エロースは蜜月に溺れる 9

8話目でキスは早くねぇ?

10話程度で終わる予定なので順調に来てるはずなのに終わる気がしない・・・(;^ω^)

キスの先にあるのは天国の時間かはたまた地獄の生ころがしか?

どちらがより楽しめると思いますか?

あっ!司君のこめかみにピクピクしてる・・・。

こんなキス知らない。

差し込まれた舌先がつくしの舌先をとらえてクチュッと吸い上げる。

ヌルついた舌の感触は感じたこともないゾワッとした震えつくしの身体に走らせる。

初めてのキスは触れるだけでもっと優しく甘く蕩けるものに違いない。

そんなつくしのファーストキスへのあこがれは深く唇を重ねる司のキスで塗り替えられていく。

非難の声を上げようとするたびにさらに強く舌を絡めとられる。

くらりとしためまいに襲われながらつくしはされるがままになりたくないと力の限り司を押してみたら、その身体はびくともしない。

胸を押した腕はそのまま司に抱きしめられて逆につくしの自由を奪う結果となってしまった。

「はぁ・・・はぁ・・・」

息を継ぐ間も惜しむようなキス。

息も絶え絶えになる頃にようやく司の唇がゆっくりとつくしの唇から離れる。

離れた唇は名残を惜しむようにもう一度つくしの唇に軽くキスを落とす。

しっとりとしたその羽毛が触れるように軽いキス。

それはつくしが思っていた甘い初めてのキス。

そんな憧れのキスがさんざん乱暴に貪った後で返されてた不満と戸惑い。

つくしを見つめる司の潤んだ瞳。

さっきまで重なっていた司の唇がやけに艶めかしく思えて、疼く唇をつくしは震わせた。

「初めてなのに!なんてことするのよ」

わずかに残された気力だけで司の身体を両腕で突いた。

先ほどは微動だにしなかった司の身体がソファーからずり落ちてしまうほどに揺れてつくしを慌てさせてた。

何をされても自分は買われた身だ。

以前の主と同じように身に覚えのない淫らな烙印を押されて競りにかけられる思いはもう二度味合いたくないのが本音だ。

だからって、いきなりの司の行為は許されないとつくしは思う。

現実は主が買った召使をどう扱おうと非難されることも罰を与えることもない。

今まで必死で抵抗して何事もなく守ってきたものをすんなりと司には奪われたしまった。

それなのに、初めての感覚に戸惑いながらも嫌じゃない感覚。

身体が感情を裏切る甘い誘い。

何が嫌で何がいいのか自分でわからなくてつくしを惑わしてくる。

幼いころの記憶を思いだして淡い思いを感じていた時だけにつくしは自分の落胆を隠せずにいた。

「初めて・・・だったのか・・・?」

床に落ちた身体をソファーに戻した司は放心したような表情でつくしを見つめる。

「だったら悪い」

何度も聞かれたくない思いがつくしの頬を赤く染めて口を尖らせた。

「キスしたことてないのか?

いや・・・しなくても・・・することはできる・・・」

頭を抱えた司は難問を解く表情で浮かべて独り言をつぶやく。

その様子をつくしは首を傾げた怪訝そうに司を眺めた。

「お前、前の主の息子とだな・・・」

聞きにくそうな表情の司を見てつくしは競りの時の売人の口上が頭をよぎる。

『見た目はまだ幼さも残るが色気で男を迷わす女だ。

初心な見た目で判断するともったいない買い物だ。

閨の中でどう変化するか楽しむのも一驚』

それがどんな興味を男に植え付けるのかは、経験がないつくしにでもわかる。

何もない部屋で召使の女性たちは話す閨の睦事は必要以上につくしに耳に入ってきた。

だから経験はなくてもなんとなく意味は理解できていた。

「ぎゃーーーッ」

その先を司から聞きたくてつくしは手のひらで司の口を押えた。

手のひらの柔らかい感覚に艶めかしい感触がよみがえりキュンとした疼きを身体の奥に感じて、つくしは司から飛びのいて手のひらを唇から離した。

「あれは、でたらめだから、前の息子とは何でもないって」

慌ててつくしは襲われそうになったのは事実だが大事なところをけり上げたら息子は気絶したことを早口で説明した。

「全然?一度も?俺以外は?」

「初めてだって言ってるでしょう!」

そのとたん、つくしは司に強く抱きしめられた。

「ちょっ、やだ!」

「お前は俺だけのものだ」

司はきつく力を込めてつくしを抱きしめる。

許せなかった。

つくしの運命を変えてしまったのは自分。

今日まで何もできなかった自分。

辛い思いをさせてそんなつくしの欲情してしまう自分自身。

何もかも許せないはずなのに、会えば自分が抑えきれなくなるのはわかっていた。

「俺はお前を守れなかったことをずっと悔やんでいた。

おまけに探し出すのにこんなに時間がかかってしまったしな」

背中に触れる司の腕はこれいじょうにやさしく抱けない触れ方でつくしの背中を何度もなぞる。

時折キュッと力を入れてつくしを抱くからつくしの胸元はぐっと司の胸に押し付けられてしまう。

鼓動がそのたびに大きくなって司に聞こえてしまいそうでつくしは恥ずかしくなる。

ずっと、心配してくれたんだ・・・

何度も感じたことなのに改めてつくしは心から感動して涙がこぼれそうになった。

「つくし・・・」

ゆっくりと身体を離した司が真摯なまなざしを向けたまま名前を呼んだ。

それだけで甘い気分にさせられてしまう。

「二度と離さないから」

ゆるぎない瞳はしっかりとつくしをとらえて離さない。

気迫に満ちていて雰囲気にのまれそうになって、つくしは「うん」とうなずきそうになった。

うるさく鳴る鼓動が司の熱をつくしに意識させる。

「まずは、あれだな、

俺はしばらくこの離宮に一緒に住むから」

すっとつくしから身体を離すように司がソファーから立ち上がった。

一緒に住むって・・・

司が住む宮廷からここまでは1時間は時間を要す。

王子としての役目も忙しくて、その上つくしの両親も探してくれてる。

だからここしばらくつくしに会いに来れなかったと聞いていた。

ここ一緒にいたらもっと忙しくなるのではないかとそんな心配をつくしはしている。

心配は別なところにあるはずなのに、つくしの知識がそこまで追いついていない。

「大丈夫なの?」

不安そうに司を見つめるつくしの瞳には司を思いやる気持ちが覗く。

そんなつくしを見るだけで高揚する感情を司は抑えられなくなりそう。

「安心しろ、お前は泣いて頼むまで無理に抱かないから」

抱かないって・・・。

え・・・っ?

司の言葉に初めてつくしは自分が見当違いの心配をしてることに気が付いて顔色を失った。