wedding band 1

連載に息詰まるとぷかっと浮かぶ短編。

気分を切り替えるのには最適なんです。

しばらくお付きあいをお願いします。

日本では結婚指輪をmarriage ring(マリッジリング)といいますが、英語では「wedding band(ウェディングバンド)」も しくは「wedding ring(ウェディング)」が正解だそうです。

「マリッジ リング」はまさに典型的な和製英語なのだそうです。

指輪にまつわる短編をお届けします♪

数話続く予定です。。

「んっ・・・」

かすかにレースのカーテンが風に揺れてそこから差し込む日の光。

目覚めたばかりの瞳孔は少しばかりの光にもまぶしさを感じ取ってその光を遮ろうとつくしは手で目の前を覆った。

え・・・と・・・

ここは・・・どこ?

見慣れない部屋のベッド。

目を細めながら見渡した部屋はホテルの一室だと認識するまでにそう時間は必要なかった。

ダブルベットのシーツの波はそこに一人でいたんじゃないとつくしに教えてくれる。

昨日一緒にいた相手は道明寺だったと考えれば、それは二人の中ではありふれた日常にすぎないのだから。

「ふっ」

ため息をつきながらつくしは寝ぐせのついた前髪を掻き上げる。

指先にまとわりつく髪。

いつもならつくしの性格と同様の素直な髪はスルリと指先から抜け落ちるはずだった。

違和感も感じながらもつくしはもう一度髪を掻き上げた。

落ちた視線の先には何も来てない素肌が見える。

柔肌にところどころに残された赤い痕が道明寺の熱の名残だとつくしにはわかる。

もう・・・

付けるなって言ったのに・・・

鎖骨にそばに残されたそのあとはどこの痕よりくっきりとつくしには見えた。

痕を指先がその場にいない司を非難するように触れる。

え?

なに?

左の薬指にシルバーに輝く指輪。

これって・・・

リング?

いつの間に?

誰がはめたかさえも思いだせないままにつくしは自分の薬指を眺めた。

「おっ、起きたか?」

今、シャワーを浴びたばかりという格好でタオルを腰に一枚巻いただけの司がつくしの前に姿を現す。

たぶん・・・

この指に指輪をはめたのは道明寺だよね?

プラチナリングと司を交互に眺めながらつくしは覚えていない記憶をはりあわせようと頭を働かせる。

覚えてないっていったら・・・

目の前の上機嫌の表情は不機嫌に頬をゆがめることはつくしにも想像できる。

いつ?

どこで?

どんな感じに?

指輪を見せられたとき私は喜んだのかな?

指輪を薬指にはめてるってことは・・・

でも、道明寺の場合は嫌がる私の指に強引にはめたったことも考えられる。

「どうした?

なに、うかない顔してる」

つくしの横に腰を下ろした道明寺は無遠慮につくしの顔を覗き込む。

「水・・私にもちょうだい」

どう聞くか悩んでいるつくしは司がペットボトルを手に持ってるのに気が付いてそれを欲しがった。

のどの渇きに気が付いてしまったつくしはそのペットボトルに手を伸ばす。

意地悪るする司はその腕をつくしが背を伸ばしても取れない位置まで腕を大きく上げた。

そしてそのボトルから水を自分の口の中にごくりと注ぎこむ。

「本当に、意地悪」

プイと横を向いたつくしの身体が一気にバランスを崩して司の膝の上に落ちた。

「んっ」

直ぐ様押し付けられ司の唇。

上下の唇を開く舌先は、慣れたようにつくしの口内へと押しいられる。

そこから流れ込むあたたかな水がつくしの口内に流れ込んできた。

「おいしいか?」

唇から流れ落ちそうな水をごくりと喉が動いてつくしの喉奥に流し込む。

「味なんて、するわけないでしょ」

つくしの濡れた唇を舐めるように司の舌先がぺろりと触れた。

「いきなりなんてことするのよ」

「お前がほしそうにしてたから」

「欲しかったのは水なの、それよりこれ何ッ!」

司が不機嫌になろうがどうでもよくなったつくしは感情的に声を上げた。

「指輪」

「指輪はわかってるわよ。

私が知りたいのはどうしてはめてるかってこと」

昨日司に会うまでははめてなかった薬指の指輪だ。

「結婚したから」

「結婚?

なんだ、これ、結婚指輪か・・・」

納得しそうにつくしの思考が一呼吸置く前に警戒音を鳴らす。

「結婚てッ!いつ誰が?結婚したのよ!」

昨日は久しぶりのデートで・・・

私より少し遅れきた道明寺と手をつないで街中を歩いた。

食事して、ホテルのバーでカクテルバーでいい気分になって・・・

それから・・・

どうなった?

自分が酔っぱらったのは間違いないとつくしは思う。

そのあとの記憶すっかり抜け落ちて記憶の断片も残っていない。

指輪を道明寺からもらったのはそのあたりだと思う。

婚約指輪じゃなくそれをすっ飛ばして結婚指輪ってありえないつーの。

「俺とお前に決まってんだろう。

それにしっかり役所で婚姻届けも受理されたから」

「なっ・・・」

司の両腕はつくしの手首を握ってシーツの上に押さえつけてつくしを押し倒してしまった。

「道明寺ッ」

「あのな、お前も今は道明寺だぞ」

クスッと小さく笑った唇はそのままつくしの首筋を吸いあげるように触れた。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

今回のお話はつくしちゃん大事なところ記憶が残ってないんですよね。

どうなる?

5話で終わりそうもなければ連載に昇格しちゃうかもしれません。

二人が幸せならそれでいいいんですよね。(笑)