PHANTOM 19

このまま順調に行くわけない!!!

なんせ題名がPHANTOM ですから~

上昇気流に乗ってのスムーズな上昇を繰り返すより気流に煽られてどこに漂流するかわからないほうが楽しいに決まってます。

って・・・この二人が思ってるわけないか・・・(;^ω^)

数基並ぶエレベーターの一角。

重役専用のエレベーター。

最上階まで停車なしの直通。

その前にいる道明寺は眉をしかめる渋めの表情でエレベーター数字の点滅を眺めてる。

ちらりと腕時計に落とした視線はイラッとした感情を隠そうともしない。

道明寺が千葉さんに興味を持ちだしたあたりから不機嫌さは上乗せされてる。

「お前がSPを呼びたい理由なんだ?」

負のオーラーを背中に背負ったままの低い声。

道明寺と肩を横に並べエレベーターを待っていた私は条件反射見たいに一歩足を引いてしまった。

「だから、突然道明寺が消えたら千葉さんたちが心配するんじゃないかと・・・思って・・・」

完璧に疑ってる視線は遠慮なく私の心臓をえぐって、私の声を焼失させる。

もうチケットを千葉さんに預けたことを言ってしまおうか。

そして、その公演の日はデートしよって言うの。

サプライズ感はないけど、今はそんなことよ、冷たい雰囲気の道明寺をどうにかしたい。

エレベーター周辺の音が消えて別な空間を作ってる。

周りが誰も近づけないバリアー。

各階停車の一般エレベーターの前からも人影が消えてる。

この気まずさはさすがにいたたまれなくて落ち着かない。

「あら、ここにいたの」

後ろから聞こえた声は道明寺の声よりも周りを一気に緊張に走らせる存在感を示す。

道明寺楓。

道明寺HD会長であり道明寺のお母様そして私の姑。

いまだに会うと一番緊張してしまう存在で少しも気が抜けない。

「お久しぶりです」

一気に身体を回転させて深々と頭を下げるのは条件反射。

思いっきりの笑顔を作って頭を上げる。

その私の横で、なんだと一瞥の冷たい視線を向ける道明寺は相変わらず。

この二人の仲は随分と改善されてるはずなのにぶっきらぼうで親しみのこもらない道明寺の態度は変わり映えなし。

その分私が必要以上に気を使うってわかないのかな?

道明寺が愛想よくしてくれたら私も少しは楽なのに。

でもそんな気遣いを見せたら私よりお母様のほうが驚いちゃうかも。

「久しぶりに、親子で食事でもどうかしら?」

「ばばあーと食事できるほど暇じゃないんだよ」

「あなたを誘ってるわけじゃないわ。つくしさんを誘ってるの」

この場合・・・どう返事したらいいのかな?

道明寺は不愉快さを全面に出して攻撃態勢をとる一歩手前。

「こいつは俺とっ・・・」

道明寺が声を張り上げる前にお母様の手のひらが道明寺の声を制するように整った顔立ちの鼻先につきつけられる。

それは、あなたには聞いてないとの無言の圧力。

道明寺を一発で黙らせる威圧感はさすが鉄の女と称されただけのことはあるって思う。

道明寺を誘ってないって拒むってことはこの威圧感が道明寺以上の相手と私は昼食をとるってこと?

道明寺ならふてぶてしい態度も暴言も言いたいこと言って対抗できるけど、お母様には無理だよ。

道明寺との交際を反対されたころなら虚栄をはってでも言い返してたけど、大学生活での私のがんばりを認めてくれたそれな利に好感度も上がって嫁として認めてくれてるお母様。

ここから先はもっと道明寺の嫁として認めたもらうように頑張らなきゃいけないいんだから。

可愛い嫁って思われたい欲もある。

それを差し引いても一緒に食事って無理だよ。

まだ道明寺と二人のほうが気が楽だ。

「上に用事があるんだよ。

だから今はまだこいつを貸せない」

グイと道明寺の腕が伸びて私の首に巻き付く。

道明寺の懐の奥深くとらえられた私は身動きだけじゃなく声を出すこともできなくなった。

なんだか、凶悪犯にナイフを突きつけられて人質にされてるような気分。

お母様に助けを求める余裕なんてあるはずない。

そして、ちょうど到着したエレベーターのドアが開いてその中に道明寺に引きずりこまれた。

そんなことには動じず表情も変えないお母様は一緒にエレベーターの中へ。

千葉さんや相葉さんよりベテランって感じのSP集団も一緒。

私たちに背中を向けたエレベーターの扉の前に作る頑丈な壁。

ここでエレベーターのドアが開いても誰も乗り込めないって思う。

「つくしさん」

「ハイっ」

私を呼ぶお母様の声にすっとんきょうに鼻から声が出た。

「30分後に私の部屋に」

それは拒否権のない命令系。

「司も、きたければ一緒に良いわよ」

「行かねぇよ」

ブスっと答える道明寺の道明寺のすねをつま先でこつんと小突く。

「ご一緒します」

イテッと声を上げそうな道明寺を視線で制しながら早口で答えた。

私一人で行かせるなんてありえないんだから!