最上階の恋人 27

今日は2話UPです。

2話目は限定記事となりますのでお楽しみに。

ベッドに腰かけたままの牧野は・・・

何か・・・

戸惑ってるようで・・・

それで、いて・・・

怒っているようで・・・

掴めない表情で俺を見つめる。

ここで拒否られたら俺は絶対立ち直れねぇぞ。

今度こそは、お前を俺のものにする。

その欲望はいつもなぜか空振りになることが多くて実現できずにいた。

さすがに今ならどんな邪魔もいる余地もない海上

まさか!

タイタニックみたいに処女航海で船が沈むってことはありえないと思う。

牧野のためにオーダーしたドレスをしおらしく着たままの牧野。

脱いで、ベッドに入って白い半身を隠して頬を染める牧野。

そんな俺の想像とは真逆の鎧をまとったままの牧野。

俺に抱かれたくないなんて言わせねぇぞ。

こいつと夜を共にするのは初めてじゃない。

一度目は壊れた動かなくなったエレベーターに閉じ込められた過ごした一夜。

熱出して動けなかった俺を看病してくれた牧野。

あの時にはもうすでに牧野が気になってしょうがなかった俺と俺のことを毛嫌いしていた牧野。

二度目は遭難しかけた牧野を追いかけてそのまま避難して一夜を過ごした山小屋。

記憶をなくしてても俺は本能でお前を追いかけた。

細胞のレベルで俺はお前を愛してたって思う。

今回は三度目の正直だ。

熱も出しちゃいないし、記憶もなくしてねぇし、結婚の約束もしてる俺たちだ。

誰に遠慮もいらない関係ってもんだよな。

遠慮の文字はもともと持ってねぇけどな。

牧野が相手だと・・・

考えすぎて・・・

やばくなる。

なんか・・・

無理やりやりたくねぇし・・・

牧野が・・・

抱かれたいと・・・

俺が・・・

抱きたいと・・・

心が重ならなければ意味がないって思うから。

俺をじっと見つめる瞳がうるんで頬を染める。

「脱げないの・・・」

普段あんまり化粧気のない牧野の唇に塗られたルージュがつややかに濡れて動く。

「俺から脱がしてもらうのを待ってたのか?」

牧野にむしゃぶりつきたくなるような衝動を押せながら俺はその感情を抑えて冷静さを装う。

身体から離れた分身はすでに牧野をベッドの上に押し倒してる。

「なっ・・・そんなこと、思ってないから」

牧野から脱げたヒールが床に転がる。

あらわになった足元は思いよりも白くて・・・

指で触れてみたくなる思いが俺を誘う。

ヒールを拾った指先が震えてるの牧野には気づかれたないよな?

フッと落ち着かせるように息を履いて牧野に近づいた。

「牧野・・・」

呼びなれてるはずの名前が喉の奥に張り付いて、口の中の唾液をすべて吸い込んでしまうような感触。

カラカラの渇きを潤をせるのは今、目の前にいるこいつだけだと確信できる。

足先から足首、ふくらはぎを流れるように伝う指先はそのまま牧野のドレスの裾の中に入りこませる。

牧野から発する熱はすべて俺の指先がとらえてる。

感触に耐えるように牧野の唇がかすかに震えて小さく声を漏らす。

こらえるように牧野の指先が俺の腕をしっかりとつかむ。

うっすらと染まる頬。

わずかな俺の指先の愛撫にさえ牧野が今まで見せたことのない色気がかすかに香り立つよう。

誘われるようにベッドに牧野を横たえる。

わずかに軋むベッド以上にギシッと心臓が音を高くはね上げた気がした。

「ぬげねぇ」

ただへさえ焦ってるのにもどかしいくらいに指が動かねぇ。

ボタンをはずす手つきは子供みたいにもたもたしてる。

「笑うな」

俺の下でクスッとした笑みを牧野が浮かべて瞼を開く。

「慣れてねぇんだよ」

女を脱がせるの。

自分で脱ぐのとは勝手が違うと初めて気が付く。

「今度からもっと脱がせやつ準備する」

「脱がせるために服を選ぶの?」

さっきまでの緊張が解けたような、牧野の微笑み。

「黙れ」

重ねた唇から、まだクスッとした声がこぼれた。