エロースは蜜月に溺れる 14

10話予定だったこのお話し確実に15話は超えますね・・・。

20話までには終わらせたい。(;^ω^)

「こんなところにいたのか?」

砂煙を上げて駆けてきた馬からひらりと総二郎が地上に降りる。

ゆっくりと手綱を引きながら司たちに近づく総二郎に葉の間をぬって差し込む日の光はまばゆいほどにキラキラと輝く。

そこから数メートル距離を置いてゆっくりと近づく二頭の馬。

つややかな栗色の毛並みの馬と白馬にまたがったままのあきらと類。

駿馬の洗練された美しさもこの二人の美に色を飾る物にすぎない。

司に不満をいっていたつくしの口元は小さく開いたままその姿に刻を忘れそうになった。

そんなつくしに「チッ」と司の舌打ちが小さく音を鳴らす。

「わざわざ、俺を追いかけてきたのか?」

ツンと顔を横に背けた表情は不愉快さを滲ませる。

つくしの両親の居場所を突き止めてこれからのことを話し合おうした時には司は宮殿の執務室を飛び出していた。

都から馬で2日の距離の小さな宿。

そこに主としてちゃっかり収まっていたつくしの両親。

老いた老夫婦に偶然助けられてそのまま居ついた二人は老夫婦に気にいられて、今はその小さな宿を譲りうけ、細々と暮さ意を立てていた。

都で貴族としてして過ごしていた面影はどこにも残ったなかったと探索していた部下からの報告があったのは数日前。

二人の宿に確かめに行った3人は、汚名を晴らして呼び寄せからもうしばらく待つように話してその足で司のもとに戻ってきたのが舞踏会の前、この場所で4人が微笑みあって報告をしてるとは誰も思わない華やかな場。

都に両親を呼びよせてからつくしに話すことを提案した矢先に司は宮殿から飛び出していった。

追いかけないわけにはいかないだろうと3人は思う。

それでも一日間を置いたのは司のことを信じてるからに他ならない。

「もう、はなしたのか?」

つくしから引き離すように司の腕をとって引き寄せた総二郎が小声で司の耳元でつぶやく。

「こいつ、眠ってたんだよ」

司の冷ややかな声につくしは耳元まで赤く染める。

まだ、何もつくしに告げてないことに3人は顔を見合わせてホッとため息を漏らした。

「急激に生活も変わったんだから疲れるのも仕方ないと思うよ」

つくしを気遣うようにやさしく見つめる類の瞳につくしは気恥ずかしい思いに戸惑いを感じる。

「夜も、俺の隣でグーグー寝てるし」

吐き捨てる司の声は明らかに昨日のつくしを責めてる。

今それを言うかとつくしは司に食いつきたくなる気持ちをぐっと押さえこんだ。

「お前ら、一緒に寝たのか?」

「あぁ」

「それで、牧野は眠りこんだってわけか」

「それは、男のプライド粉々だな・・・」

まじめな空気感は一気に悪ふざけの様相を示す。

「そんなこと、どうでもいいだろう」

司の不愛想な表情は明らかに照れ臭さを隠してるのが3人には手に取るようにわかる。

「俺はお前らと違うんだよ」

「司に俺たちの真似は無理だろう」

「牧野一筋だしな」

ジロリと鋭く見つめる司の視線にも総二郎とあきらは動じずにククと笑みを零した。

「しかし、これからどうするかだな?」

緩んだ頬を4人が一気に引き締めて真顔をになる。

つくしを両親に早く会わせたいがそれは問題が解決したのことだ。

司もつくしの両親を見つけたことを今話すのは時期早々だと思う。

もし、つくしに話せば別な悩みを引き起こす可能性も否定できない。

話せば早く両親に会いたいとつくしが騒ぎだすのはわかってる。

勝手に宮を抜けだして飛びだすに決まってる。

今でも一人で離宮を抜けしてこの丘で寝てるつくしなのだから自分が司のために狙われてる危機感は感じてないはずだ。

またそれをつくしに知らせるつもりも司にはない。

むやみにつくしを不安にさせることは避けたかった。

「長引かせる必要はねぇよな?」

「証拠はそろってる」

司の妃選びから引き起こした陰謀。

つくしがいなくなって喜ぶものを探すのはたやすい。

国内で実力があるから慎重に今まで策を練ってきた。

あとはいつ行動を起こすかにかかっている。

最後の詰めだからこそ慎重に動く必要があるのだ。

なのに、ここ数日の司は周りの者たちを翻弄させてる。

宮廷を離れて離宮に泊まるなどこれまでなかったことだ。

慎重に・・・

言ったところで司を止められないと3人は感じている。

早くつくしを自分の手元に置きたいと思ってるのは司本人なのだから。

司は我慢を知らないからな・・・

司の性格を知り抜いてるからこそうまく打つ手立てもあるはずなのだ。

「借りるぞ」

総二郎の手か手綱を取った司が颯爽と馬にまたがる。

「来い」

つくしの前に差し出された腕。

その腕をぼっと見つめるつくし。

「来いって・・・?」

ゆるゆると立ち上がったつくしはスカートの裾についた草を払いながら司を見つめる。

つくしに近づくように馬を操った司が一瞬でつくし馬上に引き上げた。

「キャッ」

司の前に横座りのままに引き上げられた身体はバランスをとるために司に抱き付くしかない。

思わず首筋に腕を巻きつけたつくしの頬にフッと緩んだ口元から甘い吐息が触れる。

「しっかりつかまってろ」

馬の横腹に両足でけりを入れて馬が走りだす。

それは離宮とは別な方向に向かって砂ほこりを舞い上げる。

「あいつ・・・まさか!」

あきらの馬に総二郎を乗せて類とともに二頭の馬は司のあとを追った。