戯れの恋は愛に揺れる  38

つくし姫を取り戻した司皇子。

二度と話したくないだろうなぁ~

自分の住まいに連れて帰れば楓皇后がダメってないと思うけど。

婚儀は延期だといいかねないぞ。

でもその前にイチャコラはできるはず。

ちょっと待って~

毎年恒例夏休みは大人のお話はご法度状態。

家に一人のときじゃないと邪魔が入るから集中して書けないのです。

もうしばらくお持ちいただけたら行きます!

ということで最上階のお話もしばし中断を余儀なくされております。

大人二人は余裕で座れる牛車の中。

うつむき気味のつくしは盗み見をするような気まずさの中でそっと視線を上に向ける。

ふっとわずかに唇に笑みを浮かべた司と一瞬ぶつかった視線につくしは慌てて視線を自分の膝の上に落とす。

車輪が動くたびに左右にと揺れる牛車の振動を身体に感じながら生涯の中で最大の居心地の悪さはつくしは感じる。

「そんな、隅にいるな」

牛車の片隅に身体を寄せるつくしは司が身を乗り出さなければ触れられないじれったい距離を生んでしまっている。

司の声にもつくしは自分から距離を詰める気にはなれずにいた。

そばに寄れは離れられなくなりそうで怖い。

助け出されたときは自分から司にしがみつき、抱きかかえられた後は自ら司の首に腕を回し唇を重ねてしまっていた。

落ち着きを取り戻すとその行為がはしたなく思えて、恥ずかしくて仕方がない。

もし・・・

皇子に嫌われたらどうしよう。

そんな思いが胸の奥でざわつきつくしの思いを占領し始めてる。

「俺の唇を勝手に奪ったやつが、恥ずかしがるな」

助け出したときに自分にしっかりとしがみついたつくしとは別人のように距離をとるつくしが司はおかしくてしょうがない。

遠慮なく自分を見つめればいいのにちらりと俺に気づかれてないように視線を投げるつくし姫が愛しくもあり可愛く思えてならない司だ。

俺が見れないのなら見れるようにしてやればいい。

司はつくし姫をからかうようににやりと笑顔を見せる。

奪ったって・・・

頬に熱を感じかけた瞬間に、ぐいと司の指先がつくしの右手首を掴む。

大きく揺れた牛車の動きが後押しするようにつくしの身体は司の胸の中に落ちる。

そのまま司は両腕でしっかりとつくしを抱きとめた。

直衣から顔を上げるとまっすぐに自分を見つめる瞳と重なった。

つくしは司をそのまま見上げる状況から逃れるすべを見つけられないまま息をするのを忘れてしまっている。

司の唇から漏れる吐息はつくしの鼻先をかすめる。

すぐ目の前に形のいい司のつややかな唇。

自分の唇が感じた和らかな感触。

口元から流れ込む吐息は一気に唇を押し広げ口内へと性急に流れ込んでくる。

「んっ・・・」

つくしが司に軽く触れただけのものとは明らかに違う。

逃げようとすればそれを許さないというように司の腕はつくしを抱く腕に力を入れ締め付ける。

後頭部にまわされた手のひらはしっかりつくしの頭を抱きかけるようにして唇が密に触れ合うように、司の好きなように角度を変えられて逃れようがない。

ようやく離れた唇から息を吹き返したようにつくしは思い切り息を吐いた。

「苦し・・・いッ・・・」

息をするタイミングをすっかり忘れてしまったつくしは身体酸素を取り入れようと必死にもがく醜態を司に見せてしまっている。

「そんなに苦しかったか」

焦ったように覗き込む司は慌ててつくしの背中をさすりないが覗き込んできた。

つくしを離したくないばかりに強く力を入れすぎてしまったかと司は焦る。

「突然だったから、息の仕方を忘れて・・・」

息を整えながらつくしは小さく声を漏らす

「息ぐらいしろよ」

あきれたような司の声に安堵の色がにじむのがつくしにはわかって、甘い感情がつくしの胸の奥に奥に広がる。

さらわれた恐怖も今は忘れそうな気がしてきた。

ギシッと大きき車輪が音を立てて牛車が大きく揺れた。

「大丈夫か?」

その振動からつくしを守るように司の手のひらはつくしの両肩支える。

「ついたようだな」

大丈夫とくコクリとうなずづくつくしを確認した後に皇子が小さくつぶやく声が聞こえた。