迷うオオカミ 仔羊を真似る 4

夏の暑さに負けない二人♪

久々の進くん目線でのお話し。

この子も姉に劣らずの初心さで~

これは牧野家の伝統かしら?

姉貴夫妻観察日記書いてたこと思いだしました。

西田さん日記に負けちゃったんだよな・・・(;^ω^)

忙しいんじゃなかったの?

西田さんは代表には内緒にしておきます。なんてことを言ってたような気がする。

でも・・・

私を心配して駆けつけてくれた道明寺を見た途端にそんなことはどうでもよくなってうれしさを顔に貼り付けてしまってた。

そんな私に道明寺がかけた言葉は「心配した」じゃなくて、「お前!倒れたんじゃねぇのか!」 の不機嫌なトーンの声。

私がわざわざバイト代をフイにしてまで仮病を使うはずないつーの。

道明寺を心配させてなんの得があるのか。

道明寺なりに心配してくれたことはうれしいだけどここはもっと安心した緩んだ表情見せるとかできないのかな?

ちょっとの不満は私の我儘。

それでも道明寺が息を切らせて駆けつけてくれたことの感動が我儘に打ち勝っている。

「心配かけてごめん」といい終わらないうちに道明寺に抱き寄せられて押しつぶされるような悲鳴が短く口から飛び出した。

本当手加減なし。

骨が折れる!

「聞いてねぇぞ」

頭の上から聞こえる声はすでに威圧的。

「え?」

「バイトだよ」

「あっ・・・バイトね・・・」

バイト・・・西田さんの紹介だなんて言ったら西田さんに迷惑がかかる。

「俺に内緒にしてなきゃいけないようなバイトしてんじゃねぇだろうな?」

内緒にしなきゃいけないような態度を誰かさんがとるから内緒にもしたくなる。

私のバイト先でのお客さん。

注文を取る私の横で「誰に断ってこいつに声をかけるんだ」とすごむ。

道明寺に気楽にバイトのこと言えるわけがない。

どれだけ肩身が狭い思いしたか分かってるの!

極めつけは『道明寺さんと付き合ってるならお金には困らないでしょ?』

そんな言葉でもう来なくてもいいよと店長に宣言された私の気持ち道明寺には理解できないよね。

「それはない」

今回のバイトは道明寺の許容範囲だって思う。

しぶしぶながら最近は私のバイトの邪魔をすることも減ってきた。

これは西田さんがしっかりフォローしてくれてるからだろうけど。

倒れた私を心配して見舞いにきてくれたはずなのにやさしくもなく私を気遣う素振りも全く見せない道明寺。・

今はバイトのことなんてどうでもいいと思う。

私に心身ともに休ませるってことが重要だってことわかってる?

そういえば高校の頃。

まだ付き合うとかどうとかが微妙な関係の時。

道明寺が重症を装って命も危ないふりして私を驚かせたよね。

その時はF3も加担しての迫真の演技に騙された。

忘れていた記憶がふつふつと怒りに変わった。

「私の疲れがたまってるの半分は道明寺のせいだからね」

だから!

さっさと私を一人にして帰って!

え・・・

道明寺?

体中が熱を持ってるように肌の色が赤く見る間に染まってる。

なに?

怒り心頭って表情じゃなくて照れ臭そうな何とも始末が悪いって道明寺。

突然背中を向けるようにして道明寺が私の寝てるベッドの脇に腰を下ろした。

スプリングは勢いよく跳ねて身体に伝わる振動。

それはまるで動揺する私の感情のようでドキンとした。

「悪い」

それは道明寺にしてはとてつもなく小さな声。

「俺、手加減するの下手だからお前に無理させるんだよな」

道明寺の放出する熱が私にも移った。

道明寺が赤くなった意味。

私の怒りに任せて言った言葉の意味。

そのどれもが夜の二人の関係をすべて物語っていて・・・

妄想すれば言葉の意味はエロく変換されてしまう。

「道明寺が、全部・・・悪いってわけじゃないから・・・」

あっ・・・

これもやばい。

しっかり道明寺を受け入れ準備OKみたいなことじゃないの?

道明寺が私を何度も求めてくれるのが嫌なはずなくて・・・

それはうれしいに決まっていて・・・

時間さえあれば会いたくなるのはしょうがなくて・・・

別れる時間が来なきゃいいって思うのは日常で・・・

別れたら別れたですぐに顔が見たくなって、声が聞きたくなって、二人でいる時間は確実に増えている。

「今日は、ゆっくり眠れ」

ポンポンとゆるく頭に道明寺の手のひらが触れる。

そこから落ちてきた手のひらは私の頬を包みこんで黒曜石の輝きにアーモンドアイ。

その大きな瞳を縁取る長いまつげ。

きらきらと輝く瞳が私をやさしく覗き込む。

「どうした?」

息のかかる距離でこんなに近づいて視線を交わすことには慣れなくて熱と同じくらい心音も駆け上がる。

私の心臓の音が道明寺にも聞こえてそうな気がする。

「子守唄でも歌わなきゃ寝れないか?」

「子守唄?」

「道明寺が歌うの?」

「子守唄なんて俺が知ってると思うのか?」

どちらからともなく吹き出した笑い声。

「寝ろ。添い寝はしてやるからそれで我慢しろ」

添い寝?

ここで?

スクッと立った道明寺は軽々と私を言ったん持ち上げたと思ったら、ベッドの中に私をすべり込ませた。

そのまま私の横には道明寺が身体をすべり込ませてくる。

「寝ろ!」

片肘をついてその手のひらの上に頭を置いた道明寺。

寝れるわけない!

それもここ病室。

患者以外が泊まれるの?

楽しそうに私を眺めてる道明寺。

聞くのやめた。

この人にダメって拒否することができる人いるわけないか。

明日・・・

退院できるかな?

なぜかぐっすり眠れたすがすがしい朝。

本当に添い寝だけの道明寺。

二人してベッドに入って、おでこに軽く触れただけの道明寺のお休みのキス。

ただそれだけの触れ合いで眠ったのって何年ぶりだろう。

あの雪山の遭難以来かも。

あの時も気が付いたら朝だったんだよね。

「んっ~」

大きくベッドの上で両手を伸ばして背伸び。

その私の横で道明寺はまだ規則正しく寝息を立ててる。

コンコンとノックをする音が病室のドアに響く。

ハイと返事をしたと同時に開くドア。

「やはりここでしたか・・・」

ベットから降りた私にベッドで寝てる道明寺へと視線を映したのは道明寺代表第一秘書の西田さん。

「代表」

大きく息を吸って吐き出した二文字。

静かに低く響くその声はどんな目覚ましより能力を発揮しそうだ。

その声に少しだけ道明寺の身体がピクついた。

でもまだ起きそうにもない。

つかつかとベッドのそばに歩いた西田さんが腰を曲げて道明寺の耳元に顔を近づける。

「代表、つくし様はどこですか?」

え?

いますけど?

西田さんの声に寝ぼけた様子で道明寺がベッドの上に飛び起きていた。

拍手コメント返礼

あーちゃん 様

こんな起こし方できるのは西田さんだから。

きっと誰もは真似できないですよね。