霧の中に落ちる月の滴28

30話が目前。

このお話30話前後で完結させるつもりでプロット考えてたんですよね。

事件は20話前後で解決して、そのあとは類の記憶を取り戻すお話に展開させる。

予定通りといえば予定通りで進んでるのですが・・・

期間がね・・・(;^ω^)

以前の毎日更新には程遠いスピード!

自分専用のノートPCが欲しいと願う今日この頃。

私より娘のほうが先に手に入れるだろうなぁ・・・

駿君じゃないけど溺愛気味のおばあぁちゃんいるからなぁ・・・

 *

月明かりの下、満開の桜が散り急ぐ。

うきあがった月の夜の幻想的な景色の中の牧野がにっこりとほほ笑んだ。

違う・・・

そうじゃねぇだろう。

お前の微笑みを見せる相手が俺じゃねぇ。

牧野の横顔を遠くに見ながら駆け寄ろうとした俺の脚はなぜか動かない。

牧野と張り上げる声はあいつには聞こえないままに牧野の姿を激しく吹雪いて舞い上がった桜の花びらが隠してして何も見えなくなった。

「ま・・・きのっ」

「んっ?」

小さく聞こえた声。

ゆるゆると開いた瞼がはっきりと捉えたあいつの笑顔。

「夢でも見てた?」

上から覗き込む牧野の揺れる長い髪がわずかに俺の頬を撫でる。

黒髪が俺に触れたのに気が付いたように牧野の指先が髪を掻き上げて耳に髪をかける仕草を見せる。

「すげーいやな夢」

夢の中で牧野が微笑んでいた相手はたぶん類。

類の姿が確認できなくてもそう確信してる。

牧野に告白すると言った類の本気。

相当、引きずられるよな・・・俺。

牧野が悩ませんじゃねぇよ。

そう思いながら類を止められなかったことを後悔してる自分と後悔してない俺。

成立してない感情が逃げるように求めたのは結局こいつで・・・。

すべての感情をさらけ出すようにぶつけて抱いた。

「私の名前を呼びながら、嫌な夢ってどういうことよ」

ぷっと膨らませた頬。

目元は笑ったまま俺をまっすぐに見つめる瞳。

伸ばした右腕はしっかりと牧野を胸元に引き寄せる。

素直に身体を預けてきた牧野。

すっぽりと牧野を包みこんでるのは俺のはずなのに、どうしようもない我儘な俺をすべて受けいれていて、暖かい温もりにすっぽりと包まれてるのは俺のほうで・・・。

「道明寺?」

「んっ?」

「あのさ・・・離してくれるかな?」

「なんで?」

「休めない講義があるんだってば、

大学に行かなきゃいけないから、行くねって言ってるのに、起きないし、抱き付いてくるし。

遅刻しちゃうよ」

牧野の両手が俺の胸元を突き放してベッドから飛び降りる。

まだ完全に目覚めてない俺の身体は簡単に牧野を離してしまった。

「いい子に、してたらすぐにまた戻ってくるから」

俺をガキ扱いした憎ったらしい表情は素早く俺の頬に近づいてチュッと触れて素早く離れる。

逃がさなつもりで伸ばした片手はスルーされた。

くすくすと笑みを浮かべる機嫌の良さで「じゃね」と手を上げる牧野。

ベッドで裸体のままの俺としっかり身支度を整えたあいつ。

出遅れた感は半端なくて、今の俺の動きを鈍らせてる。

開いてパタンと閉まったドアの向こうにいつもの明るさで牧野が消えた。

すぐに戻ってくるわけねぇじゃん。

大学にはきっと類があいつを待ってる。

「まき~の」

類独特の間で牧野を呼ぶ声。

気が付いたあいつはにっこりほほ笑んで声の主にかけよる。

俺が見た夢のまんまじゃねぇか。

想像じゃなくて現実もきっとそんな状況だろ?

「牧野、こいつの告白には答える必要はねぇぞ」

なんて後ろから牧野の耳を塞ぐように腕を回して類を睨みつける。

途中で邪魔するのは今更プライドが揺すらねぇしな。(譲らねぇ)

すぐに牧野を追いたいような追いたくねぇような・・・

ベッドに倒した身体は左右にゴロゴロと何度も向きを変える。

落ち着かねぇっ!

頭の下で交差させ指先。

三角をつくった両方の腕が頭を左右から強く締め付ける。

それはまるで心の疼きを頭の中に植え付ける様。

やっぱ落ち着かねぇ。

さっきから時計の秒針の動きも鈍い。

見つからねぇように遠くから覗く・・・

覗くじゃねぇっ!

牧野を類が傷つけねぇように見守る。

見守る!

見守るだっ!

口も手も出さねぇ。

足が出るかもしんねぇ・・・

ヨシ!

ベッドから抜けださした俺は、牧野から遅れること10数分で身支度を整えた。