エロースは蜜月に溺れる 8

ついに司、野獣に目覚める。

研ぎ澄ませた感性と熱いまっすぐな愛情で挑めばきっと大丈夫!!!

たぶん・・・(;^ω^)

それにここのつくしちゃん最初から司君を愛してる設定ですからね。

まだ本人がそれに気が付いてないという感じですけどね。

このくらいの意地悪はいいですよね?

しつらえたドレスはびったりとつくしの全身を覆う。

今日は朝から幾度となくドレスを着替えさせられては椿の前に立ち靴や宝石を合せては鏡の前に立つ動作をどのくらい繰り返したろう。

それでもまだ一度も袖を通してないドレスは衣裳部屋に入りきれないほどだ。

明日もこれの繰り返しなら洗濯や掃除でこき使われたほうが楽だとつくしは思う。

白く光沢の放つシルクのドレス。

大きくデコルテされた胸元。

ドレスの下で背中のラインに合わせた交差する組みひもが窮屈に腰を締め付けてつくしを疲れさせる。

もう脱いで楽な服に着替えたい。

その限界が近づいたときに突然現れた司に女性たちの華やいだ声は一瞬で静かになった。

落ち着いた表情を見せるのは椿一人。

ドレスの着せ替えはこれで終わると胸を撫でおろしたつくし以外は緊張を漂わせていた。

そして、お前に会いに来たと言った司が現れた後で、何も言われる間もなく部屋にいた召使は一人、二人と消えていき、椿までいつの間にかいなくなっている。

目の前のソファーに深く腰を掛けて足を組み広げた両手を背もたれにゆったりと広げた司はまるで鷲が巣でくつろぐ余裕を見せてつくしを眺める。

初めて見るつくしのドレス姿は愛らしさと可憐さをにじませて司の目をくぎ付けにした。

この姿のつくしを目にしたらどれだけの男が夢中になるのだろう。

今日の舞踏会につくしを連れていかなかったのは正解だった。

そんな嫉妬の思いも少なからず今の司を刺激している。

「おい」

「なんですか?」

部屋に二人っきりになった気まずさからなかなか直視できなかった自分を奮い立たせるようにつくしは大きく声を発した。

そこにはまなざし一つで女性を黙らせて魅了してしまうことができる艶やかな司がじっと自分を見ている。

無造作すぎる癖のある髪は弓なりの美しい眉をわずかに隠す。

ほりの深い鼻梁。

そして、皮肉気に上げた口角が人の悪い表情を浮かべてるにもかかわらず誘惑的だ。

つくしが少し声を荒げたことを後悔したのはそんな司の魅力に惑わされたものだとはまだ気が付いていない。

「そんなに、離れる必要があるか?

俺はお前に会いに来たんだぞ」

司とつくしとの距離を詰めるにはまだ数歩は歩く必要がある。

不満そうにつぶやいた口元は直ぐに崩れて笑みを浮かべる。

「俺が動くのと、お前から俺のそばに来るのどっちがいい?」

どっちらをとってもつくしが司の前から逃げるという選択はない。

どちにしても司に都合のいい選択に不満を思ってもいいはずなのにどちらを選ぶべきかをつくしは必死で考えた。

「早くしろ」

催促するようにソファーから立ち上がる動作を見せる司に慌ててつくしはソファーに駆け寄る。

そして司の右側えと腰を下ろした。

「会いに来るんだったらもっと早く来てもいいと思いますけど?」

「そんなに俺に会いたかったか?」

「違う!こんな夜じゃなくて昼間に来ればいいってこと!」

司の傲慢な態度はつくしの丁寧な言葉づかいを一気に遠慮ない言葉使いに変えてしまった。

「お前はそのほうがいい」

屈託のない笑顔をつくしに向けたつくしの頭を乱暴に撫でる。

それは結わえられて整えた髪の毛をわざと乱してほつれさせるように乱暴に何度となくつくしの頭を揺らした。

「もう、いい加減にして!

昔も私のリボンを解いて逃げたことあったでしょう」

「お前が俺を必死で追いかけてくるのが楽しかったんだからしょうがねぇだろう・・・。

って、お前思いだしたのか?」

笑っていた司の表情が真顔に変わる。

司に会うたびにおぼろげな記憶は鮮明に浮かび上がる。

まだ一つ一つが結びついてない危うさはあるが確かに幼いころのつくしと司が少しずつ結びついてくる。

「俺は、お前の命の恩人でもあるんだから感謝しろ」

「恩人?」

「俺がいじめたことは思いだしてるのに俺が助けたことは忘れたままか?」

不満そうに舌打ちをして見せた司はますます愉し気な笑みを浮かべてる。

「木から落ちたお前を俺が受け止めて助けたんだぞ」

木の上から降りれなくなった子猫。

その子猫を助けようと上ったのは木登りには自信があったから。

子守の女性が顔を真っ青にして止めるのを無視して上った大きな木。

自分の身長の何倍の高さの木の上で子猫を抱いたままでは降りれないと気が付いて泣きそうになった。

「おい大丈夫か?」

心配そうに見上げたその黒曜石の瞳は色あせることなくつくしの目の前で今同じ輝きを放つ。

「あの時は、急に司が声をかけるからびっくりして足を滑らせただけでしょう」

「俺が受け止めたからお前が助かったんだろう。

あの時の傷まだ残ってるぞ」

つくしの目の前に前髪をかき分けて額をつきつける。

「どこよ」

かすかに残る2センチほどの傷。

顔が触れ合うほど近づかななければその傷に気が付くものはほとんどいないと思うような痕。

「俺に傷をつけて罰を与えられなかったのはお前だけだからな」

お恩着せがましいその声は傷あとに触れるつくしの指先をそっと包みこむ。

ドクンと波打つ心臓が、慣れないコルセットのせいでますますつくしの呼吸を乱した。

つくしの指先を離れた司の額はそのままコツンとつくしの額に触れた。

少しずれた角度は頬に鼻先の冷たさを感じる。

肌に触れる息は熱くて、その熱が肌の冷たさをなくしていくようだ。

きゅぅと握られたままの指先から伝わる温もりが心地よくてしかたない。

「触れても大丈夫か?」

触れられても不快にならないのは司だからだとつくしは思う。

今も手を握られて、必要以上に身体も近くて、これ以上触れる場所がどこにあるのだろうとつくしは可笑しく思う。

それでも、こくりとうなずきをつくしは見せた。

「じっとしろ」

つくしの顎を司の指が待ちあげて角度を変えた。

フッと笑みを零すその顔は悔しいほどに見惚れてしまいそうなくらい美しい。

心臓が忙しく音を立てると心の動揺も広がってつくしは司に言われなくても動けそうもない。

「・・・・んっ・・・」

司の顔が近づいてぼやけて見えなくなった瞬間にいきなり唇を塞がれてしまっていた。

あまりの突然の出来事に目を見開くつくしと司の視線が絡まる。

そして鼻腔をくすぐる官能的で濃厚な甘い香り。

初めてのキスでつくしは何が起こったかわからず頭の中が真っ白になっていく。

「ふ・・・っ」

わずかに動く唇の合間から必死で呼吸をするための息を継ぐ。

それが刺激となって司の唇はつくしの唇を強く塞いでいく。

突然のキスのありえない状況に気が付きつくしは逃れようとするが、逃がさないとでもいうようにつくしの柔らかい唇を割って、司の舌先が押し込まれていった。

拍手コメント返礼

Jacqueline 様

拍手コメの書きこみお初じゃないですか?

一番ノリ~ありがとうございます。

パンダ猫様

王子様だから偉そうなのか?司だから偉そうなのか?

どちらにしても司の俺様は許せるんですよね。

なぜでしょう?

憎めないかわいい司とつくしちゃんが幸せになれるように続き頑張ってしあげますね。