愛を叫べ! 8
クリスマスリクへのたくさんの投票ありがとうございます。
昨日一日で投票巣は200を超えてました。
王道つかつくさすがですね。
投稿のコメを読みながらムフフと妄想を膨らましています。
張り切って来週あたりから準備をしていきたいと思ってます。
さて、今年のクリスマス物語は何話くらいになるかしら?
コツコツと指先が音を鳴らす。
その音に重なるように「ズズッ」と麺を啜る音が聞こえた。
ほかにもっと場所があるだろう。
洒落た二人きりで食事のできる個室のあるレストラン。
会社から連れ出したのは俺のはずなのに気が付けばラーメンと書かれたのれんをくぐらされていた。
夕食にはまだ少し早いこの時間でもまばらに客のいるところを見ると繁盛してるラーメン屋なのだとわかる。
ドンブリを両手で持ちあげて最後までスープを胃に流し込んだつくしが満足そうに「ごちそうさま」とつぶやいた。
少し奥ばったテーブル席に座る俺たちは注目されることもなく食事を終えることができた。
「もっと、いいとこ連れていくつもりだったんだけどな」
いつものことだがつくしの食いっぷりは気持ちいい。
ほんと何でもうまそうに食べるよな。
こいつに食べられないものなんてないんじゃないかといつも思う。
「あのね。夕食前なんだからこのくらいがちょうどいいの」
にっこりと満足そうに微笑むのは目の前に俺がいるからじゃなく空腹を満たしたからなんだと思う。
「お前、まだ食うつもりか?」
わざと呆れた表情を作りながらもこいつらしい色気のなさが好きだと思う自分がいる。
「お腹が空くこと、しないんだ?」
顔を俺に近づけてゆっくりと動く唇のつややかな色合いがやけに目につく。
なんとなく・・・
誘うような瞳が俺を熱く見つめて・・・
女の顔つーか・・・
こいつ・・・いつから・・・・こんな表情・・・できるようになった?
会社でドタバタと焦っていたはずのつくしのありえねぇ変化に俺のほうが戸惑ってしまってる。
動揺を隠すように一呼吸を置いて閉じた瞼を開いた。
スゥッとテーブルの上を動いたつくしの手のひらが俺の手のひらの上に重なる。
触れ当たった手のひらの熱が肌を浸透して細胞に熱を送りこむ。
「お前から、こんな誘いを受けるとは思わなかったよ」
手のひらを入れ替えるとつくしの手のひらを今度は俺がギュッとつかむ。
そして近づけた唇が軽く指先にキスを落とす。
ピクンと俺から逃げるように腕を引っ込めたつくしの指に感じる動揺。
負けねぇよ。
「出ようっ」
慌てて立ち上がったつくしの膝裏が座席を押してガタンと大きな音を立てた。
バタバタと店を出ていくつくしを軽い足取りで追う。
慣れねぇこと試みるこいつもすげー可愛く思える。
焦ってるつくしに欲情できる俺もすげーぞ。
怒ってるようにどたどたと歩くつくしのそれは照れ隠しだってわかる。
あいつの頭の中には後悔の文字しか浮かんでねぇかもな。
「どこに、俺を誘い込むつもりだ?」
直ぐにならん肩。
「仕事が終われば帰るに決まってるでしょう?」
歩くたびに触れあう肩が心地いいリズムで甘い刺激を生む。
「こんな早い時間に二人で街の中にいるのにか?」
「たまにはゆっくりするのも必要だよ。
ここのところ仕事で忙しくて、まともに休んでる気がしないし・・・」
会社から帰っても勉強することが多いとPCの画面を睨んるつくし。
それが俺の帰りを起きてまってるための口実って知ってるぞ。
「休めないのは仕事だけじゃねぇだろう?
俺がお前を寝かせないからな」
ドンといきなり100倍の威力で肩が俺にあたってきた。
軽く揺れた身体は数歩、俺の歩みを乱しただけ。
お前のほうが感情乱し過ぎてんだよ。
「こんなところで変なこと言わないで!」
「誰も聞いてねぇよ」
つくしより一つ飛び出た頭であたりにうかがうように視線を回す。
あっ・・・
見られてるわ。
ひそひそと噂しあうように顔を寄せながら視線は俺らに注がれてる。
気が付かづに通りすぎた通行人も異変を感じたように立ち止まって振り返って何事かと探すしぐさを見せる。
「見られてるじゃん」
グイと俺のスーツの裾をつくしが握って引っ張った。
今にも消え入りそうな儚さ。
「昼間の動画もあるからな」
検索率上位にランキングされてたって知ったらつくしはここから新幹線並みのスピードでいなくなるんじゃないのだろうか。
「日が沈めば目立たなくなるはずだ」
こんなゆっくりと二人で過ごす時間は久しぶりだ。
たわいない時間をだらだらと二人で過ごすことが、なぜか、今はすごく大事な気がする。
「でも・・・っ」
「お前に拒否権あると思うか?」
「あのねッ!」
横暴な俺にすぐに膨れるつくしの頬。
それでもお前は俺を受け入れるってわかってるから俺は我儘でいられる。
「夕食までは、まだ時間あるからな。運動でもするか?」
「運動って・・・っ」
マジに驚く表情が俺を見上げた。
「今日は俺がやりたいことにつきあってもらう」
言い放った俺につくしの足がピタッと止まって動かなくなった。