定です。
それともう一つ置き去りにされた公平のお話も準備中ですのでお見逃しなく♪