霧の中に落ちる月の滴 20
記憶は思いだせなくてもつくしと司の関係がわかったことに気が付いていた類。
こうなると類に肩入れしたくなる状況が出てくるんですよね。
さてその中心にいるはずのつくしと司。
切ない系から楽しめる話に持っていけるか!
移行できない時はどうなるかしら?
*「会ってきたの?」
道明寺にしては神妙な面持ちで部屋を出ていったから・・・
なんとなくわかった・・・
事件の真相を話すだけじゃない道明寺の心の変化。
きっと私のことを花沢類に告げるんだって思った。
花沢類の思いに応えることはできないって告げたのは桜の花びらがまい散る時期だった。
必死に悩んで、悩んで、たどり着いた結論。
あの時と花沢類は何ら変わらなったってことが今回のことでわかった。
それでも花沢類は笑って私と道明寺を応援してくれていた。
道明寺との愚痴もどれだけ私は花沢類に行っちゃったんだろう。
思いだせば花沢類の車の助手席に乗ったのも道明寺との喧嘩が引き金。
そして・・・
記憶をなくした花沢類は道明寺と別れて傷ついていたあのころの私をそのまま思って・・・
今守もろうとしてくれているのだ。
私の心も・・・
道明寺の心も・・・
落ち着かない。
「まぁ・・・会ったような・・・ないような・・・」
歯切れの悪い道明寺の表情は取り繕うよにわざと笑顔を作って私のベッドの端に腰を下ろした。
「思ったより早かったから・・・」
今日はあのままもう道明寺が私の病室には戻ってこない気がしていた。
それが・・・
え?もう?
短時間で何も離せず引き返したって感じだ。
「あいつの方が俺たちより大人ってことなのかな?
類はさ、冷静に俺たちを観察して分析してた」
「え?」
「あの頃の俺と牧野の関係じゃないって気づいてた」
「いつも類に助けられるってムカつかねぇか?」
今一つ道明寺の言いたいことが伝わらない。
ムカつくって言葉も道明寺の人を寄せ付けずその好意を踏みにじるような傲慢さは感じないもの。
自分にムカついてるって感じかな?
「どういうこと?」
じっと道明寺の顔を見つめる。
私の視線に気が付いたように道明寺が私に顔を向ける。
「類は、まだ記憶を取り戻してないのに、俺たちが付きあってるの気が付いたらしい」
「どこで!?」
花沢類の前で道明寺が私に抱き付いたことあったっけ?
花沢類は私を守ろうと道明寺との間に壁を作ってくれていたから、そんなことはなかったはずだ。
道明寺と直に言葉を交わしたことも花沢類がいるとなんとなくかわしにくかった。
「俺のお前に対するこの溢れる愛情は隠しようがねぇってことだろう」
「ふざけないでよね」
「ふざけてねぇよ」
睨んだ私に腰をわずかに回した道明寺が身体と顔を私に向けた。
おどけてるように見えて、溢れる愛情の言葉の中にはどうみょうじの本気100%がいってると思う。
「花沢類・・・
らしい・・・って、いえばらしいよね」
「あぁ・・・」
私を見下ろす道明寺の瞳がやさしく笑って私を見つめる。
その瞳が何かを感じたように光った気がした。
「あっ!」
え?
突然上がった大きな声。
少しいいムードになりかけてた私は拍子抜け。
「類のやつ、記憶を思いだしてるのに思いだしたふりをしてるとかねぇか!」
「それはないんじゃない?」
「あの類だぞ!
リンゴの件では俺は長いこと騙されていたからな」
リンゴをすり下ろさないと食べられなかった花沢類に道明寺が「すったリンゴを食べるとはげるんだぜ!」
と嘘をついたって話は以前聞いたことがある。
道明寺の嘘にショックを受けた花沢類がリンゴを食べられなくなったってことだった。
そんなウソ、すぐに気付いちゃうって思うけど・・・
長い間自分のせいで花沢類はリンゴを食べられなくなったって思いこんでいた道明寺。
リンゴが食べられなくても生きていけるし・・・
私に言わせれば大した悩みじゃないだろう!って突っ込みたくなる。
リンゴの嘘と記憶喪失の嘘・・・
比べる次元が違うよ。
「確かめてくる!」
止める間もなく病室から走りだした道明寺。
今度こそ道明寺は私の病室に帰ってこないだろうな。
そんな気がした。
拍手コメント返礼
スリーシスターズ 様
道明寺御曹司の立場がなくなると司君イタイやつになるかもしれないですね。
>司がどうやって類に聞くのか? そこはシリアスではなくコメディになるんですかね!?
どちらもお話は考えてますが、最近の連載分ではなぜか笑える方向に向かっています。
たぶん、イベントの反動がこっちに来てる節があるんですよね。
毎回しつこいくらいの訪問をいただいてるなんて、最高の褒め言葉ですよ。
ポケモンGOには勝てないでしょうがレアポケモンをゲットできた気分に負けない満足感をお届けできたらと思っています。
りり 様
うんうん、類も司もつくしに敏感。
いつでもどこでもつくしレーダーのアンテナは3本立ってますからね。
逃げられないわなぁ。