DNAに惑わされ 39
久々にジュニアのお話に戻ります♪
駿君が一番安定感があるような気がしてきてます。
少しハラハラする展開なんてないかなぁ~。
「入学して1年以上経つのに、このメンバーで放課後過ごすって初めてだよね?」
6人掛けのテーブルに対面で鮎川とクラスメート女子二人。
僕の横に座るのは蒼。
「駿君、私の名前は覚えてる?」
テーブルの上で身を乗り出す彼女。
全校生徒は無理でもクラスメートはさすがにわかる。
小さいころから人の顔と名前は覚えるように訓練されてたから割と人を覚えるのは得意なほうだ。
「立川さんだよね?」
うなずく僕に笑顔を浮かべた彼女はほっとしたように腰を下ろした。
「どうせなら、名前で呼んでよ。真衣って」
舞?
「妹とおんなじ名前なんだ」
同じ名前でも名前を呼ぶなんてできそうもない。
呼ぶなら鮎川の名前の菜花が先だ。
ちらりと盗み見た鮎川は興味がないよう表情のままストローをくえてジュースを口腔に吸い上げる。
白いストローがオレンジの色を映しこんで口の中に消えていく。
つややかな唇に何度か触れた感触がよみがえってきてドキッとして慌てて僕は視線を鮎川から外した。
「駿君妹いたんだ?」
「あっ・・・うん・・・」
気のない返事しかできない僕に横から蒼が肩を当てて小さく小突く。
「鮎川ばかり気にしてんじゃねぇよ」
顔を寄せてぼそっとつぶやく蒼は直ぐに彼女ら向けて笑みを作った。
「こいつ、まじめだから、遊ぶ暇がないんだよな」
意味深に流し目をつくる蒼。
「学校が終わったらすぐに帰ってバイトだし、苦学生なんだよ。
親と離れてばぁちゃん家で面倒見てもらってるから大変なの」
はきはきとした声は自慢してると内容を錯覚しそうな明るさ。
目の前の鮎川は今にも吹き出しそうな口元をかみしめて必死に耐えてる。
父さんが聞いたら蒼は首を絞められてねじ上げられてるって思う。
だれが苦学生だ!
威圧的な父さんに蒼は地上にねじのようにねじ込まれるぞ。
「ねぇ、鮎川さんと道明寺君って付き合ってるの?」
いきなりの直球。
テーブルの下からこつんと膝をつかれた感覚。
僕の前に座ってるのは鮎川で、それはたぶん鮎川からのもの。
どう言って欲しいのか・・・
いつもと変わらない冷めた表情からは鮎川の感情が読み取れない。
ポテトを一つつまんだ指先はそのまま口の中に細いポテトを縦に押し込んでる。
付き合ってるって言ってもいいんだよな?
「付き合ってるわけないだろう」
背中から聞こえた声。
僕が答えるより先に聞こえた声は青葉のもの。
こいつ・・・
つけてきたのか・・・
学校で鮎川に言い寄っていたやつ。
「この俺が、鮎川を真剣に口説いてるんだから」
「俺が道明寺に負けるわけないだろう」
自信過剰。
その言葉がぴったりとくるやつ。
蒼を横に押し込むように僕たちの席に腰を下ろしてきた。
自分の言葉に酔いしれておおげさに動かした腕はポーズを決めるように親指と人差し指を顎のライン状に乗せて肘をテーブルにつく。
どこかで見た雑誌のモデルのポーズ。
似合わねぇッ。
痛すぎる。
彼女らも引いてるし・・・
笑いをこらえてる彼女たちにもご満悦な青葉。
こいつの性格・・・
ある意味最強かもな。
「鮎川は俺のだから」
「言ったはずだよな」
さっきは青葉だけに聞こえるように耳元でつぶやいた声。
今はもっと強く宣言するようにはっきりとした声は強く低く静かに唇を震わせる。
「なんだよ、いきなりキレんじゃねぇよ」
動揺を見せる青葉の声。
「きゃー、俺のものだって~。駿君、私もあなたのものよ」
・・・えっ?
おっ・・・
やめっ・・・
椅子が倒れそうな勢いで僕に抱き付いてきたのは蒼。
頬にキスされそうな勢いで蒼が僕に迫る。
「蒼君がんばって~」
面白いコントでも見てるようなテンションのクラスメート。
その横でくすっと小さくうれしそうな笑みを鮎川が浮かべてる。
「蒼、ごめん、僕は鮎川のものだから」
蒼の動きが一瞬静止した。
「それはわかってる」
そう言った蒼はそのまま何事もなかったようにハンバーガーをパクついた。
「青葉さん、勝手にいなくならないで下さいよ」
青葉は取り巻きの一人に促されるように自分の元いた席に連れ戻されてる。
まだ何か言いたそうだがそれは無視。
「そうか・・・やっぱりね」
蒼の動きに合わせるようにみんなも食べ物を口に運ぶ。
「ところで、この前、鮎川さんが休んでた時に道明寺くん休んでたよね。
一緒だったの?」
「ぶっ」
今度は鮎川が急き込んで苦しそうな表情を浮かべてた。
一緒に数日過ごした事実。
君はどう答えてくれるんだろう。
周りに気が付かれるんじゃないかと思うくらいに鼓動が強く胸を打ち付けていた。