Unfair 4
この流れでいけば一気に濃厚な二人に行くパターン。
千和の不満はそこでなかったことにされるのよ~。
花男の司なら蛇の生ころがしも多数存在。
はぴまりだとお預け状態になるのは千和ちゃんでしたっけ?
大人な北斗は焦らすのも天才的だからなぁ~。
かすかに開いた唇から漏れる甘い吐息。
まだ足りないと誘うよう熱を持つ千和の表情は恍惚と俺を見つめる。
「同僚か・・・」
唇をかすかに動かして作りだした音を八神に変えようかと思う感情を押し殺す。
情報網は秘書の相馬から。
「いいんですか?」
心配するというよりは苦言の態度。
相馬に言わせれば千和よりよっぽど俺のほうが心配らしい。
八神だけじゃなく今の俺たちの間に入りこんで心を惑わすものはいない。
昔ほど相馬を心配させることもないはず。
「気を抜いてると、捨てられますよ」
最近の俺の態度は相馬には千和に冷たすぎだと映ってるとわかる態度。
あいつが俺のそばを離れる。
想像できないがな。
俺を見つければ小型犬並の愛想のよさで尻尾を振ってまとわりつく。
八神を本社から飛ばしたのは間違いなく俺の嫉妬。
俺には話せないこともあいつになら話せる。
そう言った千和に傷ついた自分自身に驚いた俺。
今日も千和は俺に話せないことを八神に話したのだろうか?
今度は滅多に帰ってこれないような海外に転勤させるぞ。
座り込みそうな千和をソファーの上に座らせて距離をとる。
「風呂、入ってくる。
続きをしてほしいなら来いよ」
物足りなそうな表情は一瞬にして我にかえって俺を見つめる。
「行かないから」
真っ赤に頬を染めたままとがる唇。
ついさっきまで俺のキスに反応して甘く返してきたキス。
舐めあった舌先にキスの余韻は今も残る。
何も言葉を返さないまま、目の間で脱いだシャツを千和にかぶせるように投げた。
見事シャツを頭かぶった千和は直ぐにシャツを剥いでシャツの襟元から顔を出す。
華奢な身体には不似合いの俺のワイシャツ。
すっぽりと覆われたまま千和は大きすぎるシャツの中に埋まった小型犬にしか見えない。
「脱ぐんだったら、脱衣場で脱いでよ」
「いつもならどこで脱いでも何にも言わないのよな?」
見慣れてるはずの俺の上半身に見とれてるのがわかる反応で慌てて千和が目をそらした。
「先に行ってる」
湯船でゆっくり待ってればあいつはきっと来る。
俺は優雅に湯船で足を延ばして待つだけでいい。
カチャリと開いた浴室のドア。
白い足が浴室に入ってくるのがわかる。
俺の浸かってる湯船に入ってきた華奢な身体を抱き寄せるだけの手順。
・・・。
目の前を通り過ぎた裸体はそのままシャワーに手を伸ばした。
しなやかな体に振り落ちる飛沫がそのまま身体の曲線をなぞって流れ落ちて排水溝に流れ込む。
水音だけが響く浴室に小さく吐息が漏れる。
シャワーに代わって艶めかしい身体を指先ですぐにでもなぞりたい欲望。
最近の俺の導火線は短くなってる気がした。
シャワーを浴び終えた千和はそのまま来た時のようにゆっくりと俺の前を素通り。
「続きはいらないから」
膨れっ面は健在のままの捨て台詞。
「おいっ」
湯船から立ち上がった俺から目を背けるようにしてバタバタと浴室から出ていった。
予定・・・じゃなく・・・
調子が狂う。
煽るつもりが自分が煽られてしまってる。
千和はそのことに気が付いてるだろうか?
ククっと心地いい笑みが自然との唇からこぼれた。
ここからどう、あいつを素直にさせてやろうか。