門前の虎 後門の狼 2
色シリーズに追いやられてなかなか続きが書けなかった新作。
久々に優紀ちゃん登場で始まったのに先に進めない。
さてどんな事件に巻き込まれるのか・・・
って、何かが起きるって思うのはなぜなんでしょう。
たんに愚痴を言って終わりかもしれないですよ~。
それはないか・・・(;^ω^)
「ごめん、というわけだから」
ガタンと椅子が音を立てて牧野が立ち上がる。
「待てよ。俺はまだ何も聞いてない」
携帯の相手がこいつのダチだってことだけしかわてない。
携帯の話す内容が聞き取れるほどの犬のような耳は持っちゃいねぇよ。
せっかくの俺たちの時間を邪魔するの短時間でもムカつく。
俺と会うときは携帯の電源を切っとけよ。
どうせなら牧野の携帯には俺だけしか連絡を取れないようにしちまうか。
「何かあった?」
心配そうな表情でこいつが言葉を口にした時には嫌な予感がしていた。
「座れ」
牧野の動きを止めるように伸ばした腕は右の手首をぐっと掴んで引き寄せた。
しぶしぶと俺の横に腰を下ろした牧野。
身体を半回転させて俺の横に真正面に身体を持ってきた。
「優紀が、相談したいって」
「何の相談だ?」
「それを今から聞きに行くんでしょう」
俺をほっといてか?
俺より大事なことか?
どっちを言葉にしても牧野に縋り付いてるような情けない感情。
怒りの口調で言わなきゃ言えねぇよ。
「お願い」
言葉を発する前に俺の不機嫌を察知した牧野の困惑の表情。
下手に出て上目目線で甘える声で言われればゆらっと心が揺れる。
その甘える子猫のような潤む目で俺を見るの反則だぞ。
以前ならダメだの否定形には傲慢だとか我儘だとか反抗的に強気で言い返してきた。
なのに最近牧野はこうなんだよな。
甘えてお願いされると調子が狂う。
「らしくねぇよな」
「え?」
「しおらしく俺にお願いするのはお前に似合わねぇんじゃねぇの?
だから、らしくねぇって言ったんだよ」
俺の言葉に反応するように牧野の瞳が大きく開いて俺を見つめる。
「別に甘えたつもりも媚びを売るつもりもないから。
ただ、久しぶりに会って私の都合でサヨナラするのに道明寺を怒らせたくなかっただけだから」
いつもの調子の刃向う調子の牧野が目の前で口をとがらせる。
この調子のほうが俺もやりやすい。
「気を使ってもらって悪かったな」
横柄につぶやいて睨む合う視線は反発しあってさっきまでの甘い色はかき消えてしまった。
これじゃ本当にぷいと牧野はそっぽを向いて俺から離れていく一歩手前。
俺も、けんか別れしたいわけじゃない。
「サヨナラって・・・」
あたりから聞こえたざわついた声。
牧野の言った言葉のサヨナラするのとこだけ派手になってねぇか?
「道明寺さん・・・別れ・・・ フラれた・・・
嘘っ!」
牧野!
お前すげー噂を提供してるぞ。
怒ってる牧野にはまだ周りの声には気が付いてない。
気が付いたらこいつどんな表情を見せるのかな?
今俺たちがいるの、大学だから。
今日中には俺とお前が別れったって噂広まっちまうぞ。
焦った牧野を想像しながら笑ってる俺はどうしようもない悪。
それでも別れた噂が少しでも出るのは俺のプライドが許さない。
俺たちに別れなんてないんだから。
「牧野・・・」
「何よ!」
グイと頭を巻き込むように回した腕で強引に牧野を引き寄せてキスをした。
「ぐふ」とこもる牧野の声。
テーブルと椅子の間に挟まれた身体は思うように身動きが取れずに牧野と俺の身体を行動範囲を狭めてる。
唇を離した牧野は何が起こったか理解できない放心状態で俺を見つめてる。
熱を帯びた肌の感触。
真っ赤に染まる頬。
牧野の腕が俺を殴るように上に上がったのに気が付いた。
ここ殴られたらそれこそ噂に油を注いで外野を喜ばせてしまう。
振り下ろされる前に抑え込んだ牧野の腕。
「こんなところで何するのよ」
今にも飛びついてきそうな瞳が俺を睨みつける。
「サヨナラするつもりはねぇから」
ささやく唇は牧野の耳たぶにかすかに触れる。
「俺も行く」
言葉を失ったように動かなくなった牧野の唇。
そのまま二人で席を立つ。
足取りのおぼつかない牧野に右手を腰に回した。
まだ俺にキスされた意味を考えてるってところかぶつぶつと「だから、なんでキス?」とつぶやく小さな声。
「キスの意味はあとで教えてやるよ」
「別に、いいッ!」
腰に回された腕を振り切って牧野が俺から離れた。
振り向いたその顔はめいっぱい膨れて俺にしかめた表情を見せた。
舌出してんじゃねぇよ。
今、牧野を見てる俺は筋肉が緩んでくるのを必死で押さえてた。