愛を叫べ! 3

「渋滞も想定してたのですが・・・」

軽く会釈をして頭を上げた瞬間にちらりと時計を確かめるように動いた視線。

「業務に支障を残すようなロスじゃないはずだ」

西田の前をコツコツと靴音を響かせながら通りすぎてデスクの前に立つ。

デスクの端に少し腰を預ける感じで振り返った。

予定の時刻を15分過ぎた程度のずれ。

そのくらいの時間を調整できない西田じゃなはずなのに一言、釘をさすのは忘れない。

渋滞で遅れたわけじゃないでしょうと気が付いてる顔。

ばれてんなら、取り繕う必要もない。

「今、あいつが抱えてる仕事の内容を調べられるか?」

「あまりつくし様は歓迎されないと思いますが・・・」

「表立って目立つことするつもりはねぇよ。

念のためってやつだ」

あいつの上司もつくしの立場はわかってる。

危ない仕事を回すことなんてできないはずで、まだ新米の弁護士なりたてのつくしができる仕事も限りがあるはずだ。

今日も俺が出ていくこともなかったような痴話げんか。

水をかけられたのがあいつじゃなかったら無視してる。

つーか気にも留めない出来事。

あいつを守るのは俺って感情はたとえ相手が女でも、水でも見逃したくない不愉快さを俺に植え付ける。

「承知しました」

トーンを低く抑えた西田の声。

いくばくか納得してないままのその感情を押し殺して、飲みこんだ西田が頭を下げて部屋から出ていった。

不満を除かせながらも西田は俺が納得する結果を集めてくるはずだと確信してる。

あいつも俺とつくしのことを大事に思ってくれる信頼できるべき肉親みたいなもの。

絶大な信頼感があるからバカなことでも頼める。

あいつと知り合った頃、西田はお袋の秘書で、お袋の言いなりで・・・

つくしに振りかかる災難はすべて西田が手配してやらされてて・・・

いつからだったんだろうな。

西田が俺たちの味方になってくれたの。

つくしとは二度と会わないと別れを決めた夜。

忘れるために、あいつを思いきるように仕事の没頭してたはずなのに。

再開した瞬間から感情がざわついて・・・

落ち着かなくなって・・・

俺にはあいつしかいなくて・・・

あいつが必要で・・・

本気で別れられるって思った俺がバカで・・・

あいつは最高の女で・・・

俺の中じゃダントツ一番で・・・

俺に人を愛することができるって教えてくれた最強の女。

俺には、お前しかいないから。

昔も、今も、これからの未来も。

窓の外にはすがすがしい青空が広がる。

空が赤く染まる頃には仕事を終えてあいつを迎えに行こう。

そう思っただけで顔の頬が崩れそうな自分に苦笑した。

おはようございます。

今日は司とつくしで対照させてお話を書きたかったんですよね。

ということで続きの部分からつくしサイドのお話になります。

「今日の道明寺かっこよかったな」

エレベーターの中には私一人。

緊張のほぐれた瞬間に思わず口から漏れた心の声。

誰にも聞かれてないはずなのに熱くなる頬を隠すように両手で覆った。

道明寺と出会っていろんなことがあった。

道明寺と出会て、好きになって私は本気の恋を知った。

苦しくて・・・

切なくて・・・

枕を涙で濡らした夜。

あのころの私の思いに比べたら、今何が起こってもドンと笑って受け止められそうな気がする。

でも・・・

あんな中途半端に熱を私に残す道明寺には困る。

頭の中から追い払おうとしてもあいつの残影が心より身体に張り付いてる感じでなかなか抜け出せなくて困る。

昼間からフェロモンまき散らし過ぎだよ。

事務所の階についたエレベーターの扉が開いたことに数秒遅れて気が付いて慌ててそこからフロアーに降りた。

折角任された仕事はうまくまとめることができずに収穫ゼロ。

あの依頼人から連絡が来ることは二度とないような気がする。

「今、帰りました」

明るく元気にドアを開けるには気が引けてこそ泥のような気分で中をうかがうようにこそっとドアノブを回す。

開いた扉の隙間はわずか10㎝。

「あっ、お帰りなさい」

ちょうどドアのそばにいたのか思い切りドアを開いてくれたのは甲斐さん。

そして私のデスクの前の席の玲子さんもにっこりと私を見てる。

「つくしちゃん、大変だったわね」

え?

なんで玲子さんが知ってるの?

「水かけられたんだって?」

甲斐さんは濡れてないかと心配する表情で私を眺めてきた。

道明寺が話した?

それにしては早すぎる。

私が事務所に帰ってくるまでに今日の仕事の結果を知る時間はないって思うから。

「どうして、知ってるんですか!」

動揺したままの声はいつもの倍は大きい。

玲子さんが自分のノートPCの画面を私にくるりと向けた。

画面にはいくつかの画像と文字。

私にハンカチをさす出し道明寺。

私に水をかけた女性に詰め寄る道明寺。

そして・・・

この人道明寺司だよね?

このつぶやきから始まって・・・

「悪いが、こいつが俺意外に興味を持つような愛し方はしてないから」

こんなセリフ似合うイケメンいたーーーーッ  とか。

言われたら腰砕けそうとか・・・

水かけられた女性をかばったってこと? とか。

この女性誰?とか。

結婚指輪してるよねと目ざとく見つけて左手の薬指を私と道明寺から切り取って加工してすでに載せてある。

あの時の会話が筒抜け状態で全国にネットで飛び回ってしまってる。

道明寺の魅力がすごいとか、かっこいいとかの感想から修羅場?的な勘違いもあるがほぼ道明寺に寄せる好意的なコメント。

「代表のことが話題になってないか、チエックする部署があるの。

それで問題にならないかって確認でさっき私たちのところに連絡が来たってわけなんだけど」

ちらりと私を見上げる玲子さん。

もうほぼ私を見て遊んでる。

「俺以外に興味を持つような愛し方はしないって本当に言われたの?」

一番聞かれたくないことを直球で聞いてきた。

「さぁ・・・どうだったかな・・・」

ここはとぼけるしかない。

とぼけよう。

誤魔化そう。

何もしゃべらない。

「代表なら、言いそうだもんなぁ」

両肘をついてその上に顔を乗せて物思いにふける表情を玲子さんが見せる。

想像しなくっていいいですから!

「これって、削除できないですよね・・・」

「無理」

甲斐さんと玲子さんの声がそろって速攻で返事が返ってきた。

雑誌やテレビにも取り上げられてる道明寺は売れてる芸能人と同等の知名度がある。

それに婚約、結婚の発表をしてからの私の写真も道明寺が解禁してくれちゃってるからそれなりの使われ方をしてる。

今更写真の一枚や二枚が追加されたからと言って大した問題じゃない。

それにSNSに書かれてることは名誉棄損になりそうなことは今のところ確認できない。

逆に道明寺の好感度は良好すぎるくらいが上昇してる。

私の羞恥心を覗けば問題はない状況。

もう・・・・

どれだけの人がこのつぶやきを読んでるのだろう。

いいねのクリック数は見てる途中からも増え続けてる。

このままだと人気上昇中の記事のトップに来るのは避けられないんじゃないんだろうかと思わせる勢いだ。

しばらく外歩けないかも・・・・

道明寺!

どうしてくれるのよッ!

拍手コメント返礼

アーティーチョーク 様

最近のSNSの影響はすごいですよね。

恐るべしネット社会。

さてこの騒ぎがここで終わるのか!

終わるわけないですよね。

依頼者さんどうなるんでしょう。

親方 様

限定記事楽しんでもらってるでしょうか?

これからも楽しくお付き合いよろしくお願いします。