戯れの恋は愛に揺れる  28

婚儀に向けていよいよ動きだしました。

それまで司皇子は辛抱の日々になるのかな?

それとも、どこかでぷっんとなるのか!

切れた凧みたいになってどこに行ったかわからなくなったらそれはそれで面白そうな気が・・・(;^ω^)

話が終わらなくなるぅ~。

「姫様、どちらにおいでですか?」

「姫様ッ!」

大声を上げるというよりは探してることを知らせるような小さな響きの声がどこからともなく上がる。

バタバタと廊下を走る落ち着かない足音を響かせながら女官たちが忙しく動き回る。

私室にいるはずのつくし姫の姿が見えないことで起きた捜索騒動はことが大きくならないように極秘で進められていた。

姫が抜けだして何かと女官の仕事の中に入りこんでいることに慣れてきた女官たちに危機にせまる緊張感はない。

「昨日は、下働きのものと井戸端で洗いものをしておいでになりました」

「まさか今日も同じ場所ってことはないわよね」

そんな会話を交わしながらすれ違う女官。

「姫様~」

自分を探す声が遠ざかるのを聞きながらつくしは絶望感に身を震わせていた。

「そんなに、硬くなるな。

俺だ」

口を塞がれ誰もいない部屋に押し込められるように引きずりこまれたのは、東宮妃になるための宮廷でのしきたりを学んでようやく終わった時間であった。

教授が退室してできたわずかな一人の時間。

御付きの女官が来るまでの少しの間を見逃がさずに書院を出たところで突然つくしの口は後ろから塞がれてしまった。

抵抗をするには身体を包みこむ十二単では思うように抵抗できない。

里で暮らしていた時のような小袖も身軽さなら簡単に捕まることはなかったとつくしは思う。

直衣から香る香りは高貴なものしか付けられない芳しさを漂わせてつくしを包みこむ。

「んっ・・・」

塞がれた口元からようやく離れた手のひらにつくしの吐息が和らかく触れた。

「姫が騒ぐから俺も力を緩めることができなかった」

「当たり前です、いきなり口を塞がれて抵抗しないものはいません」

緩められた腕の中でつくしは身体の向きを変え顔を上げて自分を包み込んだままの主を睨むように視線を向けた。

婚礼まで自分に会うことを禁じられてるはずの皇子がまさかまだ明るい昼下がりに会いに来るなど思いもしてないつくし姫である。

だからこそ強く自分を拘束するその力強さない恐れる感情がつくしを震えあがらせた。

その相手が司皇子だとわかった瞬間に安心しながらもムッとした感情が湧き上がって自分を驚かせた皇子を責めたくなる。

「会えないと会いたくなるものだな」

やさしく愛おしく熱く見つめる瞳の中につくしの強気な表情を映しだす。

「会えるのに、触れられないのはもっとつらい」

皇后のもとに朝の挨拶に訪れる司が姫の元気な姿が垣間見えるわずかな時間。

言葉を交わすこともなく、視線を合わせることもできないままにその時間は過ぎる。

今まで滅多に顔を合わせることもなく、皇后の住む後宮に皇子が足げに通うこともここ数年なかったことである。

皇后に会うというよりはつくしを一目見たいという思いに駆られ日々の日課となっている司だった。

それだけでは我慢できない思いも募る。

会うだけで満足していたいのはほんの数日。

声が聞きたい、会話がしたい、触れたいと思いは切実に大きくなり司を落ち着かせなくさせた。

「見つかったら困ります」

「困らぬ」

司から離れようとするつくしを押しとどめるように司はつくしを抱く腕に力を入れる。

「婚礼までは会ってはいけないと約束したではありませんか」

「あれは、お前の寝所に行けないってことだと俺は解釈することにした」

「解釈ッて・・・」

呆れたような表情を向けるつくしを飄々とした表情で司が覗き込む。

「さすがの女官たちもここまでは探しに来ないだろ」

つくしが司に連れ込まれた居間は粗末な板張りの薄暗い部屋。

壊れた調度品が無造作に入れられてるのが見える。

この部屋に入ってくるのは下げ渡す業者が来たときに運びだすために下働きのものが年に数回は行ってくるだけの部屋だと司はわかっている。

だからこそ司は誰もこないと言いきっているのだ。

「だからって、こんなところで二人でいたら言い逃れできません」

司に抱きしめられたままの身体は少しでも早く離れなければ心臓が持たない気がしてくる。

緊張が解けた途端に甘く包みこんでくる司の熱がつくしの身体を熱くさせ胸を大きくドクンと高鳴らせている。

朝、一目司に会える瞬間をつくしは楽しみにしていた。

言葉は交わさなくても、凛とした響きを持つ声が皇后に向けられる挨拶だったとしても、姿を見て声を聞けるだけでも今のつくしにとっては満足できる時間だった。

あとひと月後には婚礼を上げると知らせを聞いたつくしは指を折ってその日を待てばいいのだと我慢できるつもりでいた。

今、突然目の前に司が現れて自分を力強く抱きしめている。

我慢できると思っていたのはつくしの強がりだったと認めざるおえない心境に陥ってしまっていた。

胸の前の押しつけられた腕をギュッとつかむようにつくしの指先が動く。

司の胸元がつくしの背中に重なるようにグッ抱きしめられた。

「婚儀を終えたらずっと一緒だ」

司の吐く息が黒髪に触れて流れ落ちる。

「これ以上、一緒にいたら我慢できそうもない」

「えっ?」

軽く笑みを見せた司はつくしをから離れると障子を軽く開けて外の様子を確かめるように視線を外に向ける。

「見つかるなよ」

そんな言葉を残して素早く司は出ていった。

夢・・・?

一人残されたつくしを喪失感が襲う。

会いたくて幻を見た白昼夢のように司の姿はもうそこにはない。

ぺたりと座りこむようにつくしの身体から力が抜けおちた。

「姫様、こんなところにいらしたのですか」

つくしを助け起こすように身体をささえたのはつくしつきの女官として仕え始めたていた小鈴であった。

気心の知れてる小鈴に声をかけられても、つくしは呆けたような表情で小鈴を見つめることしかできなかった。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

おはようございます。

おとなしくお妃教育を受けているとは思えないつくし姫。

きっと楓皇后の耳には届いてると思うんですけどね。

司皇子の行動もばっちり読まれてるような気もします。

>司皇子もつくし姫もずっと一緒にいられるまであと少しですよ。

>何事も起こらなければ・・ 起こらないでください!

私も願ってます。(笑)

起こしたい気は満々なんですけど・・・(;^ω^)

7周年リクぼいぼちと届いております。

来週あたりから準備に取り掛かろうと頭をフル回転させなきゃいけないのですよね。

そうそう、物語はその季節に合ったものがいいですよね。

この時期だとハロウィン。あとしばらくするとクリスマスが控えてる。

もうネタがないよと思いつつ毎年挑戦はしてるんですよね。

スリーシスターズ 様は「エーロス~」からでしたか。

この作品6周年記念作品だったんですよね。

もっと前のような気もしてしまいます。

コメントいただくようになって1年なんですね。

探したところ見つけました♪

『エロースは蜜月に溺れる 16 」が初コメントでした。

去年の10月31日。

>こんにちは パスワード申請以来、お話は読ませて頂いてましたが、初めてメッセージ送ります。

>どのお話も笑ったり、ちょっと切なくなったり、何回読んでも面白いです。

とコメントいただいてますよ。

覚えていますか?

読者1周年記念で何か短編をUPできたらいいなぁ。

これをつくしちゃん嫉妬の巻で行こうかな♪

yumi 様

つくしちゃん楽しんでますよね。

一つ屋根の下に未来の姑と暮しているとしてそこまで密に監視はされてないでしょうからね。

でも逐一報告は入ってると思います。

待ち切れない司皇子になにかお咎めはあるのでしょうか?

次回はそんなお話になったりして・・・(;^ω^)