Happy Valentine(2017)

バレンタインのお話はどうしようかな~と考えてたらきちゃいました。

2月14日。

つかつくから始まってジュニアたちにお話まで書いた年もあったのに今年は・・・(;^ω^)

まずはやっぱりつかつくかな♪

はぴまりも・・・書きたいッ!

 *

「なに・・・これ?」

パイ生地のサクッとした感触をナイフの先に感じる。

切り分けたパイの中から蕩けだしたチョコレート。

食べてみろ

的な、にんまりした表情の道明寺が片手をテーブルに置いたまま私を上から眺めてる。

一口サイズのパイを刺したフォークをパクリと頬張る。

口の中に広がる甘いチョコレートとカカオの香り。

しつこくもないビターチョコの甘さがちょうどいい。

「おいしい」

それはお世辞じゃなく本気の褒め言葉。

「こんなの食べたことない」

「だろ?」

はしゃいで喜んでる道明寺の笑顔が私にも伝染しそうだよ。

「あのさ・・・なんで?」

今日は2月14日。

いつもは毎年恒例で数日前からチョコの催促が半端ない道明寺。

そわそわと落ち着かないので14日に渡してやってください。

絵文字も何もない文章だけのメールが西田さんから送られてきたのは去年。

「バレンタインにもらわなきゃ意味がねぇよ」

拗ねながらも私の贈った毎年恒例の手作りクッキーチョコはしっかりと食べてくれた。

誰にもやんねぇッて、感じで両手で隠すように持って、一つつまんだ道明寺の顔型チョコをパクリと食べるその姿は道明寺HD代表とは思えないせこさ。

ついでにしっかり14日にも渡せと要求されて私はもう一度クッキーを焼く羽目になった。

今年も準備した手づくりクッキー。

そのクッキーを渡す前に道明寺が私をダイニングのテーブルに座らせた。

「たまには俺からもな。

男がチョコをもらう風習は日本だけだしな」

外国じゃ男子もバレンタインに愛を贈るってことは私も聞いたことがあるけど・・・

「お前の食べっぷりは見ていて楽しいしな」

そう言って私の顔を覗き込んだ道明寺。

指先が口角を撫でるように触れる。

「ついてる」

そういった道明寺の指先にはチョコ。

慌ててベロで口角を舐める私。

自分の指先をぺろりと道明寺が舐める。

「まだ取れてねぇな」

「え?」

舌・・・届かなかった?

道明寺の指が触れたの・・・

この辺だったよね。

今度は舌じゃなく紙ナプキンで拭こうと白い紙ナプキンに手を伸ばす。

「それじゃ取れねぇよ」

ワッ

声を発する間もなく頬に感じた道明寺の息。

ザラリとした生暖かな感触が口角を舐め上げる。

犬に舐められたような気分。

唾でベロベロにされるんじゃないかと思う。

「もっ」

振りあげた腕は簡単に道明寺に拘束されてしまってる。

「俺もチョコ食べてぇし」

チョコなら一口食べただけのパイがまだ皿の上で湯気を上げてる。

「私じゃなくこっちから食べればいいでしょう」

「お前からもらわねぇと意味ねぇし」

そう言ってにんまりと笑った口元はチュッと私の唇を吸い上げる。

「もう、チョコは残ってないわよ・・・」

怒りたいのに照れ臭さが邪魔をして甘い声しか出てこない。

「ほら、もっと食えよ」

一口では入りそうもない大きさのパイ。

パイ生地の中からたらりと糸を引いて落ちるチョコ。

それ食べさせられたら口の端だけじゃなく口の周りがチョコだらけになりそう。

まさか・・・

それが道明寺の狙い・・・か?

「ほらッ」

チョコがアップで私を襲う。

「ブッッ」

ガボッと口の中にパイを押し込まれた。

もうッ!

どうにでもなれ!

チョコをすべて道明寺にくっつけるつもりで私の顔を道明寺の頬に押し付けた。