門前の虎 後門の狼 11
道明寺邸に住むのと二人っきりで住むのとどっちが楽なのでしょう。
つくしちゃんのメイド姿がもう一度見たかったとか・・・
我儘坊ちゃん初心なメイドを惑わすなんて題名は・・・ないかなぁ・・・(;^ω^)
「俺にできないことはない」
指先が強引に牧野の顎を上にと向かせる。
ムッとした気の強さで見つめる瞳。
媚びを浮かべてうっとりと見つめる欲の秘めた目は興ざめだ。
身体の奥から欲する熱を俺から引きだすのは目の前のこいつしかいないと実感できる。
「ちょっと」
いきなり振りほどかれた腕から逃げだして全身で俺を拒否するやつ。
「あのな、二人の記念する夜だぞ」
「夜って、言うな!」
尖らせた唇はわずかに震えてる。
「期待してるだろ?」
「期待なんてしてないわよ」
「本当か?」
強気な言葉が徐々に俺たちの距離を近づけてく。
気が付けばいつでも抱き寄せられる距離。
「期待されてねぇつーのも俺のプライドが傷つくんだけどな」
目の前に伸ばした指さきは遠慮なく牧野の左胸のふくらみを包みこむ。
「なっ」
慌てた表情は言葉を失って真っ赤に頬を染める。
「心臓、壊れそうなくらいドキドキしてっけど?」
牧野以上に俺の心臓も忙しく音を立ててる。
「無理やりヤルつもりはねぇから心配するな」
胸元から離した指先は牧野の髪をクシャクシャにしながらそのまま牧野から離れた。
歩くたびにスリッパから足底が離れてうきあがる。
浮きだつ俺の心を映し出すように足元が軽い。
「なによッ」
「まずは食事だろ」
テーブルの上には冷えたシャンパンにケータリングさせた料理が並ぶ。
リビングに誘うように開いたドアの先で出来上がったばかりの料理が湯気をたててる。
2つのグラスに注いだシャンパンの一つを牧野に渡す。
小さく「ありがとう」と聞こえた声。
シャンパンを一気に口の中に牧野が流し込んだ。
「おい!」
こいつ・・・
わざと酔っぱらうつもりじゃねぇよな?
焦った俺は牧野からグラスを奪い取る。
ここは軽く乾杯して一口、口に含むって程度だろうがぁ!
「一杯くらいじゃ酔わないわよ。少しはアルコールにも慣れたしね」
ケラケラとようやくこいつらしい朗らかな笑み。
「酔った寝込みを襲われたらシャレにならないしね」
からかう様な声にほどける緊張感。
「あのな、俺がお前を無理やり抱いたことなんてねぇぞ」
「いやだって言うのにやめないことあったけど?」
こいつも意外と言うようになったよな。
「本気で嫌がってねぇだろう」
牧野をつかもうと伸ばした腕から逃げようと俺から少し距離をとる。
掴みかけた腕は逃げた身体をつかもうと追いかける。
ガキみたいなじゃれ合いに無邪気な笑い声。
「逃げるな」
背中から回した両腕がようやく牧野を捕まえた。