戯れの恋は愛に揺れる 40
おはようございます。
夏休みの間に韓流の時代劇を見ていたせいか日本の後宮のイメージが韓国の宮廷のイメージに変わっています。
あのドロドロ感に王妃と妃との闘いが~
つかつくの間にはないんですけどね。(^^♪
高級官僚との駆け引きで妃を娶らないといけなくなった司皇子・・・
もちろん愛するのはつくし姫ただ一人なんだけど・・・
なんて話に傾向が傾いてったら・・・
どんな話になるのでしょう・・・
100話は書かなきゃ終わらなくなるからやめときます。
高く取り囲む壁。
幾度となく折曲がった壁は迷路のようにもと来た道を閉ざす。
きっと一人では城門にたどり着くことはできないはずだ。
皇子の胸に抱かれながらも安心するには何かしらの不安がつくし姫の胸に宿る。
炊かれた灯篭から漏れる火の中に浮かび上がる離宮。
ひっそりとしたその中に虫の音が小さく聞こえる。
その音色も胸打つ鼓動がかき消しドクン、ドクンとつくしの耳元に響く。
その心音は時間が過ぎるごとに大きくつくしを包み込むようだ。
「あの…」
「何も言うな」
つくしの声を遮るように司の腕はますますつくしを抱き寄せてくる。
離してほしい・・・
その気持ちとは裏腹にもうしばらくこうしていたいと思う感情がつくし姫の唇の動きを閉ざす。
このままずっと・・・
それは無理だとわかっている。
ここが宮廷ならば皇子が返ってきたことはすでに皇子の世話をする次官たちにも伝わってるはずだ。
皇子の腕に抱かれたままの自分を見られることは避けければならない。
人が近づく気配にドキっとつくしの感情が動いたその時、司の身体が大きく傾き「うっ」と苦痛にゆがむ声が響いた。
「大丈夫ですか」
倒れこみそうな司の身体を必死につくしが支える。
そんなに傷がひどかったのだろうか?
皇子は自分に気を使い痛みをこらえていたのだろうかとつくしは不安そうに皇子の顔を覗き込んだ。
閉じた瞼がゆっくりと開いて黒く輝く潤んだ皇子の瞳がつくしをとらえる。
「皇子様」
侍従長の慌てた声がつくしの反対側で皇子を支えるように皇子の脇に腕を差し込んで助け上げた。
つくしから離れた皇子の身体をそのまま侍従長が必死にささえる。
「歩けますか?」
つくしでも支えきれていたはずの司の身体を持てますように侍従長は顔を真っ赤にしてよろよろとよろけながらも必死だ。
侍従長にわざと全身の体重をかけるように司は宮の中に入っていく。
その後ろを慌ててつくし姫が遅れて中に上がり込んだ。
部屋の中は煌々と明かりに照らされ昼間のような明るさを作り出している。
女性の部屋の調度品で埋め尽くされた部屋はつくしのためにあつらえたものだとわかる新品さだ。
「大丈夫だから、お前は下がれ」
司の命令口調に侍従長はどうしたものかという表情をつくしに見せる。
「こちらに、お渡りのままで・・・」
遠慮がちな声を発して司を覗き見る侍従長の視線がちらりとつくしを見て慌てるように頭を下げたのはじろりと皇子が射る様な冷たい視線を向けたからに他ならない。
これ以上皇子の機嫌を損ねられるはずがない。
そんな感情を見せたまま侍従長は焦った態度で部屋の外に出ていくのはつくしは見送った。
「わざとですか?」
「何が?」
「傷が痛むふりをしたことです」
「あーでもしなきゃ、お前が俺に抱き着いていたって宮中に広がるぞ」
「抱きついていたのは皇子様のほうです。私じゃありません」
ニンマリとからかう表情でつぶやく皇子につくしは本気で食いつく。
自分にたてつく素振りで媚びを売らないつくしが司は面白くてしょうがない。
膨れた表情を見せて飾らない態度を見せるつくしが好ましく愛しく思えてくる。
「俺が、このまま部屋を出ても、お前は寂しくないのか?」
笑った唇がまっすぐに真剣な感情を作って声を閉ざす。
ぐいと引き寄せた司の腕に抗うこともできず胸元へつくしは引き寄せられる。
上向きに落ちた司の腕の中でそのつくしを覗き込む司の瞳は熱くつくしをとらえて離さない。
「このまま、一緒に過ごしたら皇太后さまの言いつけに背きます」
「大したことじゃない」
言い終わらないままに司の唇がつくしの唇と重る。
熱く・・・
深く・・・
奪うように・・・
司の唇の動きは忙しさを増す。
熱から逃れらないように自然とつくしの唇は開いて差し込まれる司の熱情を深く受け止めて受け入れて応えてしまったことは隠しようがない。
熱に浮かされる様な吐息が小さくつくしの唇を揺らしていた。