最上階の恋人 26

台風の暴風域の真っただ中です。

風よりも雨量がすごい印象です。

県内の川の氾濫の恐れや停電の情報もちらほら。

更新中に停電となったらどうしよう(^-^;

心配はそこじゃないでしょう!なんて突っ込みはご容赦を。

十分な警戒が必要ですよね。

被害がなく台風が過ぎ去ることを願います。

「着替えてないのか?」

不服そうな表情が私を見つめる。

言葉尻に絶対疑問符はついてないと私は直感した。

シャワーを浴びて二人っきりの空間の中でどれだけ心臓が暴れたと思ってんのよ。

そのドキドキ感は来訪者を告げるベルの音にドクンと大きく一つ飛び跳ねた。

誰が来たのか想像する余裕もない。

余裕ありの表情で部屋の中に招き入れたのは道明寺。

すごい荷物と一緒に現れた数名の女性に拉致された状況に追い込まれた。

一人じゃ脱げないドレス。

3人がかりで仕上げられたんだからね。

道明寺とのパーティーの準備が半端ないことは経験積みだけど、ここでもなんて思ったなかった。

メイクにヘアーにドレスのコーディネート。

世界のデザイナーの一点ものなんて説明されても、自慢じゃないがそんなデザイナーの名前に触れる機会なんてないから知るわけない。

「脱げないの!」

不機嫌な大きな声と一緒に履いていた8センチの高さのヒールが道明寺の前に跳ねて転がる。

さっきから背中のファスナーと格闘すること15分。

小さくプチプチといくつもついた丸いボタンが多すぎて指が攣ってあきらめた。

服を脱ぐのに休憩がいつようだなんて能率的には問題ありでしょう。

目の前の道明寺はタキシードを脱いで、シャワーを浴びてすっきりとしたラフな格好。

上半身は裸体のままというのが・・・目のやり場に困る。

私もシャワー!

と、ここは道明寺の横を通り過ぎていきたいのに一人じゃ脱げないドレスがそれを邪魔する。

「俺から脱がしてもらうの待ってたのか?」

「なっ・・・そんなこと、思ってないから」

ヒールを拾った道明寺がゆっくりと、どもる私の前にきて片膝を折って腰を落とす。

もしかして・・・

ヒールーを履かしてくれるつもり?

それとも本気で脱がすつもりとか?

落とした視線の先で道明寺の指先が私の足背に触れる。

道明寺の仕草の一つ一つにごくりと息を飲む。

バクバクとせわしく動く心臓。

下肢の間を縫うようにすっと道明寺の腰の位置が上にあがって私の目の前に整いすぎた顔立ちが表れた。

「牧野・・・」

名前を呼ばれてるのにそれを脳が認識しない。

牧野って・・・

私の名前を呼んでる道明寺。

足先から足首、ふくらはぎを流れるように伝う指先はそのままドレスの裾を軽く持ち上げて私の太ももを撫でる。

私の足元には道明寺が持っていたはずのヒールの片方が転がったまま。

誰かに起こしてもらわなきゃ揃えられないヒールの姿と自分の姿が重なって見える。

道明寺に何とかしてもらわなかや自分じゃどうにもならない気がした。

ドサッ。

ゆらりと揺らぐベッド。

押し倒されたというよりはゆっくりと私の背中に腕を回した道明寺に誘導されて落ちていった身体。

半分だけベッドの上に置かれた上半身。

足の裏はまだ床のカーペットの毛並みの長さの感覚を踏みしめている。

私の身体の横に腰を下ろした身体をひねった道明寺が私の顔の横に腕を突いてくる。

「牧野・・・」

私を覗き込む道明寺の瞳。

瞳に宿る感情は熱情を見せて潤むように熱い。

なんとなく・・・

ただ何となく・・・

これ以上私を見つめる道明寺が見れそうもなくて・・・

私はぎゅっと瞼を閉じた。