birthdayは慎ましく

おはようございます。

今日は司のHappy birthday ですね。

もうね毎年毎年年末から忙しくなる行事が目白押しで~

ついていけなくなる今日この頃。

うっかり忘れていたらしっかり思いださせてくれる常連さんに感謝。

さてさて今年はどんなHappy birthdayになることやら~

 *

「くそっ」

握りしめたグラスの中のシャンパンの気泡が俺の握力の強さであわただしく下から上へとゆらゆらと増えながら動く。

「司、自分の誕生日にそんなしかめっらでいいのか?」

あきらと総二郎が俺を挟んで両脇に立つ。

俺の代わりに頭を下げる招待客に愛想よく会釈を交わす。

「あれ、牧野は?」

この状態で牧野を探す類にはやっぱりムカつく。

牧野を探す前にまずは俺に誕生日の祝いくらい言えねぇのかよ。

「いねぇよ」

用事があるとなんとか俺の顔なんて見ることもなく断りやがったj薄情なやつのことなんてすっかり忘れた。

いや・・・

忘れてねぇか。

去年まではしっかりあいつは俺の横にいて・・・。

不安そに俺を見上げるあいつは俺の腕をギュッと握って頼っていた。

婚約者だと紹介する俺に笑顔で挨拶を返すあいつ。

繰り返すごとに慣れてきていつもの人なっこい笑顔を浮かべるようになる牧野。

今日はなんでいないんだよ。

おかげで合言葉みてぇにお前のこと聞かれるぞ。

それにも辟易。

ますます眉間に皺が寄る俺。

毎年開催される派手な誕生日パーティー。

できるなら俺も出たくねぇ。

会社の主催だからしょうがなく参加してやってる現状。

「フラれたんだ」

「フラれてねぇよ」

いちいち癇に障る類の態度。

まさかお前らが裏からちょっかい出して牧野に出席を断らせたってわけねぇよな?

去年ほど強制に牧野を連れた来なかったのはあいつもの司法試験に向けて必死だってわかってるから。

俺のために時間をつくれということは一応あいつが卒業するまでのあと1年は我慢してやるつもりだ。

それでも今年の誕生日はくそおもしろくもねぇ。

最悪な誕生日。

あいつが俺の隣にいないだけでどれだけ俺のテンションは下がるんだ。

情けねぇくらいに気分の変動はあいつに左右されてしまってる。

「抜けるからな」

主賓挨拶が終わって舞台から降りる階段を数段すっ飛ばしておりながら西田に呟く。

まったく感情を現さないその顔を眉一つ動かさないままに俺を見つめる。

納得してるのか対応してくれるのかそんなことは関係ない。

収拾を付けるのはお前の仕事。

どんなことでもうまく対処はできる有能な秘書。

おまかせください。

そんな返事を返してくれてると俺は背中で感じとる。

「ふっ・・・」

脱いだ上着を背もたれにかけながらソファーに腰を下ろす。

口から出たため息は牧野に対する非難じみた愚痴にも似てる気がする。

あのバカ!

俺の誕生日だぞ!

それも社会人になって初めての誕生日。

パティーが終わったらあいつと二人で過ごそうといろいろ考えてたんだよ。

それが一人で、この俺が自分の部屋で寂しく過ごしてる。

悪いとか思ってねぇのかよ。

「すいぶん飲まれました?

お水お持ちしましょうか?」

背もたれの上着を持ちあげる腕の動きが軽く空気を動かす。

視線の先でちらりと見えたメイド服。

「酔ってねぇ・・・よ」

その姿を確認した俺は思わず息を吸うのを忘れてしまった。

「お前・・・その格好は・・・なんだ・・・?」

「これ?

昔道明寺の家にいさせてもらった時のやつ。

まだ着れるんだよね」

ひらりとスカートの裾を持って牧野がくるりと回って見せる。

「そんなこと聞いてねぇし」

「なんで居るんだ」

「なんでって?本当にそれ聞くの?」

ずんと詰め寄った牧野はソファーの上に片膝をのせて俺に詰め寄る。

「道明寺の誕生日だから一緒のお祝いしたいに決まってるでしょう」

「それじゃ、一緒にパーティーに出てもいいだろうがぁ」

「それは・・・」

「それは?」

俺から外した視線はちょっと考える時間を作る。

「西門さんと美作さんがね・・・」

やっぱりあいつらかッ!

「あいつらがお前に何を悪知恵を付けたんだ?」

「悪知恵って失礼でしょう。

私が誕生日のプレゼントどうしようて相談しただけだから」

「あのね、いったん誕生日が私と過ごせないってわかって落胆した道明寺が私と過ごせるってわかったら喜びも倍増するから

って」

「落胆なんてしてねぇよ」

にこにこと悪戯っぽく笑う牧野に同意するつもりはねぇ。

「え?それじゃうれしくないの?」

「そのメイド服の格好の意味がわかんねぇよ」

「これはタマさんが坊ちゃんが一番喜ぶって・・・

昔の大変なときに唯一坊ちゃんが嬉しそうにしてたって教えてくれたんだから・・・

メイド服が好きなのかと・・・」

「プロレスには興味ねぇよ」

「コスプレね」

そこは成長してなんだッて牧野がクスクスと笑う。

「てめっ」

「キャッー」

ぐらりと揺らいだ牧野の身体は俺と入れ替わるようにソファーの上に落ちる。

「ちょっ」

「俺で遊ぶな」

片腕で肩をソファーに押し付けられた身動きがとれない牧野を見下ろす。

「二人っきりだね」

「あぁ」

牧野の指先が手首から上腕へと俺の腕を伝う。

「誕生日おめでとう」

俺の肩を引き寄せる牧野の腕。

近づいた口元はそっと俺の頬に触れる。

「あっ・・・」

「なんだ?」

「付いちゃった・・・」

「はぁ?」

牧野の視線の示す頬を自分の指先でなぞる。

頬から指の平を染めるピンクのルージュ。

「もっとつけろよ」

抱き寄せながら耳元でつぶやく。

牧野の温もりと重なる自分の体温が心地よく包み込んでくる。

朝まで離せねぇ。