エロースは蜜月に溺れる 7

ただいま坊ちゃんの俺様度は大変貧弱になっています。

苦悩する司もまた良いって思えるんですよね。

でもいつもと違う文章で書くのに最近疲れてきてます。

一人称で書く方が私には合ってるのかな・・・。(;^ω^)

心ここにあらず。

そんな表情を月が照らす。

華々しくにぎやかな宮廷の庭には色とりどりの花が咲き乱れ芳しい香りに包まれている。

定期的に開かれる舞踏会はいわば若い貴族と令嬢の縁を結ぶ大切な場。

当然のことながら舞踏会のために仕立てられた特別なドレスを身にまとった淑女たち。

色とりどりのレースとリボンと宝石が煌びやかに光を反射する。

娘を溺愛する父親たちが良縁を求めて用意させたものであることは疑いようがない。

「一番の主役が暇そうにしてるな」

くそ面白くもない。

そんな感情も隠そうともしない司に総二郎とあきらは互いに顔を見合わせて口元に白い歯をのぞかせた。

「お目当ての牧野がいないんじゃしょうがないよ」

類の言葉にちらりと視線を動かす反応を司が見せた。

まだつくしをここに連れてくるのは早い。

すべてが明るみになったあとでなければ敵はまたどんな手を使ってつくしを貶めるとも限らない。

少しずつ敵を追い詰めてるはずなのに確実に追い込む証拠が見つからない。

それは司のいらだちを確実に増やしてる。

「昨日の夜、会いに行ったんだろ?」

「それに宮廷に帰って朝方だって聞いたぞ」

司を中心に取り囲む美男子。

煌びやかな光を守った一角はどこよりも鮮やかですべての視線を集める。

穏やかな微笑を浮かべて談笑する姿は一枚の絵画のように見えて見るものはその艶やかさにため息を漏らす。

「4人がお揃いになるの久しぶりですわよね」

どうすれば四人に近づけるのかそんな考えを思い浮かべながら羨望のまなざしの数は波状の広がりを見せる。

そんな周りの雰囲気には全く関知しない様子でただ司とつくしのことが気になってしょうがない3人だった。

「なんも、ねぇよ」

「なんもないって?」

不機嫌な声の司に3人は顔を見合わせる。

「あいつ、寝てたからな」

「寝てたら起こせばいいだろう!」

ゆっくりとシーツの中に身体を滑らせてしっかりと抱きしめて首筋にキスの一つでも落とせば大抵の女はほほ笑む。

この国で司の行動に文句を言うやつは一人もいないのだからなおさらだ。

つくしのために情報を集めて助けるために行動をうつした司は特に素早かった。

そのあとのこのカメのようなのろさは総二郎やあきらには間抜けに見えてしょうがない。

好きな女を目の前にして寝顔を見てさよならなんてできるか?

起きるのを朝までベッドの中で待つって手もある。

もう少し司にレクチャーする必要があったかと総二郎とあきらは本気で後悔した。

「司の場合は純愛だからね」

類はそう言って付け足すようにクスリと笑った。

「今までのあいつのことを思うと、俺の感情を押しつけるだけじゃあいつを傷つけてしまうだろうが」

すぐにでも抱きしめたい思いと、今まで何人の男たちがつくしを好きに扱っていたのかと想像すると自分でもどうにもできない

どす黒い感情が渦巻いてつくしに触れようとする自分を拒む。

素直に手を差し出せないのは愛情があればあれほど嫉妬の炎が大きく激しさを増してくる。

あいつを自分のものにすればそれはすべて収まるのか今の司には自信がなかった。

「司、お前牧野を幸せにするって言ってたよな?」

「ああ」

その気持ちは昔から衰えることはない。

つくしを探し出して数年ぶりに会った今ではその思いはもっと強くなってる。

「そう言ってる割には自信がないんだな?」

「なんだと?」

「牧野が心を開くのを待ってるなんて悠長なこと言ってる場合か?」

言葉が言い終わらないうちに床の上に総二郎が転がった。

一瞬にして空気が重く変わる。

かすかに聞こえた悲鳴も遠慮がちに消えて空間からすべての音を奪った。

「司!」

もう一度殴りかかりそうな司をあきらは背中から羽交い絞めにして止める。

「牧野が今までのことを思いだせなくなるくらい愛して守ってしっけり受け止めてやればいいだけのことだろう。

何グダグダ考えてる必要なんてないだろう。

お前らしくないって言ってんだろうがッ」

切れた唇からかすかに感じる血の味。

わずかに滲む血を総二郎が確かめるように親指でぬぐい取る。

「今の状況じゃ、司は牧野を助けて姉貴に任せてあとはほっといてるだけだって牧野に思われてるんじゃないの?

何を怖がってるの?」

「お前にわかってもらう必要はねぇよ」

類の言葉が重く司の心に突き刺さる。

自分でもまとまらない感情。

つくしを不幸な哀れな世界にひと時でも落としたのは自分のミスで守れなかった後悔。

すべては自分がつくしを妃に選んだことから始まってる。

あいつの責任じゃないのはわかってるのに、頭の中では競りに間に見せた男たちのつくしの身体を舐め尽くすような卑猥な欲望と、娼婦のような口上が司の頭から離れない。

自分の知ないつくしを知ってる男たちをこの世からすべて消し去りたい思いは今も消えずにいる。

「司のやりたいようにやった方がいいんじゃないか?

ここは司らしくさ。」

総二郎を助け起こしたながらあきらがつぶやく。

状況が収まった様子に何事となかったようにバイオリンの音色が聞こえてそれを合図にいくつもの楽器の音色が曲を奏でだした。

「こんなとこにいても時間が無駄なだけだろう?」

よろけそうな身体を必死でさせながら総二郎はもう一度自分の口元の傷を指先で確かめた。

一発しか殴ってねえねだろう。

おおげさに芝居がかって痛がる総二郎に司は眉を寄せる。

「少しでも牧野と一緒にいて、今までの時間を取り戻すことが先なんじゃないかな?」

類にそう言われると今までつくしのそばに近づかなかったことが無駄な時間に思えてきた。

今までの俺はこいつらのいうように俺らしくない。

何を怖がっていたのか・・・。

確かにらしくねぇ。

俺はあいつを愛し続ける自信は限りなくある。

たとえ何があろうともそれは変わらない。

「しばらく、ここには戻らねぇから、あとは任せた」

歩く司の前に人が別れて道を作る。

その中を一気に司は駈け出していった。

「王子が御成りです」

離宮に告げる司の訪問の声は突然すぎる王子の訪問にざわつき隠せずにいた。

眉をひそめた椿がそばにいたつくしのそっと視線を落とす。

司が昨晩の夜遅くにつくしに会いに来たことは椿の耳にも届いていた。

今朝のつくしの様子では司が来たことに気が付いておらず、そのことがおかしくもあった椿である。

「今日は、舞踏会ではなかったの?」

「こいつを連れていけない舞踏会は無意味だから逃げてきた」

椿の優雅な微笑みにわざと悪ぶる司の声。

こいつとつくしに視線を落とす司の瞳は言葉とは対照的に和らいだ感情を見せる。

「よくお母様は許したわね」

宮廷で開かれる舞踏会は司の妃を選ぶ場でもある。

一度は牧野家の令嬢を婚約者と決めた話も牧野家が衰退した今では白紙の状態になった。

数年経ったいま年頃になった司に結婚が現実味を帯びてきてる。

司の妃選びは国中の関心ごとの一つと言ってもいい。

つくしを助けでしても解決しなければいけないことは容易ではない。

つくしと結婚すると司が言いだしても母親の楓が不愉快な表情を浮かべてることは容易に想像できた。

「さぁ、どうかな。気にしてねぇし」

司もなんの準備もしないままに楓につくしを見せることはさすがにないだろうと椿も思っている。

だが、司を追って楓がこの離宮を訪れるかもしれない。

そんな危険があることを気が付いてないような司ののんきな声に椿はため息をついた。

「姉貴のとこならお袋もなんも言わねぇだろう」

単に逃げ出してきたわけじゃないと自信ありげに司が微笑む。

宮廷を出るときうまく取りつくようにと頼んだのは補佐役の西田。

西田ならうまく言い訳を考えてくれるはずだと確信してる。

「お前に会いに来た」

司を見つめるつくしはここに連れて来たときよりも頬をバラ色に染めて健康的に輝いている。

意思の強さを秘めた強い輝きを放つ大きな瞳は瞬きをすることを忘れたように司を見ていた。

形の良い鼻筋と吸い付きたくなるような柔らかな唇。

そのすべては司を魅了してやまない。

自分に甘えて微笑むつくしが見たい。

それは初めて司が覚える激しい願望。

「いらっしゃいませ」

ドレスの裾を軽く持ってお辞儀を返すつくしはよそよそしく見えて司を落胆させた。

「丁寧なお辞儀ができるようになったんだ」

「このくらい覚えてます」

鼻で笑うような司の表情にムッとしたつくしがを膨らます。

「俺に刃向うお前のほうが俺は好きだ」

司の声にドレスの裾を持ったままのつくし指先がわなわなと震える。

司の好きだという言葉につくしは大きく動揺を隠せなくなっていた。

拍手コメント返礼

やなぎ 様

え?やっぱり!

そんな気がします?

いつもより1話を長くして書く努力はしてるんですけどね。(;^ω^)