十六夜の月は甘く濡れて 17

司君が動きだしたところでこのお話も先が見えてきました。

実はこの後意外な展開!番狂わせ!

あるとしたら、類がつくしと~~~~~

こんなところからるいつくに発展!?

我が家の場合それはないなぁ・・・(;^ω^)

*

「ここから逃げること考えてなくていいの?」

長椅子に寝そべって顔に開いた本をのせてる花沢類。

その姿はいつもの花沢類と何ら変わりがない自然体。

本気で寝てる?

空気の乱れもない緩やかな雰囲気。

花沢類らしいその姿。

私の声に気が付いてちょっと本をずらして眠たそうに開く瞳。

その仕草が、表情が好きだって思う。

もちろんその感情は道明寺が好きとは違うけど、愛でるには贅沢な視写体。

「信じてるんだよね?

司が助けに来るの」

だからここで待ってればいい。

そんな雰囲気で身体を起こした花沢類は長椅子に腰かけたまま両手を大きく上に伸ばしてあくびを隠すように手のひらを口に当てた。

助けにきてくれる。それは信じてるけど落ち着かない。

屋敷にの中には見はられてるような人影を感じない。

ところどころに設定された防犯カメラが私たちの動きを感知してレンズが動くの見て、しっかり監視されてるってわかる。

カメラのレンズに目隠ししてやろうかと本気で思ったりもした。

「敵に動き見せたほうが油断させられるから」

気に掛けるところはしっかり気にかけてる花沢類に止められてその行動はやめた。

「それは信じてる」

心配して、心配して、私を助け出そうと必死になってるあいつの姿。

助けてくれた後はきっと力いっぱい抱きしめてくれるはず。

そして落ち着きを取り戻した後には「お前は俺にどれだけ心配かけさせれば気が済むんだ」なんて

本気で怒ってるあいつの顔が浮かんでくる。

助けが来るって信じてなければ・・・

花沢類がそばにいなければ・・・

何も行動を起こさずにおとなしくしてる私じゃない。

「そんなに時間はかからないて思うよ」

首を傾げて私を覗き込む花沢類のサラサラの前髪がわずかに私の額に触れるからビクンと身体が緊張した。

いつもそう。

ふとした拍子に気が付くと花沢類との距離が近距離に近づく。

それは一瞬の出来事。

風船がパンと割れるような・・・

夢が突然覚めるような感覚。

そして、澄んだ瞳はまっすぐに私を見つめて微笑む。

まっさらな花沢類の感情がスっと私の身体に流れ込んで暖かく身体を包み込んでくる。

邪心を感じないから安心して花沢類を見つめ返すことができる。

こんな人、世界中に二人といないって思う。

「あのさ、もしも・・・

もしもね」

花沢類の隣に腰を下ろして一呼吸分の息を継いで言葉を続けた。

「もしも・・・花沢類のそっくりさんが私の前に現れていた、私は気が付いたかな?」

いくら顔を似せても、花沢類はたった一人で・・・。

抜群の信頼感を感じてる私が間違うはずはないって確信はある。

それでも花沢類に聞きたくなった。

「牧野が俺を間違うはずないでしょう」

花沢類の口からそう言ってもらいたい。

それが何って言われたらそうなんだけど・・・

花沢類にも私を信頼してほしいって願望だって思う。

「それ、俺に聞くの?」

「え?」

ほほ笑んだ瞳は私を見つめたままに返された思わぬ疑問符に焦ったのは私。

「自分でわかってるよね。

牧野が俺を間違うはずがない」

形を変えて動いた唇はそのまま寂しそうに口角を緩める。

「そろそろ来たかな?」

窓の外に視線を移しながら椅子から立ち上がった花沢類は窓辺に近づいた。

きらきらと波に反射する光が白く見える。

その空の向こうからかすかに聞こえるプロペラの音。

それは少しずつ大きくなってヘリだと裸眼で確認できるまでにこの島に近づいていた。