霧の中に落ちる月の滴 1
明けまして
おめでとうございます。
昨年中もたくさんのご訪問と拍手にコメントありがとうございました。
今年もよろしくお願いします。
別館のほうで限定公開でお知らせした新作連載開始です。
別館のほうを少し手直してUPしてますので若干変わっています。
それでは続きからお楽しみください。
*「おい、待てよ」
道明寺の怒鳴る声なんて私を不愉快にさせるだけの不協和音。
待てと言われてその怒鳴り声を相手にする気分は私の頭からは排除されてる。
「命令しないで!」
怒鳴り声にはりあう声があたりに響く。
いつもなら周りの視線が気になる大学構内も、それが気にならないほど私の頭の中は道明寺に対する不満が充満してる。
振り返ることもしないまま歩みを止めた私の後ろで道明寺の足が止まったのがわかった。
一気に詰め寄られて道明寺にグイと肩を捕まえられる前に私は大きく足を踏みだした。
道明寺の気配が少し私から離れたのを背中が感じ取る。
「勝手にしろ!」
聞こえた声は私の不機嫌さを上回る不機嫌さ。
今の道明寺に近づこうとする人はいないって思う。
私たちの周りには木枯らしが落ち葉を吹き上げて小さな渦を作る背景が書き加えられてる気がした。
ガチャン!
何かが大きく壊れる音が道明寺のいるはずの方角から響いて思わずビクンと私に緊張が走る。
一瞬緩みそうになった怒りを引っ張って最高点までまた引きあげた。
今回は絶対に私から謝らないんだから。
いつも、いつも道明寺に無理やり私の怒りを押し込まれて言い様にされてるのは今日で終わり。
「俺が、我儘なの知ってるだろ」
そんな言葉で納得するのも限度あるんだから!
今回は堪忍袋の緒が切れたって状態。
10回・・・
いや・・・
100回に一回くらい道明寺から謝っても罰は当たらないって思う。
いつもいつも私が折れるって思ったら間違いだからね。
そう思いながら・・・
なんとなく気になる。
あいつが暴れると周りに被害が拡大するからな・・・。
私が謝れば・・・
あいつ・・・
まだ私を見てるかな?
ダメ!さっきの決心はどこに行った!
振り向けば気持ちが揺れ動きそうだから、そのまま無視するように足早にそこから離れた。
「牧野」
人気の途切れた歩道で私の前ににこやかな微笑みを浮かべた花沢類を見つけた。
「なにか、あった?」
人なっこい色に染まる茶色の瞳は涼やかに私だけを見つめてくる。
「え?」
「いつもの牧野と違うから」
クイッと目の前に綺麗な顔を付きだしてくるから柔らかい前髪がかすかに私の鼻先に触れる。
近すぎる距離感にキュンと胸が高鳴る。
一瞬道明寺に怒っている自分を忘れそうになるほどのときめき。
「喧嘩でもした?」
さっきまでの私たちをやり取りを見ていたような勘の良さ。
思わず私の後ろに道明寺がついてきてるのかと思って、あたりを見渡してしまった私。
私の仕草にクスッと花沢類が小さく唇を動かすのが見えた。
私が道明寺を気にしてるって花沢類にはきっとばれている。
「何でもない」
「牧野がそんな表情を見せるのは司がらみでしょ?」
少し距離を置いた位置で花沢類が私を見つめる。
私・・・どんな表情してた?
大学を出るまでは確かに道明寺に怒っていたのは確か。
家路に向かいながらやりすぎたかもと後悔が頭をもたげていた。
道明寺から謝るってことはないだろうなって理解してるのは一応、私の思いやり。
「そんなに落ち込んだ表情してる?」
なんでも見通してるようなその雰囲気に何でもしゃべりそうになる自分がいる。
でも、それって・・・
完全なる道明寺の愚痴になるからしゃべれそうにない。
「落ち込んでるんだ」
花沢類がおもしろがってる表情を浮かべてにっこりと笑みを浮かべる。
「そうじゃなくて怒ってるの!」
「それじゃ、やっぱり、喧嘩してたんだ」
「私たちの喧嘩なんていつものことだから」
花沢類なら何を言っても笑って聞いてくれそうだと私は開き直ってしまってる。
「愚痴なら聞くけど」
そんな花沢類に促されるように車道に止めてあったの助手席に乗りこんだ。
普段から時々花沢類の車で大学から家まで送ってもらうことも多いので遠慮も警戒心もほとんどない。
車の中で流れる英語の歌詞。
穏やかなテンポの曲は儚い片思いの詞。
『いつの間にこんなにも君を好きになってしまったんだろう』
日本語に訳すとそんな意味じゃなかったけ?
車窓に映りこむ自分の顔を眺めながらそこに重なる道明寺の顔。
片思いの切なさとあきらめきれない思いがジンと胸の奥に沁みこんでくる歌詞が耳の奥に残る。
道明寺・・・
あなたをあきらめなきゃって思ったこともあったのに、今はそばにいるのが当たり前で、自分が我儘になってる気がしてきた。
いつのまにこんなに好きになってしまったんだろう。
曲で思いだすあいつへの思いは、喧嘩した自分を落ち込ませる。
「もっと優しくならないかな・・・」
小さくつぶやいた声は窓を白く困らせてため息に変わる。
「司はやさしくなったと思うよ」
ハンドルを握る花沢類の存在を一瞬忘れたことが私を慌てさせる。
「聞こえてた?」
気恥ずかし気持ちであせる声。
「牧野っ!」
柔らかく笑った花沢類の顔が突然強張りを見せて私の身体の上に覆いかぶさってきた。
え?
なに?
唇が花沢類の頬に触れそうに近い。
「シートベルト忘れてるよ」
え・・・あっ・・・
右肩からシートベルトをしながら花沢類の身体が私から離れてハンドル席に戻る。
カチャッとシートベルトをしめる音が聞こえるまで私の身体は固まって動かなかった。
シートベルト・・・ね・・・。
花沢類が何げなく私に触れることは時々ある。
頭を撫でたり・・・
私を覗き込んできた花沢類のサラサラな前髪が鼻先に少し触れたり・・・
キスされたことも・・・あった・・・。
ドキドキはしちゃうけどそれは道明寺のそれとは違う。
道明寺の場合は現実的というか・・・
そこから先に、進と言うか・・・
道明寺にそれ以上に触れられることを意識してるときめき。
花沢類の場合は非現実的というか・・・
童話の中の王子様。
テレビの中の接点のもてないアイドル。
現実より夢の中のあこがれにドキドキするような架空の人に持つ憧れみたいなときめき。
どちらも赤くなってしまうのは見た目的には一緒だから困る。
道明寺が拗ねても嫉妬されても花沢類を目の前にするとどうしてもこの状況に陥ってしまう。
道明寺と感じるものは違うんだから!
それを道明寺が理解するように説明するのは永遠に無理なんだと思う。
「牧野!!!」
え?
シートベルトはしめたけど?
ハンドルを右に大きく切りながら花沢類が私をかばうように身体を私に寄せてきた。
ボヲォー
怪獣の先得尾声のようなクラクションの音が響く。
そして目の前に迫る大型のトラックの車体。
昔映画でみた大事故の映像が今私の目の前に迫る。
危ないッ!
車体のぶつかる衝撃音が響いて意識が消えた。
正月早々の気になる終わり方。
お許しを~
拍手コメント返礼
akko 様
明けましておめでとうございます。
そうなんです。新年早々の気になる終わり方第一弾!
しばらくはハラハラよりドキドキする展開が待ってますのでご容赦を!
今年もこんな感じで続きますがよろしくお願いします。
miho 様
明けましておめでとうございます。
今年も楽しいお話で行きたいと思ってますのでよろしくお付き合いを~♪
スリーシスターズ 様
新年最初のお話へのコメント感謝。
そうなんです題名変えちゃってます。
スリーシスターズ 様気が付くかな?と思ってたのですがさすがです。
まだいろいろ考えちゃってますけどね。
まあ、お話は始めちゃいました。(;^ω^)
記憶喪失パターンありですよ。
でも今回はちょっと違うんだなぁ~
続きをお楽しみに♪
まあも 様
今不機嫌なFACE読破中をされてるんですね。
ほぼ楽しく遊び心満載で書いた話なんですよね。
笑ってもらえればうれしいですね。
こちらこそ今年もよろしくお願いします。
葉っぱ 様
明けましておめでとうございます。
え?早番?
お正月からお仕事ですか?
大変だな~
お正月から働いてくれる方がいるから私たちも楽しめるんですよね。
ファイト!
syoko 様
新年早々事故のお話。
それも類とですからね。
しかし、よくつくしちゃんを事故に合わせる私・・・(;^ω^)
今回はそれも類と!
どうなるかなぁ~
ゆみんゆ 様
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくです。
もしかして?ひょっとして?
ムフフな感じ~♪
切なさ倍増させちゃうかもしれません。
みや様
明けましておめでとうございます。
元旦からのご訪問ありがとうございます。
類でもいいかも!
思っちゃいますよね。
司と類だとおっしゃる通りその先が違うんですよね。
あはは、事故るとつくしの記憶喪失を心配する方が多い(笑)
一度記憶喪失にしちゃってますからね。
二度やっちゃうかも(笑)
さち 様
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
ソフィ 様
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年最初のお話はほっこりとは行きませんが最後はばっちり決める予定ですので今年もよろしくお願いします。
りり 様
類の車で事故~
助手席に乗ってるのはつくし!
次回の展開はどうなる!
お楽しみに♪