エロースは蜜月に溺れる 3
司王子登場。
落札したのは椿王女だったんですね。
瞳が似てるといえばさすがは姉弟ということで~
でも殺伐とした鋭い瞳の司君と穏やかな椿さんの瞳じゃ違いはあるような気もしますが・・・(;^ω^)
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「まずはその血なまぐさい匂いをどうにかしなさい」
何をしたのかと問いかけるつくしをただ黙ってみていた司の瞳が見せたわずかな陰り。
あのセリの場所に司も一緒に行ったのは間違いだったと椿は思う。
あの事件からすぐに行方が分からなくなった牧野家。
王族の力を使ってても容易に見つかられなかったことを考えれば国の重要な人物が動いてることも考えられた。
次期国王となる司の周辺で暗躍する謀略は確実に数年前から始まっていた。
牧野家の長女つくしとの婚約話。
出世や権力に興味のない牧野家の当主は王家には害のない相手で順調に話が進む予定だった。
18となった司の周りでは数名の妃候補の親族たちがまた何やら騒ぎだしている。
もちろん司としては言いなりに妃を選ぶつもりは毛頭ない。
あれからどれだけ牧野つくしを探していたのか、その弟の必死さをそばで見ていた椿は胸の締め付けられる思いで、今日のセリ市まで足を運んだのだった。
なるべく目立たないように後方で競りの成り行きを見ていた二人。
壇上に上がったつくしには幼いころの面影が残っていた。
どれだけの苦難があったのかは容易に推測できる。
人間の競り市なんてやめさせるべきだ。
つくしが連れさられて差がしてるうちに知った自分の国の負の部分。
それは直ぐには変えられないほど根深い現実。
粗末な布はわずかに柔肌を隠す。
16さいにしては幼い顔だちと成熟にはまだほど遠い身体の線。
大きく見開いた黒色の瞳はまっすぐに見つめ輝きをなくさない強さを秘める。
卑屈にならない精神力の強さとは別に競り落とされた直後の女子を見送る瞳に残る憂いの表情。
それは次に競り落とされる自分のことを思ってのものなのだろうか。
それを推し量るとやりきれない思いが司をとらえた。
「見た目はまだ幼さも残るが色気で男を迷わす女だ。
初心な見た目で判断するともったいない買い物だ。
閨の中でどう変化するか楽しむのも一驚」
つくしの身体を前に押し出して男が叫ぶ口上。
聞くに堪えない内容にわなわなと震える身体を抑えることができない。
むやみにつくしの肌に触れた男。
そして涎を流してつくしを食い入る男たち。
卑猥な熱を発せさせるこの場所に一秒もつくしを置いておきたくない感情。
どれもこれもこの場からすべてをやきはらって無にしたい感情が身体を支配していく。
どれだけの大金をはたいてもつくしを競り落とすことは可能な金貨を用意してる。
その金貨をすべて今ここにばらまきたい感情。
そしてすぐにでも壇上からつくしを連れ去りたかった。
「司、もう少し我慢して」
司を押しとどめたのはほかでもない姉の椿だった。
夢のなかで何度も助けを求めるつくしに幾度となく胸がつぶれそうになった。
それは年月が経過するたびに鮮明になり司を苦しめた。
自分が手の届かないところでつくしの身体を嘗め尽くして苦痛を与えた男たちがどれだけいるのか、
それを想像すると身が切られるよりも鋭い痛みが自分の心臓に突き刺さる。
ずっとつくしを忘れることはできなかった。
昔以上につくしを愛してると司は思う。
それと同時につくしに触れたものすべてが憎くて許せないどろどろとした増悪のマグマが流れ出して止められない。
「司、どこに行くの?」
「後はねぇちゃんに任せた」
その声はあたりを一瞬で固めて動けなくなる冷気を発してる。
この時椿は司がつくしのセリを見るに見れなくなってその場を離れたのだろうと思いこんでいた。
血の匂いをさせて戻ってきた司の姿に自分の想像以上に司が傷ついてるのだと悟った。
つくしが以前つかえていた屋敷までは馬で数時間の距離。
それを往復して帰ってきたとしたら司がいなかった時間の意味の説明が付く。
「あの子たちは何をしてたの」
司にはお目付け役として同じ年の花沢類、西門総二郎、美作あきらがいつでも一緒にいる。
だから今回も椿はそこまで心配はしてなかったのだ。
「ああ、なった司は俺たちでも止められませんよ」
そのことで攻められたらたまらないとでも言いたげな総二郎。
「悪の化身って感じで司に触れることもできなかった」
胸で十字を切る仕草をあきらは見せる。
「以前の主人の息子は放蕩もので村の評判も悪かったからな・・・」」
それは自業自得だと類は言葉を結んだ。
4人がちょうど村についたときに目の若い女を脇道の草むらに押し倒してる若い男がいた。
若様と叫ぶ女の声でその男がつくしを無理やりに犯した男だと一瞬で司は理解した。
一瞬で吹き出したマグマはすべてのものを破壊つくさなければ止まらないようなエネルギーを見せる。
たとえあの場所に椿がいても司を止めることはできなかったろうと3人は思う。
「ごめん、遅くなって、もう心配いらないから」、」
まだ震えたまま固まってるつくしの顔を覗き込む花沢類。
澄んだ瞳の奥の輝きに照れるようにつくしは頬が熱くなるのを感じた。
「感情が落ち着けば牧野の知ってる司に戻るって思う」
口々に慰めるようにいたわるようなやさしい言葉でつくしを覗き込む3人につくしを卑下する感情も憐れむ感情も見当たらない。
懐かしい親しみの覚える雰囲気がつくしの気持ちを軽くしていた。
「これでいいか」
洗いざらし髪はくせ毛をストレートに変えてぽたぽたとしずくを床に落とす。
慌てて風呂から出てきたような司を見てつくしの心が穏やかに変わる。
袖からはみ出さした手の関節は赤くなったまま。
その関節をさするように司の手が動くのが見えた。
「怪我してるの?」
「殴りすぎて、手を痛めただけだ」
つくしの声に少しムッとしたような司の声が響く。
「あの、薬草ありますか?」
司の不機嫌さは無視するようにつくしは司の腕を診て治療を始めた。
下働きをしてる間に身につけた薬草の知識は軽いけが程度なら自分で治せる。
つくしに手を取られてる司は抗うこともなくおとなしくなっていた。
「痛めつけた相手は血を流してたけどな」
「あれだけ殴ったら司でも手を痛めるんだな」
おとなしくなった司を珍しいものでも見るような3人のからかうような声。
ジロリと鋭く3人に向けた視線をすぐに司は自分の手にゆっくりと慎重に包帯を巻くつくしの指先を見つめる。
夢にまでみたつくしの顔。
少し大人になったつくしの声。
手の中にすっぽりといった小さな手のひらは今、器用に司の傷を包帯で覆う。
触れた指先から感じる熱はつくしを取り戻したうれしさを胸の奥ジンとした感情を司は感じていた。
「お前の仇はとってやった。
礼はいらないから」
満足そうにつぶやく司に手を治療していたつくしの手が止まる。
「だれも、そんなこと頼んでません」
ムッと膨れた顔が強気で司をするどく睨む。
「変わってねぇな」
俺にたてついて媚びを売らないのは後にも先にもこいつだけ。
目の前のこいつは全然変わってなくて、それがうれしくてふつふつと甘い感情が胸にあふれてくる。
その感情を全部押し付けるように司はつくしを抱きしめてしまってた。
拍手コメント返礼
virgo 様
今回はいろんなシュツが混ざりあっていつもとは違う花男仕様になっています。
俺様な司がいつもよりかっこよくストーリーが展開できるといいんですけどね。
楽しんでもらえてるようでうれしいです♪