ANSWER 21
恭介のいいなずけ薫子ちゃんも登場して、面白くなってきたところで次の展開へ!
いきなりぶっとばした感はあるのですがANSWER の続きです。
お間違いなく、続きからどうぞ。
「危ない!よけろ」
聞こえた佑の声は危険を察知した緊迫した声。
振り向いた時には轟音と穿孔に包まれる。
上がる悲鳴の声も打ち消してあたりは煙に包まれる。
壁が壊れて落ちて、地上で砕けて舞い上がるコンクリートの破片。
誰の姿も見えなくて、いままで楽しく笑いあっておしゃべりしてた景色は一変するショッピングモール。
なにが起こったのかなんて考える時間もなかった。
ただ震えて、見えない視界は聞こえた声の方向を頼りながら、伸ばしても届きそうもない腕は佑を探してる。
人は危険を認識した瞬間、それを回避するためにうまく動くことなんて到底できない生き物なんだな。
だからこんなところで・・・
命を落とすのかもしれない。
佑どこ?
「・・・・か?」
「・・・・・」
「大丈夫か?」
「・・・・んっ・・・」
何度目かの呼びかけがようやく言葉として認識できたけど、まだうつろなままはっきりと脳が働かない。
本城さんが転校してきて数日が過ぎたころ会話の中で遊びに行く話の流れで恭介様も一緒にって本城さんの要望に応えるように渋る大内先輩を翼と佑はどう説得したのかわからないけど連れ出すことに成功。
翼とすず、私と佑、大内先輩と本城さん。
このメンバーで遊ぶってレア。
すごく不愛想な大内先輩と、はにかんだ笑顔のままの本城さんは付き合い始めたばかりの初々しいカップルにしか見えなくて、それなりに楽しんでるように思えた。
それなのに突然のパニック。
今自分がどうしてるのか全くわからない。
「気が付いたか?」
ん…!?
低音で響く声は冷静で冷たいはずなのにどこか私を心配してるぬくもりを感じる。
佑?
やさしい佑の声とは響きの違う声。
大内先輩・・・?
「気が付いたらこのままじっとしてろ。
ゆっくり深呼吸できるか?」
「ゆっくり?」
「軽く吸わないと土埃を吸い込むから、ゆっくりな」
土埃って・・・?
私たちがいたのは土なんてどこにも見当たらないコンクリート街。
流行のテンポのいい音楽がさっきまで流れていた。
ざらつく感触は確かにがれきの中に取り残されてしまってる。
何かに挟まれて身動きができない身体は少し腕を動かすだけで痛みを感じる。
「私・・・生きてる・・・?」
「今のとこはな」
「みんなは?」
ところどころから聞こえるうめき声。
佑!
翼!
すず!
それに本城さん!
聞こえる声に知ってる声が聞こえないのをどうとらえればいいのだろう。
「どうやら、生き埋めになってるらしい、直ぐに救助が来るから心配するな」
私の下敷きになったままの大内先輩。
笑顔でほほ笑むその顔は絶対無理してるよね。
「それより、身体がしびれたり感覚がなくなってるところはないか?」
動かせる範囲で何とか動かせた手足。
折れてないって思う。
「大丈夫みたい」
「よかったよ。
それなら一日はこのままで大丈夫だな」
「このまま!」
わずかな隙間に挟まれたまま身動きできない身体を必死に動かして背中が感じたのは冷たいコンクリートの壁の残骸。
「無理に動くな。
下手したらせっかくの隙間がなくなるぞ」
その声は脅しじゃないと真剣に響く。
「何が起こったの?」
「俺にもわからない。ただ重機でがれきを取り除いて助け出されるまでにはまだ時間がかかるってこと位はわかる」
「みんな・・・大丈夫かな・・・?」
「たぶんな・・」
そう祈るしか今はできそうもない。
翼にはすずが、本城さんには佑?
みんなそう遠くはないところにいたはずで・・・
きっと大丈夫。
私たちも助かってるもの。
密着した身体から感じる互いのぬくもり。
心臓の鼓動を感じるたびに生きてることは実感できる。
「大丈夫か?
震えてるぞ」
「怖くないはずないでしょう」
「少し、光が見える」
うつぶせで大内先輩の胸の上に乗ってる状態の私には確認できるはずのない。
それでも光が差し込むというのならそうなのだろう。
「大丈夫だ。必ず助け出される」
「天下の道明寺財閥の息子と娘が巻き込まれてるんだからな」
ポンと頭の上に置かれた手のひらがクシャっと髪の毛をなでる。
「救助するのにそんなこと関係ないでしょう」
「悪かったな。美作じゃなくてそばにいるのが俺で・・・」
今・・・
一緒にいるのが佑じゃなくて嫌いなはずの大内先輩で・・・
こんな生きるか死ぬかの状況で・・・
頭をなでられただけで・・・
こんなに落ち着けるなんて・・・
不思議な気がした。
冷たくて横暴で威圧的な奴なのに・・・
根っこの部分じゃやさしくていい奴。
だって不満そうにしながら今日は私たちに付き合ってくれたもの。
「ワン!ワン!」
静けさの中に混じる犬の声。
少しづつ近づいて大きくなるのがわかる。
救助犬?
「助かる?」
「あぁ、よかったな」
その声にほっとしたら気が抜けて気を失ってしまっていた。