霧の中に落ちる月の滴 5

おはようございます。

そろそろ類君を目覚めさせないと話が進まないのでさっさとつくしちゃんに起こしに行ってもらいましょう。

司君の看病でつくしは安眠を得られたのでしょうか?

疲れ果ててるってことはまさかないですよね?

 *

「今日はどうしても会社に顔を出さなきゃいけない。一人で大丈夫か?」

大丈夫も何も道明寺が私にやく世話は的外れが多くて困る。

風呂に入れない私の身体を拭いてやるって言われた時はさすがにことわった。

よろよろとトイレに行く私につい来てくれるのは良しとしても、トイレの中まで一緒に入って来て、パジャマのズボンに手をかけてきた時は、どつきたくなった。

確かにそばにいてくれるだけでうれしいのはうれしいけど・・・。

「今日も、類の病室に行くよな?」

一度振り向いた道明寺が私がうなずくのを確認して背中を向ける。

「無理すんな」

その声はいつもよりおとなしく響いてドアの壁についていた腕が5本の指を離れがたそうに一本ずつ時間をかけて離れていってドアを閉めた。

花沢類のこと心配してるのはたぶん私以上。

手術が成功したはずの花沢類の意識はまだ戻ってなくて眠ったままの状態。

時間が許せば花沢類の病室でいっぱい話しかけて目覚めるのを待っている。

私たちだけじゃなく、西門さんも美作さんもそしてパリから静香さんも帰国して駆けつけてくれた。

なんとなく病室を離れた道明寺の姿が今日は目に焼き付いてる。

花沢類を心配してるだけじゃない何かが道明寺を悩ませてるように思えて落ち着かない。

いつもの自信満々な俺様な道明寺がどことなく寂し気で儚げで頼りなく思えてそのまま追いかけていって行かないでと言いたかった。

心の中に燻る不安な正体が見えなくて落ち着けない。

一通りの処置が終わって落ち着いた時間。

ここからお昼の配膳の時間までは何もすることはない。

透明な液体のぶら下がった点滴スタンドをゴロゴロと押しながら花沢類の病室を訪ねる。

数歩歩けばたどり着く隣の病室。

ベッドの上で眠ってる花沢類には私より多い点滴がぶら下がっていて、心拍と呼吸が並の形で表示されるモニターの音が規則的にピッ、ピッ、と音を小さく響かせている。

いつもと一緒な感じでベッドサイドに椅子を引き寄せて腰を下ろす。

「おはよう、花沢類。

今日は道明寺が一緒じゃないんだ」

花沢類、私の声届いてる?

今日はどこから話をしよう。

花沢類と私の二人だけの秘密・・・。

道明寺も知らないことたくさんあるよね。

高校時代、非常階段でばったりと花沢類に出会ったんだよね。

憧れの花沢類がいて息が止まりそうなくらいにドキとしたことを今でも覚えてる。

今でも夢にでいてきそうなくらいの恋愛の疑似体験を花沢類としてたんだって思う。

私にとってもあの非常階段は英徳で一番大切な場所。

なぜか今でも時々あの非常階段に行きたくなる。

悩んだり、愚痴ったり、そのたびに私の隣にやさしく微笑みながら私の話を聞いてくれる花沢類が一緒にいてくれるような錯覚に陥る。

偶然会ったことあるよね。

ちょうど事故に合う一週間前。

「あっ」て顔でお互いに目があって可笑しくて笑いあったこと覚えてるかな?

目を閉じて瞳の見えない花沢類。

ビー玉の吸い込まれるような花沢類の瞳。

少し色素の薄い感じがやさしく澄んで見つめる花沢類に早く会いたいよ。

「目覚めたらいっぱい、いっぱい話したいことあるよ。

花沢類がかばってくれなかったら私は助かってなかったかも、まずはありがとうってお礼を言わなくちゃね」

もう何度も眠ってる花沢類には言ってるんだよ。

あっ!

かすかに眉間に中央に動いてまつげが動く。

「花沢類!」

確かめるように花沢類の手のひらを握りしめた。

「私だよ、わかる!」

ギュッと握った手のひらが握り返されたように思えた。

ゆっくりと私の手のひらをつかむように動く力強い指先。

「気が付いた!」

私の声に反応するように瞼が動いて目を開く。

「牧野・・・?」

焦点を探すように動いた顔が私をとらえた。

「よかった。心配したんだよ」

「どうして?」

擦れてはいるが聞き覚えのある花沢類の声に泣きそうになった。

「車で事故にあって病院に運ばれたの」

何かを思いだそうとしてるように花沢類の顔が歪む。

「救急車で運ばれたのは牧野じゃなかったの?」

「私も運ばれたけど・・・」

「俺が牧野についてたんじゃないの?」

話がかみ合ってそうでかみ合ってない。

目覚めたばかりの影響で記憶がまばらになってるのだろうか?

「牧野が倒れたって連絡をもらって俺が付いてたはずなんだけど?

牧野がベッドに眠っていて俺が手を握ってて・・・」

「工事現場、疲労で倒れたんだよな?」

それって・・・

随分前の出来事。

道明寺にフラれ傷ついてた高校の頃の出来事で・・・

「花沢類、これ、何本に見える?」

花沢類の前に3本の指を立てて見せる。

「三本・・・」

「さて、私は今何歳だ?」

少しおちゃらけぎみに明るく質問してみた。

「高3だから、18だよな?」

えーと・・・

もう20歳過ぎてるんですけど・・・

花沢類と見つめ合ったまま時間が止まった。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

おはようございます。

冒頭しっかりと遊んでます。

いや~私の上をいくコメントをふにゃろば様も残してくださいましたがさすがの私もまだそこまで書ききれませんでした。

類が目覚めた後なら挿入しても大丈夫かしらとニマニマしているところですがそうはいかないんですよね。

静さんも久々に登場!

ドラマの中で類が一番つくしのことを相談できる相手は静さんだったって設定だと思うんですよね。

つくしちゃんが相談していたのは椿さんだったから椿さんも登場する予定も一応考えているんです。

この二人が入ることで類も司も冷静になって話がうまく進んでいけると思ってます。

「月の夜星の朝」私も読みましたよ。

最近連載が終わったお話の主人公が大人になった続きが多いですよね。

読むと面白いですよね。

昔の連載当時より表現が自由というか大人になってますものね。

絵梨 様

おはようございます。

私の中のお話の5本の中にいるのは愛してるといわせたい。

あとの4本が知りたくなりました。(笑)

愛してるといわせたいは記憶が後退したつくしを必死に振り向かせようと翻弄する司のお話でしたから設定は同じですよね。

類もあいしてるといわせたいと頑張ったらどうなるかしら?

もちろん司が必死に邪魔するでしょうけどね。

シリアスがギャグになりそう。

ゆみん 様

興奮するのはまだ早い!と私勝手に思っております。

さぁ類君の記憶欠落は本当か?嘘か?どっちだぁ~~~~~

スリーシスターズ 様

おはようございます。

口移しに一コマは類が目覚めて落ち着いた後の冒頭となるのかどうか

それともそこからお話を広げるパターンも想像できちゃうのですよ。

ここ楽しい一場面をどう料理しましょう♪

ただいま私の頭の中はムフフな状態です。