十六夜の月は甘く濡れて 20
最終話までのカウントダウン開始です。
さぁ!司君の思いは遂げられるのか!
無事につくしを助け出すことができたんだから達成はできてるんだった・・・(;^ω^)
それでもラストシーンはやっぱりねぇ。
腕の中でと行きたいもんです。
「飛び降りたのか!」
「むちゃくちゃだな」
窓辺から見えたのは地上に座り込んだまま抱き合ってる司と牧野。
驚くというよりはあきれた表情がそのまま笑いに変わる。
何度となく見てきた光景。
和らぐ司の表情が牧野を大切にしてるって証明している。
「嬉しそうに頭、撫でてるな」
「俺には猿の毛づくろいに見えてきた」
あきらと総二郎の会話は平和そのもの。
この二人とはまた違った場所で俺は牧野と司を眺めてる。
どこか・・・
まだ・・・
牧野のことは特別で・・・
何度も司と牧野の絆を確かめては喜びと寂しさがマーブルのように混じりあって小さく息をもらす。
安心したいのか・・・
あきらめたいのか・・・
未練とはまた違った自分でもわからない感情。
「類」
「ん?」
「いや・・・お疲れ」
久しぶりに総二郎とあきらに肩を左右から組まれた。
何も聞かない二人。
左右から流れ込む感情は暖かく俺に流れ込んでくる。
「クルーザーとヘリどっちで帰る?」
「司と牧野を二人きりにしてやるほど俺ら親切じゃないよな?」
「ヘリは先に帰すか」
そう言ったあきらは直ぐにヘリの操縦士に連絡を入れている。
「おい!ヘリが島から離れていくぞ」
立ち上がった司の大きな声が響く。
「そんな、焦る必要ないだろう。クルーザーがあるんだから」
司の声に対抗するように総二郎が大きく声を上げた。
「ヘリのほうが早く帰れるだろうが」
「何言ってるか聞こえない」
十分に聞こえる司の声はわざと無視するように明が耳に手を当てる仕草を見せる。
「牧野と早く二人っきりになりたくて文句言ってんだろう」
「しっかり聞こえてんじゃねぇか」
総二郎の声にふてくされた表情を司が作った。
「お前らは島に残れ」
司の横で必死で背伸びをした牧野が司を押しとどめるようにシャツの胸元を顔を真っ赤にして引っ張るのが見えた。
何か言ってる声は小さくて俺たちには届かない。
そんなこと言うなとか。
一緒にかればいいとか。
きっとそんなたぐいのことを言ってるって思う。
総二郎の言葉のもつ意味をがっつり理解してる牧野の牧野らしい反応。
「クルーザの中でずっと不機嫌な司の相手するのも面倒だな」
「牧野がうまくやるだろう」
「あいつら見てると飽きないしな」
窓の下では司と牧野の言い合いが始まってた。
痴話げんか。
司に負けずに言い合いができるのは世界中さがしてもきっと牧野だけだ。
完璧に楽しんでる表情で覗き込んでる総二郎とあきら。
俺もそれにつられるように口元が緩んだ。
「平和だな・・・」
「そうか?」
「司と牧野に振り回されぱなしだぞ、俺たち」
地上の二人の言い合いはいまだに続いてる。
牧野にそっぽを向かれた司がグイと牧野の肩をつかんで引き寄せたのが見えた。
「あいつらを置いて帰るか?」
「数日置き去りにしても文句言わないんじゃないのか?」
「牧野は嫌がるって思うけど」
誰からともなく俺たち3人は歩きだして司と牧野のいる屋敷の外へ出た。
拍手コメント返礼
あーちゃん様
この空気感はこの五人でしか表現できないですよね。
ここからはラストの追い込みです♪
台風も過ぎて夏本番ですね。
体調には十分にお互い注意しましょうね。
やなぎ様
空気感いいですよね。私も好きです。