十六夜の月は甘く濡れて 10

いよいよ事件は動きだす予定です。

さあ、どんな展開がまってるのか!

推理はどう動く?

司が動かないとダメでしょう。

私の頭もそれほどよくないから、なぞは直ぐに解けると思います。

って・・・

それじゃダメなんだけどなぁ・・・(;^ω^)

*

朦朧としたまま開いた瞼。

頬に触れる柔らかい肌触り。

自分が寝かされることには直ぐに気が付いた。

風に揺れる白いレースのカーテンが部屋の中でそよぐように揺れる。

その横で窓辺にもたれて遠くを見つめる横顔。

斜め45度角度のまま長いまつげが動いてその視線が私をとらえた。

「目が覚めた?」

私を気遣うような音色のこもる声。

笑みを作る口元はどこか寂しそうにほほ笑む。

「さっきいた場所、司に見つかったみたいだよ」

焦ってるようでもなく穏やかな感情が読み取れるのはいつもの花沢類の雰囲気で・・・

私たちは一緒に囚われてしまってるんじゃないかと思ってしまいそうだ。

そうじゃない!

私を車に無理やり乗せたのは花沢類その人で・・・

私を眠らせてここに閉じ込めてたのも花沢類。

なのに・・・

疑うことも、恨むことも否定してる自分がいる。

「どうして・・・」

絞り出した言葉はそれだけで・・・

それ以上の言葉は忘れてしまったように口から出てこない。

「牧野・・・」

ゆっくりと一歩一歩と近づいた足音はそのまま私ベッドの横で自然と止まる。

足音が近づくたびにゆっくりと起き上った身体はそのままベッドの上に90度の角度を作った。

投げだした素足を隠すように正座するのがいっぱいいっぱい。

「牧野を運んでベッドに寝かせたの俺だから」

今更隠す必要なんてないって花沢類に言われても、そこはやっぱり躊躇してしまう自分がいる。

花沢類に慰められてその腕で抱きしめられたことは一度や二度じゃない。

そばに寄り添って感じたぬくもりは道明寺のそれとはまた別の次元で私を包み込んで安心感を何度も与えてくれたのも事実。

それだから、きっと今も信じてるんだとおもう。

いや・・・

信じたいんだ。

花沢類が道明寺を・・・私を裏切ることはないって。

「ねぇ、何か隠してる?」

「ほら、道明寺のためだとか、私を守るためとか、そんな理由で美作さんとか西門さんと話し合ってとか」

「今までもあいつのせいで私はいっぱい危険な目にあってるもの。

今回もそれに関係してこんなことやっちゃったとか」

信じるっ決めたらおしゃべりになってる私がいた。

自分でもいきなりテンション上げすぎだぞって突っ込みを入れたくなる。

え?

ふわっと動いた影はそのまま私を包み込み両腕が背中を交差するように抱きしめた。

はなざわ・・・るい・・?

軽めの抱擁もずっしり私の両肩に花沢類の重みを感じ取ってる。

両手も肘から下しか動かせなくて・・・

まさか花沢類の背中に腕を回すこともできずにだらりと下がったままだ。

「牧野、俺を好きになって・・・」

耳元に触れた花沢類の声。

信じられない声はそのままもう一度同じ言葉をつぶやく。

花沢類・・・

私と道明寺のこと祝福してくれたんだよね。

花沢類が私を好きだって言ってくれた時のことを一瞬で思い出す。

道明寺じゃなきゃダメなの。

花沢類にそう告げた自分の気持ちはあの頃もままだ。

花沢類の思いに私が答えられないことは十分に理解してるはずなのに・・・

なのにまぜ、また?

わかんないよ。

「牧野・・・・・・  お願・・・  でいい・・・」

高低のある声は耳元からこぼれながらもしっかりと私に聞き取れた。

「え?」

ゆっくりと顔を上げた私が、花沢類の吸い込まれそうな瞳の中に映しこまれていた。