ジェラシーを情熱に変えて 8

おはようございます。

無事木曜日に私の相棒を引きとってまいりました。

そのあとの再設定がなかなか進まず結局今日まで時間がかかってしまいました。

まずはメールチエックで目が点。

膨大なメール受信。

PW申請メールの量もすごいことに・・・(;^ω^)

お待たせしましたが本日よりぼちぼちと返信しております。

明日中には返信終了できると思いますのでもうしばらくお待ちいただけたらと思います。

ほんと、遅くなってすいませんでした。

 *

腕を組む手は歩くたび指先が下に落ちる。

離さないとでもいうように絡んだ互いの指先。

並んで歩くというよりは牧野が俺の前を歩いて俺の手を引く。

わざと背中に体重をかけて重みをかけた身体を牧野は感じないように大股で歩く。

それは俺の一歩の大して2歩分。

見つめる背中は怒りをあらわにして、頭の上からは湯気が見える。

今アイツが振り返ったらにんまりしてる俺の顔が見られずぞ。

緩む口元を隠すように拳を軽く唇に当ててかるく咳をする。

聞こえてねぇし・・・

「追うより、追わせるほうが楽しいですよ」

数日前ぽつりとつぶやいたのは西田。

パーティーに牧野を誘うのに「うまいもの食わず」って誘う自分が面白くない。

大体俺と一緒に過ごせるのに喜ばねぇあいつが悪い。

めんどくさいって表情を見せるあいつがおかしんじゃねぇの。

「この俺より、喰いものかよ」

何気につぶやいた俺のボヤキをしっかりと受け止めてのは相変わらずの隙の見えない秘書の西田。

西田の作戦はこうだ。

朝から俺の存在を認識させても姿はギリギリまで見せず牧野と接触しない。

当日の朝からエステと美容チームを手配したのも西田。

牧野と会場で会っても会話は必要最低限。

よそよそしさを演出すのも必要。

あのな、牧野がばっちり決めればそれなりにいい女になる。

どこかのバカが触手を動かすことも予測できる。

そこどうするんだ!

西田に訴える前に、この秘書は類や総二郎にあきらも招待してると招待客名簿を俺につきつけた。

招待客筆頭に3人の名前を大文字で書かなくても読めるつーんだ。

桃井ってやつにタキシードを汚され必要以上にべたつかれたのは予想してなかったが、めっけもん。

牧野に今日は俺を追わせる。

このコンセプト成功のカギは俺の我慢にかかってると幾度となく西田に忠告されたから我慢できた。

じゃなきゃ、とっくの昔にあの桃井って女追いだしてるぞ。

まさか・・・

あの桃井て変な女・・・

西田の仕込みか?

にしては・・・

ほかの若い男にも色目使ってるからそうでもないか・・・

俺の投げたタキシードをゴミ箱に捨てるのが見えた。

ほんとに捨てるのか・・・

あの女・・・

どうでもいいけど・・・

俺の腕を引っ張ったまんまの牧野はまだ沸騰中。

「なにが、手伝いしますよッ。

べたべたされて鼻の下伸ばしてる道明寺も道明寺だけどッ」

ぶつぶつと聞こえる牧野の声。

声・・・

漏れてっぞ~

牧野の背中にかるく声を当てる俺。

牧野の吐きだす声よりは小せぇけど。

その最大の怒りのもとは嫉妬。

牧野のふくれっ面を想像するだけで胸の奥がむず痒い。

「おい」

「おいって」

「なにッ!」

数度の呼びかけで牧野が足を止めて勢いよく振り返る。

勢いつきすぎて倒れかかってきた牧野を俺の両腕が受け止めた。

「履き慣れてない靴がいけないんだから」

俺の胸にもたれかったまま首をそりあげて牧野が顔を上げる。

怒ってた表情がわずかに緩んで甘く色づくように見えた。

「俺の部屋上だから」

牧野を止めたのはエレベーターの前。

タイミングよく開いたドアの中にそのまま牧野を引きずりこむ。

「何ッ」

身体の向きを変えた牧野はそのまますっぽり俺の腕の中に入りこんだ。

エレベーターの壁に押さえこんだ体勢。

伸ばした指先は上り始めたエレベーターの上昇を止める停止ボタンを押す。

「今・・・止めた?」

「ああ・・・」

「なんで・・・?」

まずいって表情で俺を眺めてる牧野の想像はたぶん当たってる。

「キスするから」

かすかに触れあったままの唇から伝える振動。

開きかけた牧野の唇から素早く侵入させた舌先。

絡みつく息が熱く互いの口腔を探る。

「ちょっ・・・ダメっ・・・」

漏れる吐息からこぼれる切ない喘ぎ。

俺の腕から逃れて必死に伸ばした牧野の指の動きでエレベーターが再度動きだした。

「これ以上何かしたら許さないから」

「許さないって、どう許さないつもりだ?

キスしただけだろう?」

計画通りに進んでる俺は全然余裕。

「着替え、手伝ってくれるんだろ?」

階に止まって開くエレベーターの扉。

先に降りた俺はエレベーターの扉を抑えたまま牧野が降りてくるのをまつ。

紅葉した表情のまま息が上がったように上下する肩。

その肩を抱くように腕を回す俺。

ホテルの一室のドアのカギを開けためにカードキーを取り出すつもりが・・・ねぇ・・・

あっ・・・

キー。

タキシードの内ポケットの中・・・

「どうしたの?」

「キーねぇわ・・・。すぐ呼ぶ」

連絡を入れた数分後ようやく部屋に入れた俺達。

俺・・・

なんか大事なこと・・・忘れてねぇか?

牧野のネックレス・・・

「ねぇ、焦ってる?」

落ち着かずポケットの中を確かめるように何度も服の上から手を当てる俺は確かにおかしいよな。

「何でもねぇよ」

そう言いながらも手のひらはネックレスの形を模索する。

ねぇ・・・っ。

桃井に捨てろと渡したタキシードの内ポケットに入れた記憶だけが鮮明に浮かび上がる。

「早く着替えて戻ろうよ」

「戻ろうっ」

無くしたらぶっ殺す

そう言った俺がなくしたらシャレになれねぇ。

それにあのネックレスを牧野がどれだけ大事にしてるか、大事に思ってるかは俺も知ってる。

「戻るぞ」

「え?まだ着替えてないよ」

「俺は急ぐからお前はゆっくりしてろ」

「ゆっくりしてろって・・・」

考えが追いつかない牧野を残して俺は走りだしていた。