十六夜の月は甘く濡れて 18
さあ、このお話もあと少しで終わりです。
カウントダウン開始♪
かっこよく司君につくしちゃんを助けてもらって感動巨編の出来上がり♪
感動巨編にはならないか・・・(;^ω^)
*「どうして・・・ここに・・・」
目の前の男は明らかに動揺を隠せない表情を浮かべる。
ここはホテルのスイートルームの一室。
道明寺系列のホテルを使用してる時点で間抜けとしか言いようがない。
日本中のどこのホテルを使おうが見つけるのは時間の問題。
俺たちF4の力を甘く見るな。
とはいっても今目の前にいるのは俺だけだけど。
「司、島が見えたぞ」
耳に届いたのはあきらの声。
「俺が行くまで助けるなよな」
「相変わらずの我儘」
さっきとトーンの変わった声は総二郎のも。
あいつらは島が視野に入る程度の距離までクルーザーで近づいている予定の時刻。
俺はこいつをかたずけてからヘリで合流する予定。
ボキボキの鳴らす指は目の前に男に対する威嚇。
「島に行ったんじゃないのか?」
「へぇ、その辺の情報は把握してたんだ」
「狙う相手を間違えんなよな」
グイと一気に攻め入る俺の前で雪崩を起こすように倒れこむ男の胸ぐらをつかんで引き起こした。
「俺を直接狙ったんだったらまだ許せたのにな」
「うるさい、お前の婚約者はしっかり花沢類と選んだんだぞ」
「類の偽物だろ?」
ごくりと喉仏が動いて吐く息も一緒に男はつばを飲み込んだ。
「俺たちにばれてるってことは今知ったんだ。
ついでに教えてやるよ今牧野と一緒にいる類は本物だから」
「嘘だ、誘惑する映像もしっかり届いてる」
モニターのリモコンを必死に操作する男の指先はいらだちを隠せずに震えてる。
明るくなった画面に映るのはベッドのうえの牧野と類。
重なった身体につくしの顔を覆う類の後ろ姿。
ラブシーンを演じてる雰囲気の画像は嘘だとわかってる。
演技だとわかってもやりすぎだろう。
メラッとした嫉妬心を俺に植え付けるのには成功してる。
類も牧野も俺を裏切るはずはない。
その揺るぎようのない信頼が今の俺を押しとどめてる。
「こんなのが決定的な証拠だとでもいうのか?」
「お前の浅はかな考えにノッてやっただけだろう」
途中までは俺には何も言わなかったあいつらのやり方気に食わねぇけどな。
左手で襟元を強く閉め上げたまま男を見下ろす。
首から上が赤く色ついて苦しそうに表情をゆがめ恐怖の色がそいつに浮かんだ。
大きく振り上げた右手の拳を思い切り垂直に振り下ろす。
ドスッと大きく床につき下ろした腕を男はそのゆがんだ表情のままで視線で追ってほっとしたのか、くぐもった声を上げた。
少しの隙間から漏れた悲壮な声。
「殴るにも値しねぇは」
襟元から左手を離して立ち上がる。
床に上向きに倒れこんだ男は解放された気道から急激に流れ込んだ空気に噎せるように急き込んだ。
「二度と俺の前にその面を見せるな」
こいつの親父が二度とそうはせないはず。
どれだけの損害を与えたのかこいつが知る頃には日本にいるとは思えない相手。
そのまま、ホテルの屋上から飛ばしたヘリは海上に浮かぶクルーザーの上を通り抜けたあいつの待つ島に降り立った。
総二郎とあきらが不満気な表情で俺の乗ったヘリを見送るのを見つめながら・・・。