エロースは蜜月に溺れる 13

最近滞ってる連載分が気になりだしてます。

すっかりどう進めるつもりだったか頭の中から妄想が抜け落ちてるし・・・

戻れるか不安です。(;^ω^)

敷き詰められた石畳を抜けると丹念に育てられた色とりどりの花が咲き乱れ庭を芳醇な香りが包みこむ。

その先に広がり小高い丘にひときわ高く育つ大きな木が葉を茂らせた木陰を作る。

そこから見える離宮は蜃気楼のような儚い美しさに見える。

ここ数日夢のような時間をつくしは過ごしてると思う。

この夢から目覚めたらどうなるのだろう。

椿や司の自分に向ける好意はこれまで感じたこともない穏やかさと甘さでつくしを包みこむ。

自分の身の周りの世話をしてくれる召使もつくしを信頼し真心を持って大切に使えてくれる。

それはつくしと結婚すると宣言してはばからない司への配慮があったとしてもつくしの気さくな人柄に寄るものが大きい。

人なっこい笑顔と気遣いができるつくしは我儘に育てられた令嬢とは違う魅力で召使を魅了している。

午前中は知らない大人に囲まれて宮廷の礼儀作法や王国の歴史なんてやたら硬い講義の怒涛の責めにさすがのつくしも辟易気味だ。

下働きのほうがどれだけ楽か。

身体を動かすより脳を使うほうがエネルギーの消費は早いとつくしは思う。

食事のあと話す間もなく追われるように司は宮殿に戻った。

一秒でも無駄にできないようなそんなあわただしさ。

この後いつ会えるか、そんな約束もできないままにつくしは司を黙って見送った。

講義から解放されたわずかな時間に部屋を抜けだして庭へと出たつくしは自分を探す声から隠れるように花の間に姿を隠しながら歩いた。

いつの間に離宮を抜け出して気が付くと離宮を見渡せるほど遠くへ来てしまっていた。

腰を下ろして幹に背中を持たれかけながらつくしはフッ吐息をもらす。

柔らかな日の光はきらきらと輝き、葉の間からやさしく差し込む。

光の向こうには空の澄んだ青い色が見えた。

そよ風に吹かれて葉の擦れる音もやさしく聞こえる。

こんな静かな時間を過ごすのは何年ぶりだろう。

朝から晩までこき使われた頃は思いだす間もなかった幼いころの記憶がよみがえる。

この丘から眺めた風景も覚えてる気がした。

「たくっ、捜したぞ」

つくしの顔に落ちた影。

その影の主は一瞬眉をひそめて小さく動かした唇を止めた。

「なんだ、眠ってるのか?

俺がお前と会うと気は起きてる時よ眠ってるほうが多いんじゃねぇか」

そっとつくしの横に寄り添うように司は腰を落とす。

片膝をついてもう片方の足を不満な言葉と一緒に投げ出した。

その振動に合わせるように司の肩とは反対側に傾いていた頭がグラッと動いて司の肩にもたれかかる。

熟睡してるとわかる頭の重みが司の右腕にかかる。

必死で探しだしたつくしの両親。

その情報を持って、真っ先につくしの部屋を司は目指した。

ざわつく召使の狼狽える姿。

つくしがいなくなったと大騒ぎしてる最中に司が現れたのだから召使たちの心境は急激に地獄に急降下する。

頭を床に押し付けて震える召使たちを責める様子も見せる司は踵を返した。

召使たちがホッとしたと同時に司の怒鳴る声が聞こえなかった異様さにあとに残された召使たちが浮かべる困惑気味な表情が、黙ってみていた椿の頬を緩めた。

なんとなく・・・

つくしがいる場所が司には見当が付いた。

離宮に連れてこられたつくしと好んで遊んだ丘。

逃げるこいつを追いかけるのが楽しくて、この木そばに逃げて隠れてたつくし。

ひょこっと木の裏から顔を覗かせて舌をべッと出したつくしの顔を思いだすと今でも笑える。

幹を抱くように回して掴んだつくしの腕。

左右でつかめばどうにも動けなくなってしまう。

そのままの姿でどちらの手も離せずにいた。

今なら片手を外して抱きしめれば簡単に胸の中に捉えられたはずなのに、あのころの俺はどちらの腕も離せなくて握ったままで・・・。

あの後どうしたんだろうな?

斜めに顔を傾けて見下ろす視線。

長いまつげがつくしの息遣いとともにわずかに揺れる。

「おい」

右肩を上下に一度動かす。

つくしのぐらついた頭が肩から落ちそうになって慌てて左の手で位置を直した。

起きろよ。

舌打ちした音に混じる心情。

ちらりと落とした視線がつややかなぷっくらとした唇が色鮮やかに焼き付いて離れない。

頬に触れた指先。

そっと顎のラインに指先を寄せて上を向かせて誘われるように落とした唇。

柔らかな甘い感触が昨夜の熱を思いだす。

「うっ」

息苦しさに目覚めたつくしが大きく目を見開く。

唇に感じる生温かい感触と背中を包みこむ熱。

なに?

誰ッ・・・?

キスされてる?

身体に広がる熱はしっかりすべてを抱きとめて身動き一つできそうもない。

「んっ・・・っ」

非難するように必死で上げた声は。

その声をすべてすい取るように唇を吸い上げられる。

そして離れた唇から伸びてきた司の舌先がぺろりと唇を舐める。

それは甘えるような甘さで・・・

「な・・・ッ・・・」

つくしの解放された唇がかすかに震える。

「やっと起きたか?」

「なんって起こしかたするのよッ」

キスした相手が司だと気が付いた安堵感と恥ずかしさが一気につくしの身体の熱を上げていた。

拍手コメント返礼

りり 様

私も・・・ほかのお話の更新が気になってます・・・。(;^ω^)