エロースは蜜月に溺れる 1
つくしちゃん最大の危機!
さてつくしちゃんを競り落とすのは誰?
スケベなおっさん?
花沢類?
西門総二郎?
美作あきら?
そこはやっぱり司で~
司が競り落としてくれたらお話は程よい長さで終わりそうですが、後はどれをとっても長くなりそうな気配がしてるんです。
10話程度のおはなしならうまく6周年に合わせてエピローグに行けると思ってたのですが、どうなることか・・・(;^ω^)
裏を書いて滋とか椿さんとか楓さんとかもありかも。
ゆるゆると進む列は物悲しさとはまた別な熱気を生む。
どれだけ自分を高く売るか。
そんな媚びを秘めて壇上に立つ女性も少なくない。
セリが進むにつれ会場に飛び交う金貨の数が増えその熱気が何ともなくいたまれない感情をつくしの胸に植え付けてくる。
自分の運命は受け入れたはずなのに人生をあきらめたわけではない。
何とか生き延びていればいつかは家族と再会できるとつくしは信じていた。
それでもずるずると進む列に後何人過ぎれば自分の番なのか、一歩足が進むたびにその幅は心なしか小さくなる気がした。
舞台裏を覗けば少し離れた場所に10歳に満たない小さな子供達が膝を寄せ合いすすり泣く声がつくしにも聞こえてくる。
自分が初めて売られた時の記憶に重なった。
同じように幾人かの同じ年頃の子供たちと膝を寄せあった記憶。
泣きたくなるのをじっとこらえた震えたあのころ。
今もその心細さは変わらないとつくしは思う。
燃える屋敷から乳母に手を引かれながら逃げ出したはずなのに握りしめていた腕は自分より小さな弟の進のもので、気がつけば知らない大人に連れられて押し込められた天幕。
売られると気がついたときには弟とも離れ離れで、今は探すすべもないままに4年の月日が流れた。
今、進はどこにいるのだろ。
「おねぇちゃん」進の泣いてる顔だけが別れ際の記憶となり今も胸を締め付け。る
売られた先の下働。
仕事を覚える事が生き残るための手段で家族に会えるとだけを願う日々。
この国で生きてさえいればいつかは会える。
そう思いながら今日までつくしは生きたのだ。
従順に自分の立場を受け入れられたつくしは何不自由なく育ったお嬢様育ちの割には強い精神の持ち主なのだろう。
何事にもめげない立ち向かう芯の強さを秘めた瞳の輝きは今の状況でも消えることがなくまっすぐと前を見つめてる。
「さっさと行け」
突然強く背中を押されて前に倒れるように舞台中央に一人立たされた。
小さな子供に気を取られてる間に自分の番が来たらしい。
「見た目はまだ幼さも残るが色気で男を迷わす女だ。
初心な見た目で判断するともったいない買い物だ。
閨の中でどう変化するか楽しむのも一驚」
口からだらしなく飛び散るつばを気にすることなく男は少しでも値をつりあげようと叫ぶ。
壇上での口上の意味を今一つ理解できなくても、卑猥さがにじむ男のニヤついた顔と怪しさを秘めた視線は遠慮なくつくしの身体にまとわりついてくる。
襲われたのは私なのに。
何事もなかったのは奇跡としか言いようがない。
口惜しい感情はここでどうあがいても笑いの象徴でしかない。
金貨10枚、20枚と徐々に跳ね上がる値段。
普通20枚も出せばすんなりと競り落とされる。
30枚を告げた男の脂ぎった顔は体中を嘗め尽くされるような恐怖感を覚えて思わずつくしは身体が震えた。
「金貨500枚」
突然突拍子もなく跳ね上がった金額のその声に、その場がシーンと静まった。
それほどの金貨を出せばこの場ばすべてが買いつくされる値段だ。
人ごみの中心から離れた後ろの位置でまっすぐにたたずむ人影。
何やら横のいる男と言葉少なに会話をかわす長身。
頭からかぶるマントで姿を隠すその姿はまだ若い印象を残す。
隣にいる男が恭しい態度を見せるのはその長身の人物が主なのだろう。
会場の視線を集めた先でその長身の男性から壇上まで一片の道がつながるように人垣は左右に分かれる。
つくしの隣の売り手の男は予想外の高値に度肝を抜かれたように呆然としたままだ。
金貨の袋を持った召使の男が壇上の上に重そうにその袋を置いたところで思いだしたように男が愛想笑いを浮かべた。
「もらっていくぞ」
つくしを壇上から下ろすように伸ばした両手はつくしの前に広げられた。
召使の男も幼さの残る若い少年のようだ。
つくしが執拗に感じた視線。
その先に捉えたのは自分を競り落とそうとしていた脂ぎった男。
競り落とせなかった不満そのままにものほしそうな視線をいまだにつくしに向けている。
その視線から逃れるようにつくしは目の前の腕をとった。
その場から少しでも早く離れたいと思うつくしの気持ちを察してるように召使の男はつくしは庇うようにあたりからの視線を遮るように身体で隠して歩いてくれる。
その気遣いがつくしを安心させていた。
あの男より断然いい主に違いない。
そう思える。
でも・・・
私を金貨500枚で買う意味がわからない。
そう考えると不安がまた胸の奥で生まれてくる。
自分を競り落とした男性の正面に連れてこられたつくしは慌てて頭を下げた。
「名前は?」
その声は低く装って入るが男性としては少し高い気もする。
ゆっくりと頭を上げて絡まった視線。
黒曜石に輝く大きな瞳。
瞳を縁取る長い睫毛。
瞳以外は布で覆った顔。
それでもその姿は飛びぬけ美丈夫だと印象付ける。
その瞳の主をつくしは知っている。
確かにそう思った。
以前のつくしなら貴族や金持ちと知り合っていても何の不思議もない。
どこで会ったのかな?
遠い記憶を紐解くようにつくしは頭を巡らす。
「一生お前は俺が守る」
幼い自分に告げた少年・・・
夢に見たばかりの記憶。
その記憶が本当なのか夢なのかあやふやなまま確信が持てない記憶。
「あっ!」
思わず声を上げそうになった口元をつくしは慌てて手のひらでふさいだ。
拍手コメント返礼
ゆみん様
スケベなおっさんと超スケベな坊ちゃん。
どちらがいいのかしら?(笑)
チェリー 様
ハーレクインばりな単純明快さでお話を組み立てながらヒーローな司の活躍を織り交ぜて
乙女チックなつくしちゃんが出来上がったら面白くなるかなとか考えいます。
短期集中連載ですがお付き合いよろしくお願いします。