愛を叫べ! 7
大人の色気で攻める司!
目指してたはずなのに・・・
だんだんと・・・
日頃の我が家の我儘坊ちゃんが顔を出してきてるような気がします。
もうちょっと頑張ろうよ~。
なに、やられてるんだか・・・
うつろになった瞳に、ぼやけて見えていたその顔は、だんだんと・・・。
くっきりになって私を見下ろしていた。
落ちそうになる身体はしっかりと腰に回された腕に支えられてしまってる。
甘く痺れかけた頭の芯を必死に正常に戻そうと身体中の理性を探してかき集める私を見つめる涼しい顔。
満足そうに笑うな!
ググッと道明寺の身体から抜けだそうとあいつの腕を押さえこむ。
上から抜け出そうとしても長身の道明寺と目線を合わせるどころか肩まで行きつくことも無理なことはわかってる。
ここは私が離れたがってると道明寺にわからせればいいだけだ。
「なんの真似だ?」
十数秒の沈黙のあとに聞こえた冷やかな低い声。
いつもよりその声はやけに低い。
「え・・・と・・・そろそろ離してもらおうかなと・・・」
ここはしっかり気を持たなきゃいけないところなのに、気後れしてしまいそうな自分がいる。
「却下!」
即答する道明寺が私に覆いかぶさるように腕をギュッと身体にまとわりつかせる。
胸元に抑え込まれた頭。
乗っかるように道明寺の顔が肩に乗っかるように置かれてる。
左脇から右肩に回された腕はしっかりとシートベルト並の頑丈さで私を押さえこんだ。
「これが一番落ち着く」
耳孔に吐息と一緒に流れ込む甘い声。
私は落ち着かない。
息もしにくいのッ!
しっかり空気を吸おうと吸い込めば道明寺から匂う香りまで思いきり吸い込んでドクンと心臓が跳ね上がる。
甘いコロンの匂いは麝香のようなフェロモン満載の気がする。
西田さんに見られたことで道明寺のやつ大胆になってきてないか?
たぶんこの後・・・
道明寺が西田さんを呼ぶまで、私が出ていくまで、この執務室は扉は開くことはないって道明寺もわかってるはず。
道明寺の身体で遮られた部屋の扉にカギをつけられてる気分になってる。
手首を縛られソファーの上に倒された時より危険度は上昇しちゃったとか?
執務室に長居する気はない!
ここに道明寺と一緒にいたらどんな淫らなことをやってるかって西田に想像さてしまいそうじゃないの!
それだけはヤダ!
「あのさ・・・」
頭の中はこのピンチをどう切り抜ければいいかと言葉を探してる。
その間にも道明寺の指先は後頭部を撫でて、髪の中に滑り込んだ指先に毛先を巻きつけるように動いて、私の髪の毛を嗅ぐ仕草を見せる。
あんまり触らないで!
言いたくなる声を必死で抑え込む。
少し指先を動かすだけで私の感じる部分を直に刺激してくるから服を着てるからといっても侮れない。
これ以上好きなようにはさせたくない。
「おなか空かない?」
怪訝に私を見下ろす道明寺に、もっとほかに言うべき言葉があったはずだと後悔し始めてる。
実際私はお昼を食いっぱぐれてしまってる。
ちょうどいい具合に「グッー」とおなかの虫も鳴った。
「ここにきて色気より食い気かよ」
面白そうに笑う道明寺の腕がわたしから離れた。
「朝、食べてから食べてないんだもん」
「昼食には遅すぎだろ」
どちらかと言えば夕食に近い時間今の時間。
「俺がこんなに誘惑してやってるのに空腹に負けたのか?」
呆れたようにつくため息。
それでも道明寺が気分を害してないことは分かる。
目がやさしく笑って見つめてくるから、いつもみたいに悪態が付けない。
「体力つける必要はあるからな」
にんまりと口角を上げる笑みに感じる淫靡さ。
いちいち反応したくないのにその意味がわかってるから顔が赤くなるのが自分でもわかる。
「行くか」
グイとつかまれた腕は道明寺に引っ張られたままに執務室から外に連れ出された。
連れ出されながら壁にかかった時計で時間の経過を確認した。
15分くらいかな・・・?
何とか、西田さんに変に勘ぐられなくて済んだ時間経過だよね?
「早かったですね」
西田さんの声にビクッと背中が反応した。
西田さんの早いの意味はなに?
「さっさと済ませただけだ」
道明寺の不機嫌な声。
さっさって・・・なにか・・・した?
済ませたって・・・なにを?
頭の中で不埒なことが飛び跳ねてる。
この二人の会話はまた別な意味があるかもしれない。
そうよ!仕事のこととか・・・ね。
顔色がさっきからカメレオンなみに変わってる気がする。
「今日は退社する」
道明寺の言葉に、25度に下げた角度の頭から「行ってらっしゃいませ」と聞こえた冷静な声。
その声に見送られながら私は道明寺に連行されていく。
もう!
何も言い訳できないじゃないの!
明日からどんな表情で西田さんに会えばいいのよ!
道明寺!
覚えとけ!
今日はされるがままにならないから!