エロースは蜜月に溺れる20 (完)
無事になんとかお話はを終わらせることができました。
話をぶっとばしすぎたような気もしますがそこお許しを。
お約束の司君の貫成就物語は次回おまけでお届けします。
夢のような気がする。
ここ数日の自分の身の変化に、つくしは眠って目が覚めたら夢だったといわれても納得するような気がする。
初めての華々しい舞踏会。
好奇心と蔑みの視線は司や花沢類や西門総二郎、美作あきらのつくしに対する紳士的な対応でため息混じりの羨望へと変わっていた。
肉体より精神的に疲れはてたつくしはそのまま部屋に戻って召使にドレスを脱がせられたことまでは覚えてる。
日の光の差し込むベッドの中でドスッとベッドに誰かが倒れこむ乱暴な起こし方につくしは慌てて身体を起こした。
なななにッ!
ぐらりと胸元で揺れた黒髪がそのままつくしの胸元を滑り落ちて膝の上に落ちる。
「眠い・・・」
うつろな声でつぶやいた声はそのまま顔をつくしの膝の上に押し付けて、そして顔を横に向けた。
くすぐったその動きから逃れるように膝をもぞっと動かすようにベッドのついていた手のひらを司の手のひらが抑える。
「動くな、もう少しこのままでいろ」
ベッドの上に投げ出された下肢がすらりと伸びて、それはつくしの力では動きそうもない。
昨日は・・・来なかったんだ・・・
宮殿に連れてこられた日から司の部屋で、司のベッドで眠っている。
昨日も迷うことなく召使たちに連れてこられたのは司の部屋。
それが当たり前なんだと思うと気恥ずかしい感じもする。
何してたのよ。
司に握られてないもう片方の指先はそっと司の前髪をかき分ける。
指先に巻き付いてくるくせ毛がくすぐったいような、甘酸っぱい感覚まで指先に巻き付けてくるようだ。
朝方まで何をしてたんだろう・・・
疲れ切った表情の司が規則的な寝息を立て始める。
すやすやと眠る司は子供みたいに安心しきって甘えられてるような気分がそう嫌いじゃないとつくしはクスッと口元をほころばせた。
「お前の・・・両親に会わせる・・・
弟も元気だ・・・」
寝言のようにつぶやく声。
揺り起こしてもっと話を聞きたい衝動はギュッとにぎられた司の手のひらの中で抑え込まれてしまってる。
舞踏会の途中でも安全だと確信できたらすぐ会わせるからと何度となく約束してくれた。
きっともうすぐその約束が守られる。
それまではまだ司の寝顔を見つめていたい思いがつくしの胸の奥にあふれたいた。
とに!もう!
両親との感動の対面は数時間で終わった。
一緒に屋敷に帰れるものと思っていたつくしは一人宮廷に残されたままだ。
「お前、俺より親のほうが大事なのか!」
涙でつくしと抱き合う両親。
胸元で「おねぇちゃん」と頬づりする進をギュッと抱きしめていたつくしが気に食わないというように、司は進の首を子猫をつかむ動作ではぎ取って引き離す。
久しぶりにあったんだと不満を漏らすつくしに俺も久しぶりにお前と過ごしてんだろうがと返す司。
久しぶりといわれてもつくしの家族を宮殿に連れてくる間の2時間程度二人は離れていただけだ。
膝がしびれてしばらくは経てないほど人の頭を枕にしていたの誰よ!
そんな小言も司にとってはなんともないのだろう。
退室を願い出る両親について帰ろうとしたところでジロリと今日最高に司の眉が吊り上がった。
「お前はこのまま、ここで住むに決まってるだろうが!
お妃教育も残ってるしな」
「よろしくお願いします」
と、興奮気味に頭を下げる両親が私を連れて帰る気は毛頭ない素振りで頑張れといい残してつくしは置き去りにされた。
「結婚式は1週間後だからな」
政務で忙しい合間をぬって現れた司に紅茶を入れようとしたつくしの手が止まる。
命令口調で言われてもハイとつくしは素直に返事をする気になれない。
「誰が結婚するのよ!」
まだプロポーズもされてないし両親が帰って数時間後の司の言葉に呆れるしかない。
「俺と、お前に決まってるだろうが!」
「責任をとるって言ってるんだろう」
機嫌のいい声で司がそっとつくしに歩み寄る。
「責任て、なんの責任よ」
気を取り直してティーカップに紅茶を注ぐつくしの腕がビクリととまった。
「お前と一緒に夜を過ごした責任に決まってるだろう」
「夜って・・・ッ」
ぎくりとしたまま振り返ったつくしの頬に司の唇が触れて慌てさせる。
もう少しでティーポットの注ぎ口がカップから外れてしまうところだった。
『夜っていってもまだ最後までいって・・・ングッ」
「バカ、それ以上、しゃべるな!」
「いいか、もう俺とお前はそういう関係だって女官たちにもお袋にも思われてるんだからな」
抑え込んだつくしの唇から生暖かい吐息が漏れて司の指先に触れる。
「今日の夜は最後までいってやる」
つくしの肩から腕を回して近づいてくる司の端正な美貌の甘いまなざし。
この密着にまだ慣れずにつくしの身体が落ち着きをなくす。
「また・・・ダメだとかあるかもよ」
初めて肌を重ねた夜。
あれはあれで十分に刺激的であれ以上のものがどういうものなのか考えてもわかるはずもないのに・・・
司に触れられるとつくしの身体に緊張とキュンとした疼きに似た感覚が芽生える。
それを隠しながらつくしはかすれる声でつぶやいた。
「今度はしっかり総二郎とあきらに聞いたから失敗しねぇよ」
「聞いたって!あの二人にしゃべったの!」
一気に羞恥心がつくしのつま先から頭頂部にかけぬけた。
「だから、今度は心配いらない」
心配なんてしてない。
そんなことを人にしゃべる司の羞恥心のなさのほうが心配だとつくしは思う。
顔をそらしながら声を荒げるつくしを司はうれしそうに眺めてる。
「牧野・・・」
唇が触れ合いそうな距離で艶を帯びた表情でつくしの名を呼んだ。
「なっ・・・」
つくしが動揺するとわかっていて見つめてくる司の意地悪だとわかってるのに鼓動が早くなるのを抑えることはできそうもない。
つくしは悔しい表情で睨んでも司はクスッと笑うだけでつくしで遊んでるのを隠そうともしない。
「意地悪ッ」
その声は司の唇に奪われた飲みこまれた。
いきなりのキスにつくしは思わず目を瞠る。
司の長く濡れた舌先はつくしの驚きなど無視するように口内を探りだす。
キスが深まるにつれつくしの瞼が次第に閉じていった。
柔らかい舌先が絡み合いちゅつと吸い上げる。
「紅茶よりこっちのほうが、いいな」
唇を少し離しただけの距離で司の掠れた声が響く。
ティーカップからあふれる紅茶がすでにテーブルクロスを茶色く染めていた。