霧の中に落ちる月の滴 21
夏のイベント企画いかがだったででしょうか?
たくさんの拍手とコメントありがとうございました。
もっと丁寧に細かく仕上げれば後編はたぶん30話あたりになったかな?
続きを書くとしても相当長くなりそうな予感があります。
さて、類の記憶は戻っているのか?
記憶をなくす話って結構重宝するんですね。
司の場合都合の悪いことは直ぐにいいように変化して記憶から抹消してそうですけど。
司は類に詰め寄ってるのかな?
どうでしょう?
続きからどうぞ~♪
*「ま~きの」
間延びする癖のある柔らかい声。
おひるまでまだ少し時間のある窓から柔らかな日差しが差し込む病室。
いつもの高さの視線には見当たらない姿を探す手間を私に作る。
「どうしたの?」
車いすの上の花沢類。
まさか道明寺が飛びかかった!?
本当に手加減を知らないんだから。
そう思った私はベッドの上から飛び降りて花沢類のそばに寄る。
「元気そうだね」
「私のことはどうでもいいの。
大体全治1か月っていうのがおおげさなんだから」
にっこりと笑みを浮かべる花沢類の身体の傷が増えていないか確かめるのに必死だ。
「検査からの帰り」
歩いていこうとすると両側から看護師が支えようとつき添い争奪戦が始まるから車いすにしたんだとの花沢類の説明。
車いすを押そうとその位置の争奪戦は始まらなかったのだろうかと私は考えた。
「司には昨日いろいろ言われちゃったけどね」
「なにを?どう?どんな?乱暴された?」
ところてんを押し込むようなわたしの問いに類はにっこりと笑みを浮かべる。
「心配してるのは俺のことじゃなくて司のことだよね?」
「え?」
「道明寺が花沢類になにかしたんじゃないかと思っただけだから」
「元をただせば司のことにでしょう?」
そこを突っ込まれたらそれはそうなんだろうけど・・・
「牧野はさ、すぐ感情が顔に出るから」
ポンと頭に置かれて手のひら。
車いすの花沢類より膝をついた私のほうがいつのまにか花沢類を見上げる格好だ。
「久しぶりに司と本音で話せた。
最近のあいつ、なんとなく俺に気を使ってるのわかってたから。
俺はらしくない司が気にくわなかっただけなのかも」
「牧野ももういいよ。俺に気がねしなくても」
花沢類にしたら言葉数多いよ。
「記憶がなくなったの牧野ならよかったかも。
司を好きなこと忘れて、俺が好きだった時のまま止まってる・・・」
そう言った花沢類は寂しそう笑みを浮かべる。
「花沢類・・・」
車いすを少し後ろに引いて私から花沢類が離れた。
「そうなっても、司の場合は関係ないか。
俺のこともう一度好きにならせるって、あいつならいいそうだからね」
花沢類に言われて頭に描くのは道明寺の自信満々の表情。
うん。そんな気がする。
強気な道明寺だもん。
あの自信はそう簡単には覆りそうもない。
「花沢類だッて私が道明寺が好きだって知ってるわけでしょ。
きっと手を貸してくれるんじゃないの」
部屋を出ていこうと車いすを回した花沢類。
その車いすを押すように私は手を伸ばした。
「白状されちゃったか・・・」
少し首を垂らしてうつむく花沢類。
白状・・・って?
その花沢類を私もうつむき加減に頭を下げて眺めてる。
微妙な空気の流れに一瞬の間。
「司を好きって言ったろう?」
問いかけるような花沢類の声。
「かすかな俺の期待は儚く散ったみたいだ」
車いすを押しかけた腕から思わず力が抜けた。
「記憶・・・」
「まだ戻ってないよ」
ゆっくりと花沢類の腕が車いすの車輪を回す。
それは何も気に留めてないような花沢類の声。
「いつものあいつらと違う感じがあんまり好きじゃなかった。
牧野も俺に気を使いすぎてたから。
やっともとに戻った気がした」
ゆっくりと動きだす車いすの動きに合わせるようにわたしも腕に力を入れて車いすを押す。
「牧野に車いす押してもらってるとこ、司が見たら、もめそうだね」
「大丈夫、文句は言わせない」
本気でつぶやく私の声に花沢類が笑顔を見せた。
拍手コメント返礼
スリーシスターズ 様
記事を更新してると子供がそばに寄ってくる夏休み。
もうねぇ~
わざと私の横にきてかいてる文章を横で読みあげてくれちゃうから断念してPC閉じます。
早く夏休みよ終われと念じてます。
類君と司の再対面をすっ飛ばして書いてますが、もちろん次回にどうだったのかをお届け予定となってます。
類とつくしの会話のあとにこの部分更新するのはちょっとした仕掛けなんです。
>舞い上がり暴走を始めそうな司を見たいです。
そんな司は夏休み明けで~
絶対今の状況じゃかけないですから~
娘になに書いてるの?と白い目で見られるの間違いないですもの~
りり 様
類がすべての記憶をなくしてたら・・・
最初に思いだすのは司じゃなくつくしのことかしら?
今度そんな設定のお話かいちゃうのも面白いかもしれないですね。