戯れの恋は愛に揺れる  18

これでやっと勘違いが修正方向へ!

そして二人はめでたく結ばれる。

・・・・そうか・・・

もう結ばれてるんだった。

それは数話前のお話。

結果はいかに!

御簾の向こうの気配が消えてからいったいどのくらい時が過ぎたのだろう。

ぽつんと取り残されたまま正座したままのつくしの前にあるお菓子を見つめたままつくしはため息を何度となくもらしている。

胸の奥がいっぱいで今は何も口にできそうもない。

目の前に司の君が現れたからといってどうなるのだろう。

好きな人がいると言葉にしたことは後悔していない。

それでも東宮との縁談を断って、司の君と一緒になりたいと言えるはずもない。

自分と司との縁はつながることのないもののように思えてくる。

乱暴に床を鳴らす足音が廊下側から鳴り響いてきた。

一人で打ち鳴らす足音にしては大きくつくしは反射的に身構えてしまった。

まるでそれは自分を捕らえに来たのではないかと思うような緊張感がつくしを震えさせる。

左右に開かれた障子。

そこから差し込む光は後光と輝き公達の立ち姿を浮かび上がらせるが顔は影をつくりつくしの方からはその表情を隠す。

上から覆いかぶさるように両方の袖がつくしの上半身を包みこむ。

直衣から香る香はつくしの記憶を敏感に刺激する。

忘れるはずもないあの夜の司の直衣からも同じ香りがした。

上品でいてやさしく包み込む落ち着くような香り。

「なぜ、いなくなった。

お前をあのまま後宮に送り届けるつもりでいたんだぞ。

そんなに東宮妃になるのはいやか?」

耳元で聞こえた司の声に驚きと疑いの表情でつくしは顔を上げた。

この人は自分と関係を持った私を何事もなかったように東宮のもとに送り届けるつもりだったのだろか。

それはあまりにもひどい言いぐさのように思えた。

「それ・・・本気で言ってるの?」

「そのために俺はこれまでどれだけ走り回ったかわかってるのか?」

数ある縁談を断ることは容易ではなかった。

政治的支配を考慮しながら候補にも上がってなかったつくしの名前を無理やりにねじ込ませた。

そしてようやく話がまとまったところで宮廷に入りこんでいるつくしを見つけたのだ。

その驚きを司はどんな言葉を使っても表現できないと思っている。

後宮に入るのは嫌なの」

自分は目の前にいる司のもとに嫁ぎたいのだ。

それなのに目の前にいる東宮のもとに自分を連れていくという。

そして婚儀を知ったうえで自分を抱いたことになる。

どうしてそんなひどいことができるのかつくしには理解できない。

司との出会いも、自分を守ってくれた凛々しい姿も、迎えにくると約束した甘い抱擁も巣下手が夢で幻だったのだと悲しみが、思いの大半を占める。

「本当に、もう、何をやってるのです」

御簾の向こうから呆れたような椿の声が響く。

するすると上がった御簾の向こうからはやさしく微笑む椿の姿が見えた。

見られてることに気がついた司とつくしは互いを弾き飛ばすように離れた。

「自分のもとに嫁ぐのだと、なぜ一言が言えないのです。

それにたと許嫁といっても御簾なしで直接対面することは不作法ですよ」

椿の声で口元を隠すように開かれた扇子が優雅に揺れる。

「姉上」

え?

姉?

決まり悪そうに眉をひそめる司の横顔を食い入るように見つめてしまった。

「姉って・・・ことは弟・・・

え?

でも東宮って・・・?」

「まだ東宮じゃないが、婚儀を上げたら俺が東宮の地位につく予定だ。

だからお前は俺の婚礼を上げたら東宮妃ってことになる」

「それじゃ・・・皇子ってこと?」

「なんだ、お前知らなかったのか?」

「何も言ってくれてないのに知るわけないでしょう」

しぼんだ全身の力は一気に息を吹き返す。

「それじゃ、どうしてお前は宮廷の俺の宮にもぐりこんだんだ」

「宮廷?宮?」

つくしは自分がもぐりこんだのが宮廷だとは思っていなかった。

貴族の邸宅にもぐりこんだつもりだった。

邸宅の大きさに司は力のある貴族の若君だと思う程度だった。

「知らなかったのか」

ぶるぶると首を振るつくしを司は不思議そうに眺めた。

「なんでもぐりこんだ?」

その時は自分との婚儀が決まったあとだ。

司としては自分に会うためにつくしがもぐりこんできたと思いたかった。

そのまま帰すつもりが離したくない思いが勝りつくしを強引に抱いてしまった。

つくしが姿を消したとは強引すぎたかと後悔した。

東宮との婚儀の話を聞いてあなたを、きらいになるつもりだったの」

やけ気味つくしは叫ぶ。

司を嫌いになって思いを断ち切るつもりの切実さも婚儀の相手が司だとわかればおかしなことになる。

「俺のことを嫌いになるつもりだったのか?

俺と結婚するのにか?」

「だって東宮だとは知らなかったから」

東宮より全く何も知らない俺のほうがよかったわけだ」

状況が飲みこめると司は笑いがこらえられない。

「誤解は解けたようですね」

高座からゆっくりと降りてきた椿の宮が二人の前をゆっくりとした足取りで通り過ぎる。

姉宮の姿が見えなくなるのを待って司はつくしを待ちかねたようにギュゥと抱きしめた。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

誤解は解けたけど~

東宮妃という難問が待ち構える!

また何かしらありそうな予感?

いえいえ、それやっちゃうと終わらなくなるから怖いんです。(笑)

浮気の告白~

あはは、確かにそう言われれば嫉妬しちゃうかもです。

いいのよ~最後に私のもとに戻っていただければ~

やなぎ 様

あっ・・・

(完)つけるの忘れてた・・・

それは冗談です。

もう少しお付き合いを(^^♪

りり 様

そう簡単に婚礼できるかな?

意地悪な虫がどこからかわいてくるんですよね。

akko

いわれてみればコメントの通り司皇子直情型なのに、案外まどろっこしいですね。

相手がつくしじゃなきゃこんな苦労はないでしょうけどね。

yumi 様

この時を待っていたの感想をたくさんいただいています。

本当にねぇ~

この二人は!

この後はスムーズに行くのかしら?