門前の虎 後門の狼 7

さすが坊ちゃんのつくしレーダーは最高級品ですね。

さて、どうつくしはこの危機を乗り切るのか!

逃げることを考えるより食べられたほうが楽な気がするのは私だけでしょうか?

コツコツと響く靴音が心臓に跳ね返る。

周りのどんな雑音も打ち消して、心臓のドクントクンと跳ねる音はいつ胸の奥から飛び出してもおかしくないと思える。

「牧野、大丈夫?」

私の右横にいた花沢類は気遣うように足を止めた。

「無理しなくてもいいんじゃないか?」

それはこの場を今すぐに立ち去りたい気分の私を逆に後押ししてるように聞こえる美作さんの声。

「時間を置けば先に司に気が付かれるってことも否定できないからな」

写真を撮られたのは西門さんであって、私が撮られたわけじゃない。

他人事のようにつぶやく西門さんが浮かべた余裕の笑み。

大体ひっきりなしに女性と遊んでる西門さんなのにどうして私の時に撮られるのか。

運が悪いとしか言いようがない。

悪運を引き寄せてるのは私かな?

写真を撮られた西門さんは全然困った様子は見られないもの。

ここはお祓いでもしてもらったほうがいいのかもしれないと本気で思う。

「まあ、俺たちも一緒にいたって説明すれば司もそこまでへそ曲げないだろう」

西門さんと同様にのんきな美作さんの声。

慌てて3人を引き連れて道明寺HDまで来たけれど少し早まったかもしれない。

私たちが立ち止まってる道明寺HD本社ビルエントランス中央。

大企業の玄関口。

すれ違うサラリーマンの数も半端ない。

それにエントランスにはコーヒーショップも入ってるから会社に関係ない大学風の若い子も多い。

その中に超がつく目立つ3人を引き連れてしまった。

こんなところで立ち止まったら『どうぞ見てください』と言ってるも様なものだ。

とりわけさっきからこのイケメン3人は私の気持ちを解きほぐそうと柔らかい笑顔を振りまいて愛想がいいから女性たちへの受けもいい。

自然と脚の止まった女性たちの熱い視線を一気に集めてる。

受け付けの顔なじみのおねぇさんがしっかり連絡入れましたからと手に持った内線電話の受話器をにっこりと指さした。

これで私たちが今このビルに来てることは道明寺にも伝わるはずだ。

覚悟を決める前に猛獣の檻の中に入れられた気分。

私だけじゃなくF4が終結したってことは道明寺にどんなヒントを与えるのか。

直ぐに週刊誌と結ぶ力れるのだろうか。

もう、ここは腹をくくるしかない。

「私と西門さんが何かあるなんて道明寺も考えないだろうから、笑ってしゃべっちゃおう」

そうよ!

あいつが怒ったってそれは一瞬のこと。

吹き上がるのも一瞬だけど冷めるのも早いはず。

私の相手は西門さんだし、3人の中じゃ茶道を習ってるん分だけ会うことも多いし茶室に二人っきりってこともある。

気になるんだったら道明寺も私に茶道を習わせないと思う。

「牧野、司が無謀なこと言ってきてもここは我慢だぞ」

無謀って言葉を念を押すように西門さんに言われた。

「私だだってこれ以上ことをややこしくするつもりはないから」

でもあいつがどう攻めてくるか予測が付かないから身構える。

「ここは、フォローをよろしく」

3人を眺めて今度は私が念を押した。

執務室のドアをノックした西田さんがゆっくりとドアを開ける。

中に私たち4人が入室したことを確かめて閉ざされたドア。

超重量の鉄のドアが重くガタンと絞められて中からはもう二度と開くことができないような気がした。

なんか・・・

すごく・・・

空気が重い。

それは見間違いようもなく道明寺のすわるデスク後ろから漂ってる。

バンッ!

一瞬で立ち込めるどす黒い空気を切り裂くようにデスクの上に投げ出された脚。

その足の長さに示すように踵がデスクの上から飛び出してる。

ゆっくりとその足を交差させるように左足の上に右足を道明寺が組んだ。

その空気に合わせるように空気が流れて私の足元までたどり着いた。

「なんだ、一人で来れなかったのか?」

その態度ですべて道明寺にばれてるって理解できた。

「お前らも、暇だな」

視線だけで人が殺せる。

殺伐とした独特のこの雰囲気を作ったときの道明寺はお手上げだってそんなあきらめてる空気感が3人から感じてきた。

落ち着くまで待てばよかった・・・。

「あの写真に大した意味はないってわかってるよな?」

最初に切りだしたのは西門さん。

「それにこの写真は都合のように加工されてる。

俺や類も一緒にいたから」

西門さんを後押しするように美作さんが言葉を続けた。

どんなに不機嫌な道明寺に動じないのはさすがだ。

「ごめん、優紀に聞かれた時、私もすぐに言えばよかったんだけど、すっかり忘れてたから」

ここは素直に謝った。

最初は変装していた自分に気が付かなくて誰?って思ったのは本当のことだ。

無言のままの道明寺に私たちの言葉が届いてるのか・・・

そんな不安のままに道明寺を見つめてる。

そして、道明寺の腕が動いてその手からデスクの上に広げられた数枚の紙。

それは印刷された画像。

それも加工前のくっくりと私と西門さんだとわかる写真。

そしてその写真には私の横に花沢類も美作さん映ってる。

「都合よく使われたな。

俺がいたらこんな写真撮らせねぇぞ」

脚をデスクから降ろして椅子から立ち上がった道明寺。

威圧感を纏ったままの道明寺の風格に今は何も言いかえそうもない。

「俺も、まさかこんな使われ方をするとは思わなかったからな」

出版社も雑誌が売れれば何でもするからな」

美作さんの会社って出版社も持っていたはず。

あの雑誌も美作さんとこの雑誌じゃなかった?

いつもならしっかり私たちの記事を抑えてくれるのも美作さんがやってくれる。

だから私と道明寺の婚約のこともほとんど世間には漏れ出てこない。

そうだよ。

今回なんで漏れたの?

「あきら、まさかお前・・・、わざと見逃したとかねぇよな?」

睨みを利かせたままの道明寺の視線が美作さんを釘付けにした。

拍手コメント返礼

りり 様

つくしレーダーは相変わらずの高性能。

あきらくん大丈夫でしょうか?