午前0時を過ぎるまで 2

今年も残りわずか。

久々に家族編でつくしちゃんの誕生日を祝いたいと思います。

今回は駿君目線。

久びさだわ

 *

「まま死んじゃうの?」

「死んじゃう?」

不安そうな瞳で舞と翼が僕の手を両方から引っ張る。

いつもはきはきと僕らの前で笑ってくれるママの笑顔が今日はなんとなく元気がないのは僕も気が付いていた。

それでもママはいつものママで僕らをいっぱい抱きしめてくれた。

それはパパが帰ってくる前までだけど。

パパが帰ってくると一番にママを抱きしめてそれから僕らなんだ。

ママの次ぎにパパが抱きしめてくれるのを待ってる僕らはレジでお金を払う順番を待ってるみたいな気分になる。

これも普通の生活を体験する一部なんだとパパの秘書の西田さんが教えてくれた。

一部って意味がなんなのかわからないけど我慢することだと僕は思う。

だって、ママは僕らは我慢する経験は少ない御曹司だからわがままは厳禁だッて言うんだ。

言葉が難しすぎてわかんないけどパパを見てたらわかるってことはなんとなくわかる。

今日だっておでこで熱測るのダメって意味わからないよ。

僕がクラッと元気がないときママがおでこを当てて大丈夫?って聞いてくれたら「大丈夫」って言いたくなる。

すぐに元気にならなきゃッて思うんだもの。

パパがママに触れて心配そうに覗き込んで「調子悪いかも」って言ったママは、なんとなくあの時の僕の気持ちと一緒なんだと思う。

元気を見せなきゃって思いながらもなんとなくやさしくされたいって思う甘えたい気持ち。

僕がママにギュッとしてほしいようにママもパパにギュッとしてもらいたいのな?

ギュッとしてもらった朝、目が覚めたら不思議と元気になってるんだ。

それならパパにママをギュッとしてもらおう。

きっとギュッとしてもらったママはいつものママで元気「おはよう」って僕らを抱きしめてくれるはずだから。

「ママは死なないよ」

「ほんと」

「うん」

「よかった」

舞と翼は僕の返事ににっこりと笑う。

「いいか、普通は手で触れれば十分だ。

おでこで測るのは禁止だと覚えとけ」

ちっとも僕らの心配事はパパにはわかってない。

おでこで測るのも手で触れるのも僕らにはどうでもいいだから。

ママをパパに任せていたほうが僕ら家族は平和lだってタマさんがいつも言ってるから今日もたぶんそれでいいはずだ。

って・・・

違ったかな?パパをママにだっけ?

もう一度タマさんに確認しなくっちゃ。

「おい、行くぞ」

「どこに行くの」

「パパのことはママに任せておけばいいから」

あっ!ちがったママのことはパパにだっけ?

どっちでもいいか、どっちでも一緒だし。

僕の両腕は舞と翼を引っ張ってパパとママの部屋のドアをパタンと閉めた。

ママの誕生日のおめでとうは明日の朝、3人で言おう。