十六夜の月は甘く濡れて 22(完)

司!野獣となる!

このままの流れでいったらねぇ・・・パス付で!

それがねぇ・・・

いま・・・

夏休みなのですよ。

こそこそしてるのは私のほうだったりして・・・

それなのに・・・

部屋に二人っきりになっちゃったしなぁ。

入り口のドアに耳をくっけて聞き耳をたてるって野暮な真似はF3はやらないだろうし・・・

殿!ここは安心して御存分に!

時代劇の悪代官に司が見えてきたぞ。

「面白い顔してんじゃねぇよ」

ソファーの上に押し付けた俺の下で苦しそうに目を閉じた牧野。

俺の重みで動けなくなった身体が強張っていくのがわかる。

慌てたないで落ち着いていこうって

お前俺を調教するつもりかつーの。

4人が好きってこいつの言葉に乱された心。

俺をイラつかせるのは相変わらず天才的だよ。

俺はここまでお前を助けに来たんだぞ。

二階から飛び降りて俺の腕の中に飛び込んできたことに俺は感動してたんだ。

戸惑った表情をお前にさせるためじゃない。

嬉しそうな笑顔さっきはしっかり見せたじゃねぇか。

牧野の身体を股に挟んだまま緩めた腕の力。

いつでも俺のの束縛から逃げられる状態。

小さく息をつく唇。

ホッと気がゆるんだ表情をそのままゆるゆると閉じた瞼を開く。

わずかに震えるまつげが開ききる前に指先は牧野の鼻の頭を軽くつまんだ。

驚いたように大きく開く瞳。

まっすぐに俺を見つめて非難気味の色を浮かべる。

「俺に迫られてそんな嫌そうな表情する奴いないぞ」

「道明寺が嫌なんじゃなくて今が嫌ってだけで!」

すげー勢いでその勢いのままに吐き出した牧野。

今じゃなきゃいいって意味の内容。

その意味・・・

こいつ理解できてるのか?

一呼吸の間が牧野に想像させたようで見る間に頬が赤く染まる。

「無理やり犯すつもりはねぇよ」

牧野を下に組み敷いてる状況じゃ説得力のない言葉。

牧野の横に置いた腕に牧野が手をかけて俺の下から這い出すように身体を動かして起き上った。

「誰かに迫ったの?」

「え?」

「だから私以外は嫌そうな表情しないんでしょ?」

ムッとし表情はそのまま一歩も引かない強い目力で俺を見つめる。

「あのな、俺が牧野以外の女に迫るわけねぇだろう。

俺にその気がなくてもモテるのは俺の責任じゃねぇし」

「それ、いいわけになってないけど」

「言い訳なんてする必要ねぇよ。

俺がお前を裏切ることは絶対ないから」

起こした身体は自然とソファーに二人して腰を掛けて並んで座る位置になっていた。

膝の下に手のひらを敷いて足を軽くぶらぶらさせてる牧野。

牧野が動くたびにかすかに触れ合う肩。

軽い振動がつながって隣に牧野のがいるってだけでうきあがるうれしさ。

わずかにうつむく牧野の口元は照れ臭そうに笑ってるのが見える。

少しづつ近づく距離は互いに触れ合う肩の小突きあいを楽しんでる。

肩から上腕えと触れ合う面積は増えて牧野の指と俺の指が絡み合った。

「お前の気持ちを無視するようなことはもう、しないから」

嫉妬に任せて無理やりお前を抱いたこと。

あの時のお前のあきらめたような表情と苦悩が入り混じった感情。

俺のなすがままで抵抗を見せなかった牧野。

それはいつものお前らしくなくて俺をイラつかせた。

牧野をベッドに一人残したまま出ていったのはそんな自分を冷静にさせるため。

このままお前と会えなくなったら・・・

思うだけ狂いそうな感情。

お前の笑顔が俺を見送って別れなきゃ落ち着かない。

まだ大声で喧嘩して、互いの悪口言い合って、 二人でそっぽを向いたまま別れたほうがましだって思えるのは皮肉なものだ。

今すぐにでも牧野を思う存分抱きたい感情。

抱きしめて奪いつくして存分に食い尽くして味わって・・・

それは、二人の時間を過ごせば過ごすほどその欲求は薄れるどころか強くなって俺を支配する。

「道明寺・・・」

グイと俺の手を握り返した牧野が下から怪訝そうな表情で覗き込んできた。

「何でもねぇよ」

心臓がドキンと高鳴ったのは邪な俺の感情には少しも気が付いてない無邪気な牧野の幼い顔。

こいつ・・・

いまだに幼くて高校生くらいに見えねぇし・・・

なんか・・・

こう・・・

罪悪感みたいなこと思うって普通恋人同士じゃなりえねぇだろう。

今は・・・

それよりも・・・

しっかりと話し合って自分の感情よりも牧野の気持ち優先。

俺らしくねぇ気遣いもこいつのためなら余裕。

「道明寺・・・

ありがとう」

頬に触れた指先。

そのまま近づいてきたあいつの唇は触れるだけの軽いキスを唇に残して離れた。

プツン!

頭の中で理性の糸が切れた音が響く。

俺は牧野の後頭部を片手で抑えつけるとグイと引き寄せて唇で唇を塞いでいた。